公爵家の次男坊
楽しんでいただけたら幸いです。
ヒューマン日間ランキング2位になれました。
皆さんのおかげです。
感謝しております。
3位まで戻ってきました!!5/16
返り咲きです!!
執務室に来いと父に呼び出された。
話の内容は分かっている。
三歳上の兄に襲爵させることだろう。
そして父は引退し、母と共に領地にでも引っ込むつもりなのだ。
ノックし、入室の許可を取る。
執務机で仕事をしている父はちょっと待てと言い、仕事を続ける。
私はソファーに腰を下ろして人を呼び、お茶の準備をしてもらった。
二口程お茶を飲んだ時、仕事が一段落ついたのか父が私の正面に腰を下ろした。
「私の跡継ぎの話だ」
「はい。兄上が継がれるのですよね?」
「本人が辞退してきた」
「はぁっ?どういうことです?」
兄は優秀でなんの問題もないはずだ。
「理由は?」
「言わなかったが、想像はついている」
「なんですか?」
「理由は本人に聞け」
「公爵家はどうなるのですか?」
「お前に継いでもらう」
「私の人生設計に公爵家を継ぐ、というものはありません。父上もまだ若いのですから、兄上の子が生まれるまで今のままで良いのではないですか?」
「私の人生設計にも公爵家の家長を長く続けるというものはない」
両親はとても仲がよく、早く引退して領地に引っ込み、あちらこちらを旅したいといつも言っている。
既に具体的な案もあるのだろう。
「お前が継ぐことになんの問題もないだろう」
「ですがっ、心構えというものに欠けています」
「今から持てば良い」
「そんなっ!」
「三年待つ。準備万端にしろ」
「ま、まって、待ってください。父上っ!!無理ですって!」
「下がって良い」
「そんなぁ・・・」
階段を駆け上り兄の部屋を拳でドンドンドンドンと力任せに叩く。
「そんなに叩かなくてもわかるよ」
扉を開けながら兄が文句を言う。
「私の感情がそのままノックになっているだけですよっ」
兄にとっては重荷が取れたのだろう、とても爽やかな笑顔を私に向けてくる。
「おまえには悪いとあまり思っていないが、まぁ、ちょっとは思っているかもしれない。未来の公爵様」
「おちょくってます?」
フッフッと兄が笑う。間違いなく僕をおちょくっている。
「何故兄上が公爵家を継がないのですか?」
「私には無理なのだよ」
「だから何故無理なのですか?」
「いやぁ、実は跡取りを作れないことが分かってね」
?????
「確率的には分からないのだけれどね、子を成せないみたいなんだ」
「えっ?」
何?
何を言っているのかわからない。
「覚えているかな?私が十歳の頃、死にかけたことがあるのを」
「え?ええ、覚えています」
「あの時、ただの風邪だったんだけど、拗らせてしまって四十度を超える熱が四日続いたんだよ。それが原因だろうと医者が言っているんだ」
「そんな」
「100%出来ない訳ではないが、かなり難しいそうだ」
「出来る可能性があるならっ!」
「公爵家はそんな可能性に掛けられるようなものではないと思うけれど、おまえはどう思う?」
「私も・・・そう、思います」
兄は満足そうに首肯く。
「私だって跡を継ぐために今まで頑張ってきた。それが叶わなくてがっかりしているよ。それにおまえに公爵家を継がせることになったことも申し訳なく思う。だが、後をおまえに頼むよ」
「兄上はこの先どうされるのですか?」
「父上が持っている子爵位をくださるそうだ。屋敷ももういただいた」
がっくりと肩を落とした。
「そこまで話は進んでいるのですか」
「おまえが公爵を継ぐまでに私はここを出ていくよ」
「急がなくていいですよ」
兄はクスリと笑い「ありがとう」と言った。
兄は準備が整ったのか、あっさり公爵家を出ていった。
同じく子が成せないからと離縁され、戻ってきた幼馴染のフィーネと一緒に。
私は毎日、父と執事にしごかれている。
婚約が決まり、三ヶ月後に結婚することに決まった。
父から言い渡された三年が経ち、私は公爵家を継いだ。
両親もあっさり領地に下がった。
私は仕事に追い回される毎日だ。
領主の仕事に慣れなくて失敗することも多々あるが、妻に励まされ、なんとか毎日を過ごしている。
子供が生まれた。可愛い女の子。
本当に可愛い。兄上は・・・寂しくないだろうか。
最近はなんとか領主として頑張れていると、思う。
執事に叱られることはいまだにあるけれども。
そんな時、兄から一報が届いた。
「嫡男が生まれた」と。
兄上!どういうことですかぁーーーっ!!
Fin
楽しんでいただけましたか?
誤字脱字報告ありがとうございます。
感謝です。