幸運も突然やってきた
「ひょぉっ!」
急に視界に逆さまで現れた顔に驚き、息をのむと変な声がでた。
そして、反射的に腕を突き出した。
「うわっ!」
その顔・・・その子は軽くよけ、床に着地し、私から数歩の距離を置いた。
「ちょっと!危ないじゃないですか!」
とこちらを軽くにらんでくる。
だいだい七、八歳くらいだろうか。
肩ぐらいにのびたきれいな銀髪に、周りの光を反射して輝く青い目は大きくパッチリとしていて、女の子と間違えるぐらいのものすごい美形だ。幼さ特有のふっくらしたほっぺたが可愛らしい。
この子、絶対将来モテると思う。
「お姉さん、聞いてます?」
「あ、聞いてるよ!ごめんね、びっくりしてつい殴りそうになっちゃった」
「ついって・・・まぁいいです。それより、気分が悪かったり、痛いところはありませんか?」
「全然ないよ・・・って、君さっき浮いてたよね?それに私、車にひかれて死んだはずじゃ?」
自分の手や足を見てみても、傷一つついていない。
すると、男の子が近づいてきた。
「ここは僕専用の空間であり、何でもできる空間ですから。ほら」
男の子が指さした方向を見ると、今まで真っ白で何もなかった空間に小さな芽が生えている。
「すごい!だから浮いてたんだね」
「はい。だけど、ここに来れる人は死んだ人だけなんです」
「やっぱり私死んだんだね。君も死んじゃったの?」
「随分と落ち着いていますね。えっと、僕は死んでないんです。これでも一応、神様なんですよ!初めての夏休みの宿題で、僕にお姉さんのことを任されたんです」
誇らしげに、えへん、と胸を張った。誰かに頼られたのがうれしかったのだろう。
にこにこしていて、とっても愛らしいです。
それにしても、神様でも、夏休みの宿題あるんだ。
私の中の神様のイメージが崩れた気がした。
初めての夏休みの宿題ってことは、まだ小学一年生なのかな?言葉遣いとか、すごくしっかりしてる子だな。これからは、ミニ神様って呼ぼう。
「そうそう、僕のおじいちゃんからお姉さんあてです。渡してって頼まれてたんです」
「手紙?」
渡された手紙の封筒から便箋を取り出し、中身を見る。
『小鞠ちゃんへ
車にひかれちゃうなんて、災難だったね。まだ十五歳なのにこんな早く死にたくなかったよね。ごめんね!ホントに!
そこで、小鞠ちゃんをひいた奴に、一生解けない呪いをかけておきました!ちなみに、何を食べても腹をこわすという呪いです!
あと、孫の夏休みの宿題が、『死者の第二の人生を手伝おう』だったのでぜひとも小鞠ちゃんに手伝って欲しいです。
まだまだ幼くて未熟な、かわいいかわいい孫をよろしくお願いします!
みんなのおじいちゃんより』
テンション高いな!
みんなのおじいちゃんって、神様だからあながち間違ってない・・・のか?
そもそも神様が呪っちゃっていいんだ・・・。
「なんて書いてありましたか?」
何が書いてあるのか気になっているのか、そわそわしている。
「・・・孫の宿題を手伝ってって書いてあったよ」
まとめるとこういうことだろう。呪いだとかは、別に言わないほうがいい気がする。まだ一年生なのに、教育に悪いからね!
「じゃあ、お姉さんが『死者の第二の人生を手伝おう』の宿題を手伝ってくれるんですね!」
「そういうことになるみたいだね?」
手伝いを手伝うって、ややこしいな!一年生の宿題にしては、ハードルが高い気がするんだけど。そこは神様だからなのかな。
「私は何をすればいいの?手伝うって言っても、私が第二の人生をおくるってことだよね?」
「はい!基本的に、僕は『死者の第二の人生を手伝おう』といっても見守ったりアドバイスしたりする程度らしいです。お姉さんには今まで生きてきた世界ではなく、別の世界、つまり異世界で生きてもらうことになります」
「異世界?」
「それは、行ってからのお楽しみということで。とりあえず、お姉さんの回復力を限界まで高めて、攻撃力と防御力も・・・あと毒は効かないようにして、でも薬は効かないと困るから・・・」
ぶつぶつつぶやきながら、空中で何かを操作している。
つぶやきを聞く限り、結構いい条件で別の世界とやらに行かせてもらえるのだろうか。とてもありがたい。
今度こそ、ひかれたときのような痛みを感じることもなく穏やかに過ごし、寿命を迎えて見せる!
「よし!これできっと大丈夫です!人はもろいですから、ちゃんと限界まであげておきましたよ!」
「ありがとう?」
何をあげたんだろう?と思ったが、やり切ったようなミニ神様の顔を見るとどうでもよくなってくる。
「あ、そうだ!この子も連れてってあげてください!」
ぽすっと何かが上から落ちてきた。




