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フォレスト・ロード  作者:  .
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1-4 軍議

 翌朝。

 ヘレナ子爵が率い、フェミニアを隊長とする五十余名の荷駄隊。

 帯剣のみの兵と荷を積んだ馬を中心とする隊が、樽を山ほど積んで合流した。


「これは?」

「荷物は王都で買い付けた酒樽と食料、それと調味料ですね。お酒、美味しいですよ?」


 周囲からの注目を集めながら王都周辺を出発し、無事に城郭都市ロングアイルへとたどり着いた。

 帝国の軍は城壁の北側へ仮設の陣を整えると、軍議として帝国の将軍から招集がかけられた。


 キースとオリバーを連れて本陣へと急ぎ、二人は外で待機し、陣幕内では指示されるままに簡素に用意されたほぼ末席に着いた。そして、その隣にはヘレナ子爵がわざわざ椅子を移動させて座る。

 中央の大きな机には、一枚の今回の討伐戦一帯の地図が用意されており、粗い表示ではあるが、砦や主要都市、その街道、そしておおよその山々や川が描かれていた。その地図も借り物らしく、部屋の四隅には連合王国の騎士が控えていた。

 席に着いたのは十五名。唯一の侯爵である帝国の将軍が六人の補佐官を引き連れどかりと座った。そして、その補佐らしき一人が礼をして話し出す。


「この度、帝国軍の総指揮を執るのはセント十三家のひとつ、ロングヒル侯爵です。その命により子爵の私が代理として進行役をさせていただきます」


 紙を見て、話しながら改めて爵位と名前を紹介していく。そして、末席のヘレナ子爵の紹介を終えた所で侯爵が大きなため息をつくと、静寂が包まれた。

 進行役が咳払いをして、進行を再開した。


「では本題に入らせていただきます。今回、西部一帯に発生した敵について、フォレストと呼ばれる大森林の賊、フォーサイド市反乱連合軍、湾岸同盟の三つです」


 説明に合わせて補佐の四人が反乱軍を指す駒を配置し、西部一帯へ増やしていく。

 続いて、ロングアイルの位置に帝国と連合王国の駒を複数配置し、先んじて対応している連合王国軍らしき駒を配置。


「帝国軍は連合王国軍主力とともに並行して南下を行います。そして、その隊列は通常時はこの席次順として末席を前線として進み、状況に応じて逐次、将軍である侯爵様より早馬で命じます。

 連合王国からの話とこの地図では、フィースポート城、フォーサイド市、ゴッディア城、トートラント城、ディアラビット城と順に攻略し、攻略後は主街道をそのまま西へ進んで峠から帝国へ帰還予定です」


 説明に合わせて動かされた駒は敵の駒を制圧して、帝国軍の駒だけ地図の西へ向かっていた。

 そして、侯爵が立ち上がる。


「その多くは堀と城壁もある城塞や都市であり、付随する砦もある。だが、賊や凶暴化した獣集団の撃退を目的とした堀は浅く、城壁も梯子で十分な高さ。

 今回は一番槍についても複数回の機会がある。各々の活躍を期待している」


 ロングヒル侯爵の続けた言葉に各将が一斉に返事をし、その後、静寂が落ちた。

 そして、ロングヒル侯爵は更に言葉を続けた。


「サンフィールド伯爵」

「はっ!」

「そなたは初陣であり、そばにヘレナ子爵がいるそうだな」


 貴族たちの視線が一斉に私のもとに集まった。


「はい」

「ヘレナ子爵を戻す考えはないか?」

「それは……」

「そうか」


 すぐに答えられない。その沈黙の間は、選ばなぬという選択をしてしまったことを示していた。


「では、サンフィールド伯爵。そなたには別動隊として、西部の大森林沿いの地域攻略を行いつつ南下を命じる。先に向かっている連合王国軍の別動隊と合流して、任務を完遂せよ。

 とはいえ、サンフィールド軍だけでは数が少ないであろう。アクアランス伯爵、ヘックス子爵を率い、連合王国軍の援軍として連携するように。補佐はヘレナ子爵がいれば問題ないだろう。荷駄隊の補給等については、そこのヘレナ子爵に聞いて決めるといい」

「承りました」


 そしてロングヒル侯爵は一同を見渡した。


「以上だ。各自、兵を十分に鼓舞し、明日からの行軍に備えるように」




 アクアランス伯爵、ヘックス子爵と目くばせして頷く。

 他の貴族たちが出ていくのを見守り、アクアランス伯爵、ヘックス子爵、ヘレナ子爵が集まって地図を囲む。


「アクアランス伯爵、ヘックス子爵。よろしくお願いします。ヘレナ子爵、今後についてだが」

「ヘックス子爵には右翼または前衛、アクアランス伯爵には左翼または中衛を任せ、サンフィールド伯は指揮に集中していただければ、兵站と情報についてはこの私がお支えいたしましょう」


 親ほどの年齢差がある当主のアクアランス伯爵がヘレナ子爵を睨んだ。


「この度、将軍から命を受けたのはサンフィールド伯爵だ。我らに指図とは何事か!」

「アクアランス伯爵の指摘には感謝します。ですが此度は私の初陣。ヘレナ子爵もそれを気づかっての発言かもしれません。アクアランス伯爵、ヘックス子爵、一度、戦術を聞いてみてはどうでしょう」


 アクアランス伯爵が渋々ながらも頷けば、ヘックス子爵も頷いた。

 そして全員の視線がヘレナ子爵へ向いた。その最初の一言は。


「ありがとうございます。私の言葉通りに動いていただければ、一兵も負傷させることなく、ここから西の大森林沿いにある十の砦のうち、五つを到着後三日で攻略してみせましょう」

「バカな! そんなことができるはずがない!」

「私は完全無欠の策士です。策に失敗したことは…………数えるほどしかございません」

「……そこはあるんだ」


 ヘックス子爵の呟きにヘレナ子爵は不敵に笑む。


「柔軟性のない策など無策と変わりません。論じるより、結果をご覧になればご理解いただけるかと思います」


 アクアランス伯爵、ヘックス子爵の物言いたげな視線がヘレナ子爵へ向いていた。

 ただ、それでも他に意見は出なかった。


「……決まりだ。説明を頼む」

「では、まずはここから西にあり、平野部を陣取ったときに我らがよく見える丘にあるプラト砦へ向かいましょう。情報によれば、そこで連合王国の別動隊とも合流できますし、なにより連合王国軍が妙な動きをして損耗したなどとと言われても面倒ですから」


 完全無欠の策士。そう豪語したヘレナ子爵の言葉で議論は、始まった最初の案のみで終わってしまった。


帝国のセント十三家

  御三家(近衛将軍)

   ウエストセント家(中央)

   オーバーセント家(中央)

   ダウンセント家(中央)

  護四家(征将軍)

   キャスサウス家(中央)

   ロングヒル家(中央)

   サーシディフィラム家(中央)

   フロンティア家(中央)

  東二家(護将軍)

   ラージポート家(東部:旧王国)

   セントポール家(東部:旧王国)

 

(他、西部、北部の計四家(護将軍))


ヘレナ子爵

 設定未定(王国出身の亡命者、女性)

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