8話
朝日が眩しい。
誰よりも早く起きてベランダで飲むコーヒーは格別だ。
「あ〜気持ちいいなあ〜」
「変態……」
「あ、あずさ! いるならいるって、言ってくれよ!」
「ふん、自分の世界で楽しそうにしてたから、ほっといてあげたのよ!」
「あのなあ、昨日のことはもう何回も謝っただろ。そんなにプンスカ怒るなよ。
ほら、ほっぺぷにぷにぃ。つんつーん。あれえ? この人もツンツンしてるぞぉ?
ぼくは笑顔が一番だと思うなあ」
「ソラ……なんで、一人でうつぶせになって、ベランダで倒れてるんですか……」
「ばいびょーぶ!」
〜〜〜
俺は両側の頬をおさえながら、玄関まで階段を降りていく。
「ったく、酷い目にあったぜ。一回チラッと裸が見えたぐらいで、どんだけキレてんだよ。
そもそも俺だってあいつに裸見られてるし、なんと言っても、ちゃんと確認せず入ってきたあいつが……」
「なーにブツブツ言ってんのよ」
「あ、ライリー。どーもぉ。おやおや、皆さんもうおそろいのようで」
「遅いわ。もう鶴さん来てんのよ。変態」
「裸見て、ほっぺツンツンはないかなあ」
「まさにエロガッパですね」
俺は孤独だ。
〜〜〜
「え? 打ち切り?」
車の中で俺が鶴さんに問いかける。
「ああ、お前とあずさが巻き込まれた例の異常事態だが、結局原因不明扱いで、調査は終了になった」
「こりゃ、入谷たちも浮かばれんなあ……」
「俺もそう思う」
すると、後ろから梓が会話に入ってきた。
「他の国のダンジョンでは、今までに似たことなかったのかしらね」
「たしかにそうだな。あり得る話だ」
その様子を見て、エマが口を開く。
「じゃあ、私……今度、米軍基地行ってこっちの軍の記録も見てこようか?」
「マジかよ、エマ! そりゃ助かるぜ!」
「私も昔の上官に連絡取れば、ある程度は調べてもらえるけど」
ライリーもバナナ食べながら会話に混ざる。
「私もです」
「お、お前ら……俺は今……猛烈に感動している!」
「うるさいわねぇ、大袈裟なのよ。そのくらいもっと階級の低い隊員でもできるわ」
「ライリー、照れてるのぉ?」
「ち、違うわよ! そもそもあんたが基地に行くなんていうから……!」
「まあ、ソラがいつも大袈裟なのはその通りですよね。まさにエロガッパ……」
こいっつ……。昨日から馬鹿の一つ覚えみたいに……。
「そうよ、鶴さん聞いて! こいつってば、ほんとにエロガッパなのよ!」
おっとっと?
「ちょっ、待て! この人に話すと一瞬にして、自衛隊の間で俺の品性が疑われることになる!」
「あらあら、どうしたのかしら~? バレると困るほど犯罪的なことがあったのかしら?」
「ちがーう! あれは事故だ! なんなら悪いのはお前だ!」
「うるせぇなあ高校生は。ほら、もう学校着いたぞ。さっさと降りた降りた」
降りる時にミアが鶴さんに言った。
「じゃあ、予定通り今日もダンジョンに行くので、帰りにも迎えお願いします」
「おーけーおーけー。じゃ、しっかり勉強してこーい。あ、ちょっとあずさは待って」
「なに?」
「こいつ何したの?」
〜〜〜
「うぅぅ……絶対あの人、俺が悪くないってわかってた。それなのにあんな衝撃! みたいな顔しやがってぇ……」
「いやお風呂の件はともかくとしても、ほっぺツンツンは普通にうざいと思いますよ」
「まーた、ミアたんは悪い言葉ばかり覚えてぇ。英国淑女の品格はダンジョンに置いてきちゃったか?」
「本当にうざいですね……」