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第十四章 協働の始まり
会議机に白と黒の糸を一本ずつ置き、二人で撚った。表紙の帯にするためだ。題は『時衣手引き』。衣のように身につけられる手順書、という意味。最初の章は「誰でもできる三分会議」。準備:砂時計か呼吸で三分、紙と鉛筆。手順:①目的を一言②三分静かに観察③一行で共有④次の一手を一つ。欄外に〈一手戻し〉――失敗時の戻り方――を赤で書く欄も作った。
次の章は「三指標の板」。中断回数、再作業率、提出前相談を○△×で日次記録。さらに「帯域の聴き方」。右耳に手を当て、作業ラインの唸りを拾う練習。高音が増えたら詰まり、低音が整えば通っている、と具体例を挙げた。比喩は最小限、写真と図を多めに。
「配布はいつ?」とアジェル。
「明日の朝、三部。外縁の工房にも一部」
夕方、小さなデプロイをもう一度。手引きの通りに三分会議を回し、色札を合わせ、帯域を聴く。数字は中断 29、再作業 9%、相談 10。アジェルが帯に触れて言う。「……仕方ねーな。これは“誰でも回せる”。君の遊び方、手順になった」わたしは白黒の細いリボンを三分結びにし、表紙の角に結んだ。戻ってから進む、の印として。




