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第1話 彼女との思い出

初の恋愛小説、そして初の一人称です><;

まだまだ未熟者ですが、読んでもらえれば嬉しいです。。

 いつも通り俺は床に寝転がって漫画を読んでた。フローリングの床は夏に寝転がるには最高の温度。

 そして今の時間―――丁度昼の12時、下から母さんの呼ぶ声がする。

晴樹(はるき)ー! ご飯よー?」

 ホラきた。そしていつも俺はこう答える。

「今行く」

 でも俺、ついさっきポテチ1袋食べたばっかなんだけど……。

 ま、いっか。

 俺はポテチのカスを床にこぼしながら部屋を出た。そしたら兄貴と出くわした。

「あれ、晴樹、お前学校は?」

「何言ってんの。俺もう夏休みだよ」

「…そうだっけ?」

 兄貴は25歳。いつ話してもボケボケ。今からそんなんで老後どうなるんだよ。

 兄貴の名前は光樹(みつき)。俺の親って「樹」が好きなんだろうか?

 だって姉貴の名前までも真樹(まき)だし。俺ら3兄妹は小学校の時「みつはるまき」って呼ばれてて、「美味そうだ」って評判だった。

 下に降りると母さんと、ついでに姉貴も居た。姉貴は22歳、そして俺は17歳の高校生だ。

「なんで居んだよ姉貴……。今日急いで出てったじゃんか」

「なによ、居ちゃいけないわけ!?」

「……や、そりゃ居ないで欲しいって方のが強い……いでででっ!」

 姉貴の得意技は『頭グリグリ攻撃』。俺はいっつもこれの餌食になる。兄貴にはやらないクセに。

「今日は朝から蝉がうるさいわねぇー……」

 姉弟喧嘩が繰り広げられてても全く動じない母さん。まぁ喧嘩なんていつもの事だから慣れちゃったんだろうけど。

 昼飯が終わったらゲームの時間…………なハズなんだけど今日は姉貴に取られてるから出来ない。

 姉貴の場合、飽きるまで絶対譲ってくんないし。早く彼氏でも作って外遊びに行けよぉ。

 仕方なく部屋に戻るとに付けっぱなしだったパソコンにメールが来てた。

『ごめんなさい。お願い、許して。もう一度付き合いたい……』

 一週間前に別れた女からだ。

「お前が悪いんだろ……。今更なんだよ」

 思わずその言葉が口から出た。画面に向かって言ったって伝わるはず無いのに。


 返信はしない。そのまま床に仰向けに寝転がった。


 俺は一週間前、4つ年上の女と別れた。

 ……そもそも、別れた原因はなんだっけ?

 その前から思い出してみよう。えっと、あれは別れる3日前―――。


 俺は友人の「大久保剛史(おおくぼつよし)」(通称 クボ)と学校の廊下を歩いてた。

「お前今日何かある? 用事無かったら遊ぼうぜ」

「あ、ゴメン。ちょっと今日は無理だ」

「なんで?」

里砂(りさ)に頼まれてる物があるから」

 俺の彼女……つまり一週間前に別れたあの女の名前は「里砂」と言った。俺と里砂は同居していて、飯作るのが里砂の仕事。俺は帰りにたまに食材買って帰るくらいだ。

「そっかー。いいよなぁお前ら、ラブラブだもんなぁ」

「…そうか?」

「あ、照れてんだろ?」

「照れてねぇよっ!」

「年上か。いいなぁ」

「……」

「……照れてる?」

「だから照れてない、っつってんだろっ」

 他愛ない会話。俺とクボはいつもこんな感じだ。

 学校の門を出たところで分かれる。2人とも家は全く逆方向だ。

「じゃーな」

「おう、じゃあな」

 俺は通り道のスーパーに寄った。里砂に渡された紙を取り出す。買ってくる物が書かれた紙だ。その通りに食材をカゴに入れていく。

 食材を見る限りではカレーだろうな。

 全部買い終わって外に出た。今気付いたけど、今日はこんなにいい天気だ。ちょっと寄り道して帰るのもいいだろ。俺は寄り道なら任せとけ、ってくらいベテランだ。

 来世は猫にでもなるんじゃないかな。


 寄り道する為、まっすぐな道を左に反れた。ガードレールを飛び越して草むらに入る。この草むらが結構広いんだよ。草丈もあるし。

 その草むらを抜けると丘がある。そこから街を一望できるんだ。俺はこの場所が大のお気に入りだ。里砂と喧嘩すると決まってココに来る。

 ココで景色眺めてると「謝らなきゃ」って気持ちになるんだよな、不思議と。

 俺はいつもの場所に座ると、目の前に広がる壮大な景色をただひたすら眺めた。時折風が吹いてきて、なんとも言えず気持ちいい。


 ――――気が付くと、俺は寝てしまっていた。

「……ヤベッ!」

 急いで起き上がってスーパーの袋を引っ掴むと、草むらを走った。さっき左に反れた道に出れば、あとは少し歩くだけだ。

 俺と里砂が住んでるのは、ちょっと古いアパートだ。でも全然不便じゃない。コンクリの階段を上がって3階に住んでる。アパートの敷地内にデカイ木が植えてある。夏になると蝉がうるさいのなんのって。

 でも部屋ん中で寝っ転がってるとそれもいい子守唄に聞こえてくるんだ。だから俺はココが気に入ってる。

 2階から3階への踊り場。そこで1人の男とぶつかった。

「いてっ」

「あ……」

 その男はこっちをチラッと見たと思ったら帽子を深く被りなおして、謝りもしなかった。そのまま行っちまった。

「……なんだよ、感じ悪いな」

 でも……ココに住んでる人であんな奴いたっけ…?

 まぁいっか。俺は早いとこ里砂にこの食材を渡さないと。ちょっと重たいドアを開けると、里砂が出迎えてくれた。

「ただいま」

「おかえりー。買ってきてくれた? あ、その袋だよね?」

「おう」

 白い袋から人参の橙色が少し見えてる。俺はその袋を里砂に渡すと、部屋の中に入った。

「……?」

 いつもとちょっと違う気がする―――?

 なんか……なんか違和感。なんだろう?

 その時俺の頭の中にあの男が出てきた。何故かは解らないけど、あの紺色の帽子を被って黒いTシャツを着て……そして無愛想な態度。

 …………うわっ! なんか思い出してたら急に腹立ってきた!!

「晴? どうしたの? ……うわ、タコチュー!」

 里砂が俺の顔覗いて言ってきた。「タコチュー」? あぁ、きっと俺が口を尖らせて頬膨らませてるからだ。


 ……なんか急に里砂が愛しくなってきて、ギュッと抱きしめた。


「…晴……?」

「明日休日だね。…どっか行こうか」

「……うん」

 里砂は笑顔でそう言った。「チクショー可愛いよ! コノヤロウ!」って思って更に強く抱きしめた。その2日後には別れるって事も知らずに。


 次の日、俺と里砂はウインドーショッピングに出掛けた。勿論里砂の希望で。出掛けるまでに1時間掛かった。全ては里砂の化粧のせい。でもまぁいっか。綺麗に見せたいのかな。

 ……でも、ちょっと口紅塗りすぎ……。そこだけ浮いてるぞ? ま、努力賞ってとこだな。

「あ、ねぇねぇ晴。私、犬見たい!」

「犬か……。下にペットショップあったよね。行こうか」

「犬何が好き?」

 歩き出した俺の腕を掴んで、里砂が聞いてきた。おい、照れるじゃんか。嬉しいけど……。

「……柴、かな…」

「へーえ。私はね、パピヨン!」

「あぁ。あの耳が蝶々みたいなヤツ?」

「うん! 走るとフワフワなって可愛いんだよぉ!」

 ペットショップの自動ドアが音を立てて開いた。中は犬達の鳴き声と人の声で溢れてる。

「やーん可愛い!」

「え……? あれ!?」

 俺の横に引っ付いてた里砂は、いつの間にかケースに引っ付いてた。中の犬はパピヨン。やっぱいつ見ても蝶々だ。

「あ、晴ー! 柴だよ、柴! 可愛い〜! 柴ちゃーん」

 はしゃぎまくってるなぁ。

 人間飛び回ってるし、子犬冷めてるし。これじゃあ立場逆転だよ。

「犬、欲しいね」

「そっか?」

「欲しい!」

 あ、ワガママになる1秒前。仕方がないから俺はこう尋ねた。

「蝶々耳が欲しいの?」

 里砂は俺の方を見ると、コクンと頷いた。でも値段見てみたら失神しそうになった。「今なら安い、500,000円!」とか出てるんですけど。安くてその値段って……。

 いくら何でも無理だよ、コレは。

「パピヨン……。可愛いなぁ……いいなぁ」

 そんな顔すんなよぉ。俺だって買えるもんなら買ってやりたいよ。でも金無いし……。

 ポケットに入ってる財布が膨らむことは無いだろうな。頬ならいつでも膨らむのに。

「ごめんね、変なこと言っちゃって…。行こ?」

 俺達はショッピングセンターを出た。でも、なんか納得いかない。

 何も言えなかったのが納得いかない。里砂が謝った事も納得いかない。

 謝る必要なんてどこにもないじゃんか。

 だけど、俺から謝るのもなんか情けなくて……。「ゴメン、金無いんだ」なんて言えなくて……。

「晴? どうしたの?」

「……ん、ううん」

「……ね、今日の晩御飯、何がいい?」

 ! …言うなら今だ。犬を買ってやれないならコレしかない!

 代わりに俺が―――

「俺が奢る……!」

「え?」

「奢るの、俺が。何食べたい?」

「いいの?」

「いいの。決めろよ」

 里砂は少し迷ってた。きっとオムライスにしようかスパゲッティにしようか迷ってるんだ。

「じゃあ・・・スパゲッティ!」

「スパゲッティ?」

「うん。オムライスにしようか迷ったんだけど、今日はスパゲッティって感じだから……」

 …俺凄い。

 なんか今自分で自分を尊敬しちゃったよ。

「じゃ、行こっか」

 俺と里砂は歩き出した。

 夜の8時にはスパゲッティを食べ終わって、家に帰る。

「さぁて。明日からまた学校だ……」

「頑張ってね、晴」

 俺は里砂に向かって微笑み、頷いて、それから・・・。寝ちゃったんだっけ。気が付いたら朝だった。そこにはもう里砂の姿はなく、俺1人だった。

「……何時だ今…」

 壁掛け時計を見ると、針は短いのが8と長いのが6を差してた。

「……。ヤバイ!!」

 俺の上に掛けてあった上着を払い除けて準備をした。それはもう超特急のカンガルー便並だ。2分で朝飯食べて1分で顔洗って着替えて、1分で学校の準備。最後の1分で鍵掛けてアパート出て終わり。全て5分で終了。

 そこからは10分かけて走るだけ。

 だけど学校は8時から始まってる。8時半って言ったら遅刻は確定。でも俺には必殺技がある。思い切り走ってきたって言う姿を担任にでも見せれば許してもらえるはずだ!

 ……多分。


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