未来記少女─「メルルのくれたおふだ」~未来の魔法のおまじない~
夜空超えて
一つの流れ星が世界に落ちた
「ひ、光っ!?」
真夜中の突然の出来事
眠れなくてベランダ越し
それは小さな小さな光
隕石の落下とか
そんな大それたものではないけれど
僕ん家の庭先に落ちた光るそれ
父さんも母さんも眠る夜中の階段を駆け下りて
午前0時の玄関を開けた
「初めまして、かな?」
幽霊じゃない君と出会ったそれが最初
あれから七年
中学を卒業して、僕と同じ高校に通って、それから──君は
ずっと先の来世ですら会えなかった僕に渡したいものがあるんだって言った君
「それは、──何?」
「はい。シュウくんは、私のいる未来では、お爺ちゃんになってて、死んじゃってました。だから──」
「これを?」
時の呪いのお札
ずっとずっと先の未来では物理的な進化を超えて、より神様とか世界の根源とも言える力に近づいて来ているんだって、君との話。
「ただの、私のワガママかも知れないですが……。シュウくんが、もし良ければ」
会いたい人に会える
亡くした人にも会える
そんな、未来の魔法みたいなお札
「僕に、ずっと持っててほしいってことなのかな」
「はい……」
世界はめぐる
魔法のように
この夜空をかける時間みたいに
何度も繰り返し言ってた君のその言葉みたいに
だけど、それも今夜が最後
七年という月日は──、時の歪みの中でメルルの生存可能な未来の魔法の限界。
「遙かな太古──魂に刻まれた時の記憶が、私のいる未来で目覚めます。シュウくんのいるこの現世が始まりの時」
「どゆこと?」
「もう一度、宇宙は閉じます。けれども、このお札──正確に言うと、このアズライトで描かれた基盤は、時の巻戻りの力の反作用で私のいる未来へと飛べます。生まれ変わりの導によって」
「生まれ変わりの? 導?」
メルルのかき上げた背中の黒髪が金色に輝く
「待って──!!」
「待ってるよ……」
金色に輝く君が残した言葉
ちょうど七年前の夜
君の言った言葉が僕の心の中で繰り返し再生される
(初めまして──、かな?)
「初めまして、じゃない!」
どれだけ手を伸ばしてみても
輝く光に弾かれて
もう君には触れられない
「さよなら──、じゃないよね?」
「さよならじゃないよ! メルル!!」
光に包まれた君が
小さく小さく闇に吸い込まれて
初めましてを言ったあの時の君とは反対に
夜空に向かって飛び立った
「メルル──!!」
誰もいない家の庭先で僕の声だけが残った
君の残してくれたアズライトで描かれた基盤──未来のおふだ
こんなに泣いたのは初めてだった