第42話 ディズニー?ナガシマ?
俺はひとまず家に帰って考えた。
机に向かってひたすら考える。
どうやったら彩の元気を取り戻せるのか。
自分に置き換えてみた。もしも俺だったら…。
何をされたら嬉しいか。
やっぱあれか? 絶叫マシンとかそーゆーのか?
でも彩の場合ジェットコースターよりメリーゴーランドとかに乗ってそう…。
俺メリーゴーランドだけは一緒には乗れないぞ。
ある意味ジェットコースターより怖い。
乗ってる最中に俺に注がれる周囲の目が。
ナガシマでも一緒に行ってみようか。
それとも女の子ってディズニーとかのがいいのかな。
――よし。それなら…。
夜の7時。母さんがご飯を知らせてるのをパスして、彩の家へと走った。
全速力で向かって、インターホンを押す。
中から出てきた彩は、めっちゃ驚きましたって顔をした。
「晴樹くん!? どうしたの?」
「選んで!」
「え?」
「ディズニーかナガシマどっちが好き? 答えて!」
彩はわけが分からんという顔をしたけど、悩んだ。
「早く! 3、2、1」
カウントダウン開始。
「え、え、えっと、じゃあディズニー!」
反射的に、急いで答えた。
そーかそーか、やっぱ女の子はディズニーか。
待ってろよ。すぐに俺が連れてってやっから。
「おっけーサンキュ!」
「…なんだったの?」
「へへっ。あのさ…」
「うん?」
俺は軽く彩の頬にキスした。
「ナイショ。っつーかお楽しみ」
後になって急に恥ずかしくなった。
…やべ。今俺絶対顔赤い!
自分からやっときながら彩の顔見れないし!
「え…と。じゃあね」
思い切って言いながら顔を上げてみた。
そしたら彩も真っ赤だった。
なんか無性に笑えてきて、大笑いした。
だってウブなのはお互い様だったんだ。
楽しくて、可笑しくて、嬉しかった。
だけど…。
「もうやだ…」
彩のこの一言で、俺は地獄に堕ちた。
「え…。え? 何が…? 俺なんかした!? え…あの…なんかゴメン!」
一応謝ってみた。だけど、彩は首を振った。
「違うのー! 私…晴樹くんの事大好きで…もうやだー!」
何が!? いや、好きなら好きでいいんじゃん?
俺には分かんないなあ…。
でもニヤけてる俺が居る。
そりゃそうだ。好きな女に大好きって言われて、
嫌な男なんているはずがない。
「俺も……好き、かも」
「…かも?」
「いや、ううん。好き」
二人して照れながら笑った。
良かった。これだけでも彩が笑ったじゃないか。
ディズニーとかじゃないのか。
なんか嬉しい。俺だけでも笑わせることが出来たんだ。
俺達は門越しにキスして別れた。
なんか今にもスキップ出来そうなくらいハッピーだった。