借金まみれのなれのはて
「やめろっ、やめろはなせっ!!」
「うるさい、暴れるなゴミクズが」
人通りが少ないとはいえ、昼間からスーツを着た男達が、まだ二十代前半といった風貌の青年を取り押さえていた。
「くそ、はなせっていってんだろ!!」
取り押さえられて暴れていた青年の足が、勢いよくスーツを着た男の顔に当たった。
「うっ、ぐ……この糞餓鬼がぁあああ、この、社会の、ゴミクズが!!」
顔を蹴られた男は怒り狂い、青年の腹を何度も全力で蹴りあげた。男はそのたびにうめき声をあげ、顔を歪める。
「うっ……ごほっ……うっ、おげえぇえぇええぇ」
青年の吐瀉物がアスファルトにぶちまけられる。もうまともに動けないと判断したのか、スーツの男達は取り押さえるのをやめ、少しばかり青年から距離を取った。
「き、貴様ら……ぜ、絶対に許さねぇ」
「はっ、生意気な口聞くなっ糞餓鬼がっ!!立場わきまえろ!!」
顔を蹴られた男は、止めにと弱った青年の顔を蹴り抜いた。蹴られた男は硬いアスファルトに頭をぶつけ、意識を失った。意識を失い暴れなくなったこの青年を縛ると、ワゴン車に乗せて、自分達の上司のところへと発進した。
この青年の名前は村本、早くして死んだ親の借金を背負い、ギャンブルに明け暮れて4年。借金は3倍以上の2000万円に増え、ついにこいつは絶対に金を返済できないと判断されて、先ほどヤクザ達に連れて行かれたのだった。
連れて行かれた場所は、青年の地方では少しばかり名が通った浅石組の親玉、浅石洋七の所だった。