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上から何かが落ちてきた

 ぽすっと上から落ちてきた何か。

 その何かが、ゆっくりと近づいてくる。


 茶色い、もふもふした毛。短い手足に丸っこい耳。

 そう、つまり・・・狸だった。


 「っ!かわいい~!」

 黒々とした真ん丸な目がこちらを向く。目が合った瞬間、嬉しそうに駆け寄り足に飛びついてきた。

 ぎゅうっとしがみついたまま、顔をうずめて離さない。


 「こら!久々に会えてうれしいからって、急に飛びつかないでください!お姉さんが戸惑ってますよ!」

 ミニ神様が狸の首根っこをつかむと、名残惜しそうに足を離した。


 「久々って?この子とは初対面だよ」

 

 すると狸がガーンとショックを受けたように、うなだれた。この狸、分かりやすい。

 

 「え、え。なんかごめんね」


 申し訳ないけど、覚えていないものは覚えていないのだ。

 もし昔、狸に会ったのだったら覚えているはずなんだけどな。


 「この子は死ぬ前、お姉さんに網に絡まっているところを助けてもらったらしいです。お姉さんが五歳ぐらいだったといっていたので、覚えていないのも無理はないと思いますよ」


 「五歳かぁ」

 

 それは覚えてないかも。

 ていうか、狸と意思疎通できるなんてすごいなミニ神様。


 しゃがんで、うなだれている狸の頭をなでると、すりすりと頭を手にこすりつけてきた。

 すごい。ふわふわしてる。

 猫や犬などの動物を飼うことに憧れがあったので、一緒に暮らせるなら嬉しい。


 「知能はそれなりにあるはずなので、話せないけれど話を聞く相手ぐらいにはなると思いますが、お姉さんが連れて行きたくなかったら連れて行かなくても大丈夫です」

 「じゃあ、君はどうしたい?私に昔助けられたからって、ついてこなくてもいいんだよ?」

 

 もしミニ神様について行けって無理やり言われていたらかわいそうなので、狸の意思を聞くことにした。

 そりゃあ、私は一緒に暮らしたいけど強制するのはよくないからね。


 すると、いやいやするように首を振り、両方の前足をそろえてお願い、のポーズをしてきた。

 

 あざとい。これは、行きたいってことでいいのかな?それに、こんな可愛いポーズされちゃったらねぇ・・・。


 「よし、一緒に行こう!」

 としか言えなくなるのである。

 

 喜んだのか、手をバンザイして私の周りをグルグル回り始めた。


 「二足歩行だなんて器用だね」

 「狸とはいえ、一応人でいえば五歳ぐらいの知能は持っていますから。何なら、戦闘になったら結構強いと思いますよ」

 「狸が?」

 「はい、狸が」

 「戦闘って誰と?」

 「・・・いろいろと」


 ミニ神様が、ごまかすように少し目をそらした。

 狸が強いのは頼もしいけど、できる限り戦闘にならないことを願おう。


 「で、狸のことなんですけど!」

 あ、話そらしたな。


 「この狸死んでいるので、基本的に食べ物なら何でも食べられます。なので一緒に住むとしたら一緒のご飯をあげてください」

 「え、でも第二の人生・・・転生するから普通の狸になるんじゃないの?」

 「そこが普通とはちょっと違うんです」

 ビシッと指をさされた。


 「狸とお姉さんはもう死んでいるんですが、遺体が残っているんです。なので、それを有効活用します。もちろん、今までとは違う体に転生することもできるんですが、急に知らない体を使えと言われても嫌だと思うので、もとの遺体を使いたいと思います」

 「じゃあ、私は今まで生きてきた状態でもどれるんだ」

 「はい、特別に頭などのけがは治してあるので安心してください!」

 「ちなみに、今までとは違う体に転生したらどうなるの?」


 そうですね、と少し考え込み、にっこりと笑った。


 「お姉さんの記憶がなくなるので、すごくめんどくさいです!」


 ・・・うん。めんどくさいから、元の体を使えってことだね?

 意外とちゃっかりしてるな。


 「あ、遺体がむこうで消えてしまったら騒ぎになるので、偽物を置いておきました!」


 よかった。もしお葬式とかやってて、遺体が消えたらパニックになっちゃうからね。

 うんうんとうなずいていると、さっきまで走り回っていた狸がズボンのすそをクイッと軽く嚙んで引っ張った。


 「どうしたの、飽きちゃった?」

 わしわしとなでると、それもそうだけどそうじゃない、と何か言いたげにこちらを見上げてきた。

 

 「たぶん、名前を付けてほしいのでは?」

 大当たり~!ともふもふした短い前足で丸を作った。


 「あぁ!そういうこと!」

 狸だけじゃ呼びにくいよね。

 期待しているのか、キラキラした目でこっちを見ている。


 「この子の性別は?」

 「オスです」


 男の子か。やっぱりかっこいい名前がいいのかな。

  

 「『たけし』は?」


 ・・・一人と一匹で、そんな微妙そうな顔しないでよ。傷つくって。

 いいじゃん、『たけし』かっこいいよね?それか『たぬお』とか?

 でも、なんかなぁ。

 茶色い狸・・・あ、これならいいんじゃないかな。


 「『茶太郎』は?」


 すぐに反応し、尻尾をふった。まるで、さっきの名前よりはましだというように。


 「『茶太郎』ならいいと思います!」


 ミニ神様もそう言っているし、そうしよう。


 「茶太郎、大変なこともいっぱいあるかもしれないけど一緒に頑張ろうね!」


 了解!と胸に飛び込んできた茶太郎を抱きかかえる。





 「・・・重っ」

 

 つい出てしまった言葉に怒って、暴れだした茶太郎をなだめるのにミニ神様にも手伝ってもらった。

 ミニ神様が訳した茶太郎の主張は、この重さは筋肉なの!健康的なの!だそうだ。


 デリカシーないこと言ってごめんね、茶太郎。

 

 でも怒って手足を振り回している様子もだだこねてるみたいで可愛いよ、なんて言ったらもっと怒ると思うので、心の中にしまっておいた。


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