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今日は何の日、焼き鳥の日・・・!?

題名に『焼き鳥の日』と書きましたが、この話の日にちが焼き鳥の日というわけではないので、そこは揶揄だと思ってもらえるとありがたいです!


 「いただきまーす!」

 

 我先にと焼き魚をがっつく狸の茶太郎に微笑みつつ、私はちょっと興奮していた。

 異世界での初ご飯!どんな味なんだろう!


 ワクワクしつつ、ぱくっとかぶりつく。魚からパリッと音がした。

 「んっ・・・!」

 思わず目を見開く。脂がのっていてすごくおいしい。白身魚のように見えたが、鮭のような味である。


 

 今日一日だけでいろいろあったなぁ。

 魚を食べることができる幸せをしみじみ嚙み締めながら振り返る。


 私にとって前の世界である日本で生きていたころ、お母さんはどんなに忙しくてもほとんど毎日午後六時には家に帰って夕飯を作ってくれたなぁ。

 ・・・そんなお母さんにとって、私はひどい親不孝者だろう。ここまで育ててくれたのに車にひかれ、ぽっくり逝ってしまったのだから。


 せめて、お母さんに私をひいた人からの慰謝料とかが振り込まれていてほしい。


 

 

 そういえば、鶏に食べられそうになった時は死ぬかと思った。鶏も、今は後ろで気絶しているけどね。

 だけど、

 「さんざんな目にあっているはずなのに、楽しいって思っちゃうんだよね・・・」

 きっと、茶太郎やミニ神様のおかげだろう。幼くも腹黒い笑顔が頭に浮かび、つい笑みがこぼれた。


  


 食べ終わって眠くなり、うとうとしてきた時。


 プルルルル!

 けたたましい着信音に、眠気が覚めた。茶太郎も起きてしまったようだ。

 私のアウターのポケットで振動がある。いつから入ってたんだろう。

 どうしよう。出るか、出ないか。


 五回目の着信音のあと、意を決して通話ボタンをおした。

 「もしもし・・・?」

 「もしもし!お姉さんであってますか?」

 声変わり前の、少しハイトーンな、この声は――

 「ミニ神様か!」

 「はい!急に電話してすみません。どうしてるかなーと心配になって電話しちゃいました」

 「大変だったんだよ・・・」

 今まであったことをざっくり説明する。

 「初日からずいぶんな目にあってますね・・・。そんなお姉さんに、家を準備しておきました!」

 「家?どこにあるの?」

 「じつはもともとつくっておいたんです!今からそっちに行きますね」

 「はーい」


 ん?『今からそっちに行きますね』?


 どうやって?


 疑問に思った瞬間、パァッと眩しい光が降り注いだ。光が弱まり見上げると、ミニ神様が落ちてきてふんわり着地し、目の前に駆け寄って花が咲くような笑顔を見せてくれた。


 「こんばんは!茶太郎もこんばんは」

 

 私も挨拶を返すと、茶太郎も後ろ足を起用に使って立ち、ぺこりとお辞儀のようなものをした。

 茶太郎のお辞儀に胸をときめかせ、なでながら言った。

 「登場の仕方、すごく神々しいね」

 「でしょう!おじいちゃんに相談したところ『登場とは最初が肝心だ!目立って目立って目立ちまくれ!』と言われたので、一生懸命考えました!!」

 「そ・・・そっかぁ・・・」


 ミニ神様のおじいちゃん、手紙の件もそうだったけど個性的な人だなぁ。

 とはいえ、ミニ神様も満足しているようだし何も言わないでおこう。


 「考える時間で、訪ねるのが遅くなっちゃったんですけどね」

 「そんなことに時間をかけ・・・あ、いや、そうなんだ」


 暇なのか、暇なのか神様たち!

 登場の仕方を考えているミニ神様とミニ神様のおじいちゃん・・・おじいちゃんにはあったことないが簡単に想像できてしまった。

 ミニ神様たちのせいで、神様暇疑惑が私の中でできちゃったよ!


 案外ミニ神様もちょっとぬけているところがあるからな。気を付けないと。

 

 「で、家を案内する前に・・・お姉さんを食べようとしたアホな鶏はどこです?」

 「あぁ、そこで気絶してるよ」

 「なるほど。こいつが・・・」

 

 少し考え込んだ後、鶏の近くまで迷いなく歩いていく。

 そして、鶏を指でつつきながら、よく聞き取れない小さな声でぶつぶつとつぶやきだした。


 「この、手間とらせやがってアホ鶏め。あやうくお姉さんが死ぬとこだったじゃないか・・・まったく、二度目の人生を手伝うどころか、初日で終わるとこだった・・・」


 はぁ、と大きくため息をついて私に向き直り、いい笑顔で言った。

 それはもう完璧な笑顔なんだけど、心なしかどす黒いオーラが出ているような・・・?


 「今日の晩御飯、魚だけじゃ足りませんよね?」

 「えっと・・・大丈夫だよ?」

 「遠慮なさらず。ちょうど、新鮮な鶏肉がそこにありますから」

 ミニ神様の後ろで気絶している鶏をクイッと親指でさした。

 

 新鮮な鶏肉。うん、確かに新鮮だけども!

 

 「まだ生きてるよ!?」

 「まだ、ですよ。ま・だ!今から調理すればいいだけです!」

 目が本気だ。すでに、どこからか取り出したのか包丁を持っている。

 もとからさばくつもりで来たのだろうか。小学生ぐらいの見た目をしているため、包丁がでかく感じてさらに怖い。


 「やめとこうよ!ね!」

 今すぐにでもさばき始めそうだったので、必死に手をつかんで止める。

 「味は大丈夫です!僕、こう見えても料理は得意なので!」

 「そういう問題じゃなくてね!?あと、茶太郎も加勢しないで!」

 

 茶太郎も殴る気満々で、伸びをしだした。茶太郎はもう、一回殴ったでしょ!

 ミニ神様の小さい体のどこにそんな力があるのか、手をつかんでいる私を引きずりながらじりじりと鶏に近づいていく。

 

 「家!家を案内してくれるって言ってなかった!?」

 「あ、そうでした!」

 どうにかこうにか止めようと悩んだ末、思いついて言った言葉に、ミニ神様はころっと態度を変え、手に持っていた包丁をおろした。

 「お姉さんも疲れているでしょうし、すみませんが今日は焼き鳥はなしにしますね!」

 「調理方法まで決まってたんだね・・・」


 ミニ神様の言った、『今日は』の言葉に若干寒気を覚えた小鞠だった。


 

 

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