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第47話 悪魔の囁き

 月曜日。

 学校に着いた俺は、真っ先にあいつの所へ向かった。

 ……だけど、後ろでクボがうるさい。

「なぁなぁ榎本ってば! なんで来てくんなかったんだよぅ! もっかい掛けてみても話し中だしさぁ。やっと繋がったって思ったら今度は出掛けてるって言うし? まぁ結局は俺と奈美ちゃんでラブラブできたからいっけど? でもさぁ、それにしたってさぁ、ちょっとくらいは話聞いたって…」

「っだー!! クボ! 分かった悪かった! だから頼むから黙れ!」

 いい加減キレた。

 こっちは今から決戦に向かおうってのに、後ろでそんな話されちゃうるさすぎる。

 そんな時奈美さんを見つけた。

「あ、奈美さん! 丁度よかった。クボのことよろしく!」

「えぇ? あたし?」

「奈美ちゃんよろピーコ」

「黙れ!」

 俺と奈美さんでダブル攻撃喰らったからか、クボはようやく大人しくなった。

 よし、今度こそ!

 だけど……すぐそばに行って肩を掴もうって時、先生が入ってきた。

「ほらー、席につけ」

 マジかよぅ。

 あと5cm、いや4cm!

 くっそぉ!

 もうさ、こうなったらさ、学校終わってから!

 放課後に捕まえるしかないよな!



 で、チャイムが鳴った。6時限目も無事終わり、あとは中村一寿の一件だけ。

「なぁなぁ榎本ぉ。今日ちょっと付き合わねぇ? 特別に埋め合わせさせてやるからさ!」

 クボが誘ってきた。かなり偉そうに。

「なあクボ」

「ん?」

「バイバイ」

「えぇぇぇー!」

 叫ぶクボをほったらかしにして、走った。

 早くしないと。早く捕まえないと。

「中村っ!」

 中村一寿はフッとこっちを見たけど、呼んだ相手が俺だと分かると、無視してまた歩き出した。

「…おいっ! 中村! 中村一寿っ!!」

「なんだようるさいな。あのさ、人の名前大声で連呼しないでもらえる?」

「聞きたい事がある!」

「はぁ?」

 中村一寿は、あからさまに嫌そうな顔をした。

 だけど気にしない。コイツのこういう行動をいちいち気にしてたんじゃ、いくらストレス無さすぎると死んじゃう人間だって身体がもたないぞ。

「……お前…何か企んでるのか?」

「何? 聞きたい事ってそんな事?」

「答えろ! 何か企んでるのか? 『かっちゃん』ってお前か!?」

 しばらく黙って睨んでた中村一寿だったけど、急にクックックと笑い出した。

「かっちゃん、ねぇ」

「…何だよ」

「いや? 懐かしいなぁと思ってさ」

 やっぱり。

 電話女と中村は知り合いだったんだ!

 この件には中村が関わってんだろうなとは思ってたけど…。

「なんで女なんか使ったんだ?」

「……つまんないなぁ」

「は?」

「もっと混乱してよ。もっともっと事を荒立ててよ。お互い別れるまでズタズタに傷付け合ってよ。…マジつまんねぇ」

 プッツンって音が聞こえた気がした。

 もう抑えろっていう心の声も聞こえない。

「お前さあ!! どこまで性格ひん曲がってんの!? 彩はもう十分傷付いたんだ! お前のせいでな!! なのになんでまたこんな……」

 中村は、妙に冷めた目で俺を見ていた。

 ハッとして手元を見ると、中村の襟の部分を掴んでいた。

 慌てて手を放す。

「……一体、何がしたいんだよ」

 俺がそう言うと中村は目をそらした。横を向いて、口だけで笑う。

「君ってさ、幸せ者だよね」

「何がだよ」

「今だって俺がなんとかしないとって、俺が彩を護らなきゃって思ってんだろ? 小田彩乃の気持ちなんてそっちのけでさ。一人でヒーロー気取りか? 虫酸が走るね」

 意味が分からなかった。確かに、彩を護らなきゃとは思った。

 だってこの間、彩は言ったじゃないか。俺が居てよかったんだって。

「もしかして気付いてなかったの…? おめでたい奴。小田彩乃はさ、無駄に正義感振りかざすお前見てちょっとウザそうな顔してたぜ?」

 ――うそだ。

 だけど、そう言われると胸張って否定出来ない…。

 もしかしたらそうなのかも…。

「っていうかさ、君少しは頭使えば? 君が小田彩乃から離るのが1番の防護策なんじゃないの?」

 …え……?

 もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。

 どういうことだ? 俺が離れればいいのか?

 そうか。そうなんだ。

 少しの間でいいんだ。

 中村の嫌がらせがおさまるまでで…。


 頭ん中ぐっちゃぐちゃになってた俺は、馬鹿みたいに中村の言うことを真に受けてしまった――。

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