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第八章 返済停止宣言

 朝いちばん、床に白墨で小さな円を描いた。三人で座り、三分会議を二回。音を集め、紙に一行で書く。——提出前相談を入口の前に。——中断の切れ目を昼前へ前倒し。——新人の再作業偏在、声掛け順を固定。入口には薄い布で作った札を吊るす。「調律中」。これが合図だ。


 工房主は掲示の灰紙を裏返し、静かに言った。「盲目的な返済をやめよう。奪われていた五分を、必要な場所にだけ返す。必要ない遅延は数字で消す。払うところと払わないところは、ぼくらが決める」


 午前の結果は小さいがはっきり出た。中断 41→33、再作業 16%→12%、提出前相談 3→7。アジェルは灰笛の音に気づいて扉の方を見る。「監察官だ。——仕方ねーな、書式は俺がやる。円は“計測”として申請。板の数字は毎日出せ」


 灰帽は札の前で足を止め、角を整えただけで去っていった。雪巴は〈時の布〉を指で押し、戻る速さに合わせて息を整える。島で身につけた境界線の引き方が、いま、工房という生活にも役立っている。三分で戻る。三分で進む。これが、奪われた時間を取り返すやり方だ。

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