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第十七章 風の方角

 翌週、手引きを持って他工房を回った。最初は疑いの目が多かったが、三分会議を一緒に一回やってみせると、空気が静まり、声が順番に並ぶ。色札で順序を決め、三指標を○△×で板に付ける。小さな成功がひとつ出ると、次は早い。入口の「調律中」の札を見て、監察官も足を止めなくなった。


 夕方、星桟橋の欄干に肘を置く。潮の匂いが少し暖かい。アジェルが隣に立ち、黒い髪をかき上げた。「速さは刃じゃない。君は方向を持っている」


「島で生き残るために覚えたやり方が、ここで役に立っただけだよ」

「それを“仕組み”にしたのが価値だ」


 白黒リボンを三分結びにして、わたしは笑った。ゲームより面白い仕事などない、と言われ続けた。けれど今、仕事を面白くする“遊び方”を、手順と数字に落とせた。風向きは変わった。次は外縁の大工房だ。断られてもいい。三分で戻れば、また前に出られる。


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