本屋さんとある男。
小説家の男が、ある本屋さんに行きました。
その本屋さんは古い建物で、見た目は駄菓子屋さんみたいでした。
そんな本屋さんから出てきたのは、白髪頭の店長さん。
どうやらポストに用事があったみたいです。
男は店長さんに問いかけました。
「僕の日記はありますか?」
店長さんは困りました。
男の質問が、あまりにもおかしかったから。
店長さんは答えます。
「ある訳ないでしょう。ここは本屋ですよ」
店長さんが言うと、男はしぶしぶ帰って行きました。
そして次の日です。
あの男がまた本屋さんに来たのです。
質問はやっぱり同じでした。
「僕の日記はありますか?」
店長さんは困りました。
男の質問が、昨日と同じだったから。
店長さんは答えます。
「ある訳ないでしょう。ここは本屋ですよ」
店長さんが言うと、男はしぶしぶ帰って行きました。
そして次の日です。
あの男がまた本屋さんに来たのです。
質問はやっぱり同じでした。
店長さんは困って男が帰った後、店内を見てみました。
ある訳がないと思いつつ。
すると、あったのです。
あの男が言うように、『僕の日記』という本が。
店長さんは慌てて男のことを思い返しました。
この本の作者だったのです。
次の日、店長さんは男を待ちました。
あの男は姿を現しません。
次の日も、またその次の日も。
何日経っても男は現れませんでした。
何日か経ったある日、店長さんの所にある女が来ました。
女は店長さんに問いかけました。
「私の手帳はありますか?」って。