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第十三章 白の違い

 休憩室のテーブルに、わたしは四枚の小さなカードを置いた。真っ白、純白、霧白、月白。色で仕事の温度を共有するための札だ。真っ白=固くて手が付けづらい未着手、純白=情報が眩しすぎて整理が必要、霧白=あいまいで要確認、月白=落ち着いて進んでいる。壁の板に貼ってみせると、アジェルが眉を上げた。


「比喩だけで回るか?」

「比喩じゃなく“合図”。三分会議――三分だけ静かに座って、見えたことを一行で書く小会議――の前に色を合わせる。色が違えば、話す順番も変える」


 午後は小さな実験にした。霧白の札がついた工程を先に三分会議へかけ、次に真っ白を二人組で割る。純白は資料を一枚に圧縮、月白は触らない。結果は板に出た。中断回数 36→28、再作業率 14%→10%、提出前相談 4→9。アジェルは右耳に手を当て、作業場の唸り――帯のように続く音――が低く整うのを確認してから、ぼそり。


「……仕方ねーな。色の札、採用。週次でもう一回測る」


 色で揃えてから話すと、声がぶつからない。わたしはカードの端を〈時の布〉で縁取りした。押すとゆっくり戻る布は、戻りの速さで呼吸を整える道具だ。昔の家では誰の声も止められなかったが、今は自分の呼吸を先に整えられる。色を合わせ、三分を置き、数字で確かめる。これなら、過去の影も割り込めない。

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