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第35話 BBQ

 金曜の帰り道。里砂は来なかった。犬塚と幸せにやってんのかなぁ。

 全く。幸せにやってた人等を仲違いさせといて暢気な奴だなぁ。

 って思ってるはずなのに口元が緩むのは何故……?


 それは、明後日、彩と会うからなのである!

 あぁー、ただ単に彼女と会うだけでこんなにも嬉しくなっちゃう俺って幸せな奴。

 待ち合わせ場所はあの公園。特に何をするでも無いけど、とりあえず会おうかって話になった。


 日曜日、雪掻きじいさん家の前を通って公園に行くと、もう彩が居た。早いなぁ。

「彩」

「……あ、晴樹くん。おはよう」

「おはよ。早いね」

「…………楽しみになっちゃって……」

 …………。

 ………………。

 ……………………。

 可愛いぜチクショウ!!!


 前から思ってたけどさ、彩ってさ、彩って、俺にはもったいないんじゃないか!? こんなに可愛いしさぁ、こんなに純粋でいい子だしさぁ!

 この時にはこんな風に思ってたけど、今思えば、こんな事思うんじゃ無かったって後悔してしまう――。



「やぁ榎本晴樹!」

 日曜終わった次の日。月曜日。俺学校行く。中村一寿、俺を出迎える。俺嫌悪感をあらわにする。でも中村一寿には通じない。

「この間はよくもやってくれたね! よくもよくもよくも!!」

「じゃ」

 コイツには何を言ったって無駄って事が分かってるからスルー。分かっていてそれでも尚怒鳴り散らすだなんて体力の無駄遣いってもんだ。

 教室に入ると、今度は彩が出迎えてくれる。

「晴樹くんおはよう!」

「おはよ」

 彩の隣には奈美さん。こっち見てニッコリ笑った。

「よかったじゃない」

 奈美さんは小声で言う。

「え?」

「仲直り。したんでしょ? 聞いたわよ。元カノ追い返したって。やるぅ〜」

 俺の腕を肘で突付いてきた。彩がもう言ったのか。でもまぁそれなら言ってくれてもいいけどさ。嫌な思いはしないしさ。

「うん。ありがとう」

 奈美さんはもっかい笑うと、教室を出ていった。

「ねぇ晴樹くん」

「ん?」

「バーベキュー……」

「……は?」

 さっき奈美さんが言ったらしい。



 奈美さんと彩劇場。

「剛史がバーベキューやろって言ってきたんだけどさぁ、彩乃も来ない?」

「え? いいの?」

「だって2人でジュージュー肉焼くだけなんて……寂しくない?」

「そっか。そうだね。……あ、じゃあ晴樹くんも…」

「いいよいいよ。じゃあ言っといてね」


                  終。


 ってなワケで、来週、4人でバーベキューをする事になった。

 鉄板はクボが持ってきてくれるみたいだ。

 でも鉄板持ってくるので精一杯だから、食材とかはこっちで持ってこいってさ。


 なので学校が終わって、今、俺と彩と奈美さんとクボでスーパーに来ている。

 なんでクボまで居るのかは、俺だって自分の食う飯くらい決めたいぞ! って言うのが理由。

「……さて、何を買えばいいのかな?」

「適当に食いたいもん買えばいいじゃん」

「ばっか何言ってんの! 予算の問題だってあるでしょーが」

「私ね、焼きトウモロコシが食べたいなぁ」

 ……みんなバラバラだ。

 もっとさ、統一させようよ。こんな事ならリスト作ってこればよかったなぁ。

「彩、紙って持ってる?」

「え? あ、うん」

 彩はカバンの中からメモ帳を取り出した。ちゃんとボールペンも一緒だ。

「さんきゅ。みんな食いたいもん挙げてって」

「豚肉牛肉鶏肉ジンギスカン!」

 肉ばっかだな。クボ、お前そんなんじゃ太るぞ。えーと、ジンギスカンは高級だから省かせてもらうぞ。

「私ね、焼きトウモロコシが食べたいなぁ」

 うんうん。さっき聞いたよ。焼きトウモロコシ、と。

「エリンギエリンギ!」

 さすが奈美さん。高級だねぇ。でも高級すぎるから却下。

 っつう事で、買うのはトウモロコシと豚肉牛肉鶏肉。でもちょっと寂しいぞ。もうちょこっと何か欲しいなぁ。

 野菜類がいいかな。

「野菜類で食べたい物挙げて」

「かぼちゃ!」

 かぼちゃね、かぼちゃ。美味いよねぇ。

「ピーマン!」

 ふんふん。子供は嫌いだけど大人になるにつれてよくなってく食べ物だよね。

「バイキンマン!」

 ――それは、どこに属すんだ?

 って言うか言ったのは誰だ?

 いや、聞くまでもないけどさ。こんなアンポンタンな事を抜かすのはアイツしか居ないじゃないか。

 大久保剛史!

「クボ、頼むから真剣にやってくれ」

「じゃあニンジン」

 お、今日素直だ。

「ニンジンか。クボもたまにはまともな事言えんじゃん」

「……は? 俺じゃないぞ」

 メモ帳に書いてると、クボが眉をしかめて俺を見てきた。

「はぁ? 何言ってんだ。お前以外誰が…」

 クボの後ろに居た奴。そいつこそ正真正銘アンポンタンだった。

 中村一寿。

「やぁやぁみんなお揃いで」

 中村一寿は彩に近付いて、肩に手を置いた。

「4人仲良く何やってんのー?」

 ムカつく! 気安く彩に触んなっつの!!

「テメェ何してんだよっ!」

 強制的に手を下ろさせてやった。だけど怯まない。

 くそ。っつか何しに来たんだコイツ。

「材料から見るに……焼肉? それともバーベキュー?」

 中村一寿の視線は俺の持ってるカゴを集中攻撃していた。

 なんか嫌な予感がする……けど。気のせいって事にしといた方がよさそうだ。

「僕も一緒に行ってい?」

 嫌な予感的中。

 雷と打ち上げ花火が一気に自分に落ちてきた時の衝撃よりも遥かに衝撃的だ。

 実際そんな災難に合った事は無いけど。

 一応俺等も抵抗したんだけど、中村一寿はしぶとかった。ゴ●●リも参るほどにしぶとかった。多分普通の殺虫剤じゃあ参らないぞ。

 しぶとくて頑固で自己中。自己中だから他人の事を考えずに自分の意見を押し通せる。最悪だなぁ。

 そんな奴が一緒に行く事になってしまった。日曜日は、全く待ち遠しくない日になってしまった。

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