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第36話 待ち遠しくない日曜日

 待ち遠しくなくても時間は過ぎてゆく。

 待ち遠しくなくても日曜日は来てしまう。

 全く待ち遠しくなくても。





 ――ちくしょう! 来るなよ日曜!! せっかくの休みなのに中村一寿に会わないといけなくなるじゃないか!!

 だけど彩と会えるのは正直嬉しいし。でも中村一寿には会いたくないし。

 だけれどもクボと奈美さんと彩と俺でバーベキューなんて楽しそうだし。でも、だけど、そこに中村一寿も加わるわけで、今までの4人では少なくとも居られなくなるわけだし。


 って思いながらも、俺は来てしまった。

 足が勝手に動いてしまった。

 そうさ、もののけ姫のアシタカ、足バージョンさ! 体のパーツが自分の意識とは別のところで勝手に動いてしまうのさ!

 うん、だから仕方が無いんだ。今日はもう下手な抵抗はよして、素直に楽しもうじゃないか。中村一寿は無視しておけばいいんだから。



「晴樹くーん!」

 今日は待ち合わせは無し。会場直行。各自集合。大きな公園の芝生の所でやろうって事になってた。そこに行ったら、もうすでに彩と奈美さんが来てた。

 彩がこっち見て手をブンブン振ってる。

「おはよう!」

「おはよ。奈美さんもおはよ」

「うん、おはよ」

「クボは?」

「まだみたいよ。あいつに時間きっちりを求めちゃダメよ。寝坊するのがオチ。きっと寝癖付けながら走って…」

 あ、ホントに寝癖付けながら走ってきた。

「奈美ちゃぁぁぁん! 遅れてゴメンよ〜!! あ、榎本も彩乃ちゃんもおはよう!」

 焦ってる。すんごい焦ってる。寝癖は一箇所だけでは収まらず、二箇所三箇所とピョコピョコはねてる。

 寝癖が元気いいのはいいんだけどさ、何か忘れてないかい?

「クボ、お前バーベキューの道具は?」

 俺が聞くと、クボは顔を真っ青にした。走ってきたから真っ赤だった顔から熱が一気に引いてって、青い線が4本くらい入った。

「ゴメン忘れた!」

 お先真っ暗? 俺等の人生イバラ色? 仏の顔も三度まで?

 俺の後ろには、ホントに「仏の顔も三度まで」の人が居た。まぁその人物ってのは言うまでもないだろうね。

「あんった……あたしらがココに集まった意味無いじゃないのよ! こんなに食べ物持ってきたあたしら馬鹿みたいじゃないのよ!! ただの大食いの馬鹿女じゃないのよ!!」

 奈美さん何気に凄い事言ってるぞ。クボはひたすら謝ってるし。

 そしたら、来た。アイツが。

「やぁやぁやぁみんな!」

 この口調はやっぱりアイツだ。

「やぁおはよう! 諸君元気かい?」

 テメェのせいで元気が奪われたよ。……と言えないのが寂しい。でも中村一寿の腕にはある物が。

「中村くん、それってバーベキューの道具……?」

 彩が恐る恐る聞くと、中村一寿は鼻を鳴らした。

「あぁそうだよ。大久保くんじゃあ頼りないと思って持ってきたんだ。……どうやら正解だったようだね。僕を誘っといてよかっただろ?」

 お前が勝手に付いてきたんだろうが。……とも言えないのがもっと寂しい。

 でも結局、中村一寿の持ってきたバーベキューセットを使わない事にはバーベキューは出来ないので、使う事になった。

 自分の持ってきたバーベキューセットって事をいい事に、中村一寿が仕切り役にしゃしゃり出た。威張りくさっちゃってこの野郎。

 だけど怒ったところで仕方が無いので、喉が乾いた俺はジュースを買いに行く事にした。

 嫌な奴からは少しでも離れたいしね。

 やっぱバーベキューにはコーラかな。あ、でもこの『ワクワクメロンソーダ』ってのも気になる。あ、あ、あ、『子供だって美味いんだもん〜♪でお馴染みのQoo!〜レモン×ライム〜』ってのもある!

 んでも俺高校生だし。電車だって大人料金だし。義務教育終わったし。って事は「子供だって」の類には属さないって事じゃないか? って言うのは属さない者が属さない物を買う事に何か違和感があるって事か? ところがどっこい大人になってもQooが好きな人くらい居るよなぁ。

 それだったら俺なんてまだまだマシなんじゃないのかな。だって義務教育終わってからまだ3年しか経ってないし。親のスネ齧ってる時点でまだ子供だし。

 だから大丈夫なんじゃないのかな? 俺がQooを買っても。いいよね、誰も見てないんだし。120円入れて押すだけだもんな。それにレモン×ライム味ってのも気になるしさ。凄い酸っぱそうだけど俺酸っぱいの苦手じゃないし。


 色々と考えを巡らせて、俺はQooを買った。開けて飲んでみた。思った以上に酸味が強かった。強すぎた。これって常人じゃあ舌がしびれて飲めないんじゃないか? 俺もその常人の中に入るけど。

 ダメだね。酸味強すぎだね。無理無理。ゴメンよ120円。無駄になっちゃったね。

 結局これ以上買ってもお金が勿体無い気がするから、とりあえず帰った。

 なんかこの一件でQooを嫌いになったかもしれない。

 だってQooのレモン×ライム味のせいで梅干食べたじいちゃんみたいな顔になっちゃったし。目が細細になって口がタコチューになっちゃったし。

 しばらくは舌がしびれたまんまになるだろうな。

 とにかく肉を食べて舌のしびれを癒そう。

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