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マイホーム


 うーん。眩しいよぉ・・・。

 

 窓から差し込んでくる太陽の光に目を開ける。どうやら朝になっていたらしい。

 心地よい風が窓から入り、ふわりと若葉色のカーテンを揺らす。

 私に、なめらかな肌触りの布がかけられていた。

 ゆっくりと体を起こす。どうやらベットの上で寝ていたらしい。


 

 寝ぼけた頭を無理やり起こし、緑系の色で統一されたおしゃれな部屋にあったドアをあける。

 目の前にあった手すりにつかまりながら階段を下りていく。


 「グワーッ」


 ・・・やけに聞き覚えのある鳴き声がする。

 階段を下りた先には多くが木でできている家具に、広いリビングが広がっている。そこにある椅子に座っているミニ神様と、狸の茶太郎に・・・そして鶏がいた。

 

 「うげっ」

 

 鶏を見て顔をしかめると、鶏は傷ついたようにうなだれた。すまん、つい反射的に言っちゃったのだ。

 

 「おはようございます、お姉さん。よく眠れましたか?」


 ミニ神様は、二重のパッチリした目を細めて笑ってくれた。

 おぉ。朝から愛くるしいですね!

 ミニ神様の向かい側にあった椅子に座ると、茶太郎が膝に乗ってきた。茶太郎をなでながら言葉を返す。

 

 「おはよう。とてもよく眠れたよ!・・・で、この家のことなんだけど・・・」

 「ふっふっふ。この家はですね、お姉さんが住むように僕が作りました!お風呂もトイレもついていて、電気も水も使えますよ!気に入りました?」

 

 にっこにこでミニ神様が言った。

 

 「家を作ったって、ここを!?めっちゃおしゃれだし、まさにプロだね!私の好きな緑系の色をベースの部屋もあったからうれしい!ありがとう!」

 ついつい、満面の笑みが浮かぶ。どうやって作ったのかは謎であるが、これで衣食住の『住』は解決した。ありがとうミニ神様!

 「そうですか?・・・そう言ってもらえると何回か作り直したかいがありますね」

 

 ミニ神様の白いぷっくりした頬がちょっと赤い。

 前は勘違いだと思ってたけど、これで確信したぞ!ミニ神様は褒め言葉に弱いんだ!

 

 「・・・可愛い」

 「なんか言いました?」

 「ううん、何でも!  ところで、何で私この家に?」

 

 昨日、ミニ神様が鶏を鶏肉にしようとしていたところまでは覚えているが、そのあとの記憶がスコーンッと抜け落ちているのだ。 

  

 「昨日、僕を止めた後、お姉さん寝ちゃったんですよ」

 「寝ちゃった?」

 「はい。急に倒れたので驚きましたが、当の本人は気持ちよさそうに寝ていたので、起こすのもかわいそうだと思って家までおんぶで運びました」

 

 家までおんぶで・・・。言葉が頭の中で何回か繰り返される。

 家までおんぶ!ミニ神様が!?

 重くなかったかな!?

 ・・・いや絶対重かった!ごめんなさい!

 

 「迷惑かけてごめんね・・・。この家まで運んでくれてありがとう!」

 「どういたしまして。お姉さん軽いので、もっとご飯を食べたほうがいいですよ!」

 

 体重も―前の世界ではお菓子結構食べてたし―体格差もあって運ぶのも大変だっただろうに、気を使ってくれたんだろう。申し訳ない。

 これからはもっと運動しようと決意していると、ミニ神様がしゃがんで机の下にしいてある高級そうなカーペットを指さす。


 「そうだ!お姉さん、これを見てください」


 膝でなでられていた茶太郎をおろし、私も椅子から立ち上がって机の下をのぞいてみる。

 「模様?」

 丸い魔法陣っぽいやつが赤で描かれている。

 「これを踏むとですね、この家がここから大きい町の近くに移動します」

 「ハイ?」

 「はい?」

 

 んーと、私の理解能力がないのかな。頭がついていかない。

 「もうちょっと詳しく」

 「それ以外に説明いりますか?」 

 ほかに何か、といった様子で首を傾げて私を見る。

 だいぶ説明不足すぎじゃないかな!私は頭を抱えながら聞いた。


 「起きた時にチラッと窓の中から見えたんだけど、ここは森の中にあって、川みたいのもあった気がしたんだけど、あってる?」

 「あってますね。川が近くにあるほうが便利だろうと思って、魚も取れて自然災害になりにくい川の近くに建てました。ここは、お姉さん以外にほぼ確実に立ち入る人がいない山です」

 「何で?」

 「・・・そのうち分かります」

 怪しい。普通の山なら誰かはいそうなものである。 

 じっとり視線を送っていると、目をそらされた。

 

 「説明するのが面倒なので・・・ここで暮らすうちにわかりますって」

 「ほんとに?」

 「本当です」

 

 ならいっか!

 

 「ごほん!結局のところ、この模様を踏まないでくださいってことです」

 「じゃあある意味がないんじゃ?」

 「備えあれば憂いなしっていうじゃないですか!」


 もともと人込みは苦手だから自分から行こうと思わないけど、いつか使う日は来るのだろうか。

 でも、町って言ってたし食料などを買いに行く時があるか。

 買う=お金。あ・・・お金もってなーい。

 とりあえず、ここにいれば魚とかあるし食べ物には困らない・・・よね?不安はあるけど、何とかなるでしょ!

 

 突然、ミニ神様がポンと手をうった。 


 「忘れそうなので今渡しておきますね!」

 

 そう言うと、ピカッとミニ神様の手が光ったので目を閉じる。

 数秒してから目を開けると、前の世界でいう、冷蔵庫とクローゼットがあった。


 「これは・・・?」

 「お姉さんのマイホーム記念にどうぞ!冷蔵や冷凍だけでなく、扉をとじたまま食料を思い浮かべて言うとだいたいの食料をだせる冷蔵庫!同じように、思い浮かべて言うと服を出せるクローゼットといった優れもの2点です!なんと!電気もいりませーん!」


 ミニ神様が、少し商品紹介のような感じになっている中。

 私は雷に打たれたような衝撃を受けていた。


 そんなおいしい話(物)があっていいの?いいの・・・!?

 こんなの・・・受け取るしかないよ!


 やったー!衣食住問題解決だー!バンザーイ!


 「本当にありがとう!・・・家だけでなくこんな便利グッズまでくれて、ミニ神様怒られない?」

 「何言ってるんですか!僕はただマイホーム記念のプレゼントを友達にあげただけですよ?」

 大丈夫かなぁ。こんないい待遇をうけて。それにしても友達。友達か・・・この世界で初めての友達が神様ってなんか不思議だネ。誰だとしても、やっぱり友達といわれるとうれしい。


 自然とニヤニヤしてしまう口元を隠しながらミニ神様に家具の配置の相談をしていると、茶太郎が冷蔵庫やクローゼットに近寄っていく。冷蔵庫の扉を開けて冷たさに驚いているのを見て、ミニ神様と顔を見合わせて笑った。

 



♦♦♦♦♦♦



 そんな幸せそうな二人と一匹を見つめる、鶏の姿があるのだが・・・悲しくも全員に忘れられているのだった。

 

 

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