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第七章 最初のデプロイ

 工房主は静かな人だった。黒い作務衣の袖をまくり、雪巴の紙束を指で叩く。「待ちが二つ消えている。理由は“遊び方の再設計”だね。——きみ、仕事は、遊戯みたいに楽しんでほしい」


 胸の奥の硬い欠片が、音もなくほどけた。投入前に三点だけ確認する。仕様を声に出して読む。仮説を一行で書く。失敗時の一手戻しを赤字で決める。雪巴は砂時計を返し、三分で息を整えてからスイッチを押した。作業ラインが小さく震え、入れ替えた二番手の部品は待ちを踏まずに進む。唸りの帯がひと息低くなり、部屋の音が揃う。


「……今の、聞こえたか」とアジェル。右耳に手を当ててから、いつもの調子で言う。「仕方ねーな。数字を付ける。提出前相談は増えていい。ただし“前倒しの遅延”として記録」


 夕刻、壁の板に日次の推移が並ぶ。中断の山が丘になり、再作業が薄まる。雪巴はノートの端に、島で覚えた三分結びの輪を描いた。戻ってから進む。その癖は、虐げられた夜をくぐるために身につけたものだ。いまは、進むために使う。

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