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第31話 女の争いほど怖いものはない(アニー視点)

 走り去る真っ赤なローブ姿に「ミシェル?」と声をかけたアニーは、振り返らない彼女を不思議に思いながら、店の中に踏み入った。そうして、カウンター付近に視線を向けたかと思うと、不快だといわんばかりに顔をしかめた。


「ちょっと、何──はぁ、そういうこと? あんたいい加減にしなよ」


 アニーはゴミでも見るように、レベッカへと視線を向けた。


「キースにちょっかい出すのやめろっていったでしょ?」

「アニーには関係ないわ。キースはあなたの旦那って訳じゃないし、人の恋路の邪魔しないでくれる?」

「恋路? バカ言ってんじゃないわよ。あんたは人のものが欲しいだけじゃない。いい加減、泥棒猫はやめときな!」

「失礼ね! 誰が泥棒猫よ」

「あんたの他に誰がいるのよ!」


 聞き捨てならないとばかりに、レベッカはキースから離れるとアニーを睨つつ彼女の向かいに立った。

 口論を始めた女二人に、キースは顔をひきつらせた。これに巻き込まれていい思い出はない。腕を開放された今こそ、逃げ出す絶好の機会だ。


 気づかれないように後退ったキースは、カウンターにいる店員にこっそり声をかけた。


「店長は奥か?」


 そうとは気付かず、女たちの言い争いは続いている。


「私の知ってる限りじゃ、あんたの被害者は二十人を下らないわ」

「いい加減なこと言わないでくれる? まーだ五年前のこと根に持ってるわけ? そんなんだからサージにも振られるのよ」

「あたしが振ったのよ!」

「負け惜しみは哀れね」


 口元を手で隠してわざとらしく笑ったレベッカに、アニーは顔を引きつらせる。思い出したくもない五年前に付き合っていたクズ男が脳裏をよぎったのだろう。それを振り払うように、さらに声を張り上げた。


「私のことは関係ないじゃない! それより、キースよ! あれはミシェルのもんになったの。あんたの出る幕じゃないわ」

「ミシェル? あー、さっきのの娘ね。あんなのどこが良いのよ」

「教養に品性、若さだってあんたの何倍も上よね」

「教養? 品性? 冒険者にそんなもの必要? 若さだって、物は言いようよ。ただのガキじゃない。胸だってあるかどうか分からないし。私の方が何倍も良い女よ」


 長い髪をかき上げ、大きな胸を誇張するように体を揺らしたレベッカは「ね、キース」と呼び掛けながら振り返った。だが、そこに彼の姿はなかった。


「ちょっ、キース、どこ!?」

「バーカ、とっくにいなくなってるわよ」


 鼻で笑ったアニーは、睨み返してきたレベッカに「あんたなんて眼中にないのよ!」と言い放った。

 一向に終わらる様子のない言い争いの中、その場から抜け出したキースは店の奥、店長のいる事務室へと向かっていた。

次回、本日17時頃の更新となります


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