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5話

 帰還した俺とあずさは、外で待機していた自衛隊に迎えられ、ダンジョンを後にした。

 基地まで送ってもらえるというので、自衛隊の車に乗った。


 俺は、ダンジョンから出られて安堵(あんど)すると共に、いつ戻れなくなるかも分からないと知ったこの世界を、車窓から目に焼き付けていた。


 助手席に同乗している自衛官が通話を終え、口を開く。


「ダンジョンの入り口が閉ざされたことは、こちらでも確認していた。この異常事態の中、よくぞ帰還したな。基地で山本司令がお待ちになっている。お前たちに話があるそうだ」


「司令が? 俺たちに直接ですか?」


 山本司令は攻略隊の最高司令官だ。


「今回はお前たちの護衛をしていた隊員が全員殉職しているからな。

 ただでさえ異常事態なのに、ダンジョンでの実戦経験がない人間が帰還するなんて、異例中の異例だ。

 お前たちから直接話を聞きたいというのは、もっともな話だと思うぞ」





 基地に着くと司令の執務室に案内された。


 司令はドアが閉まり、部屋に司令と俺、あずさの三人しかいないのを確認すると、しっかりと俺たちのことを見て、話し始めた。


東雲(しののめ)くん。水瀬(みなせ)予備隊員。この度は、無事で何よりだった。まずは、ダンジョン突入以降に何があったのか教えてもらいたい」


 俺たちは一連の流れを話した。

 突然、レベルの高いワイバーンの群れやドラゴンが現れたこと。護衛の隊員はダンジョン装備があるにも関わらず、全員死亡したこと。

 どうせ辻褄が合わなくなってばれてしまうだろうと思い、ダンジョン装備に換装したことも話した。


 そして米兵と出会ったこと、そこで聞いたことも正直に話した。



「そうか、今回は異常事態及び生命の危険があったため、換装については不問とする。

 しかし、在日米軍と遭遇したのか……」


「はい。俺たちもかなりの数のモンスターを倒しましたが、おそらく彼らがいなかったら、帰還は困難だったと思います」


「なるほど、大体の内容はわかった。

 まず、東雲くん。君の入隊試験の成績は把握している。今回の功績を認め、君さえよければ攻略隊に入ってほしい」


 俺は胸が熱くなるのを感じた。


「喜んで入隊させてください! よろしくお願いします!」


「周知だとは思うが、本来は予備隊員になったのち、多くの研修や訓練を経て、正規隊員に任命される。

 しかし、東雲くんと水瀬予備隊員については特例として、今をもって正規隊員に任命する。よいかな?」



 俺たちは目を合わせ、ニッと笑う。


「「了解!!」」


「そして、三つ頼みたいことがある。その前に、君たちに確認しておきたい。

 君たちは、自らの命を賭してでも市民のため、ダンジョンの完全攻略を目指す意志があるか?」



 ダンジョンの恐怖はしっかりとこの身で感じた。

 しかし、攻略隊員として戦うことへの決意は、全く変わっていない。


 あずさを見ると、同じ気持ちだとわかった。

 俺たちはうなずき合い、答えた。



「「もちろんです!!」」



「そうか。それは良かった。

 では、本題に入る。

 一つ、今回米軍と遭遇したこと及びそこで聞いたことは他の隊員や身内を含め、誰にも話してはならない。

 二つ、今後膨大な数のダンジョン探索任務に参加し、ステータスを向上させること。

 三つ、君たちには多国籍部隊に所属してもらう」


「「多国籍部隊?」」


「そうだ。先日行われた非公表の首脳会談により、日、米、豪、英による合同の長期的な、東京ダンジョン探索計画の実施が決定された。

 これに伴い、アメリカ、イギリスは自国におけるダンジョンの存在を公表。また、オーストラリアは過去のネバダと南極における、作戦参加を発表する」


「いったい、どうしてそんなことが急に?」


「旧東側諸国は現在、ダンジョンの軍事転用を計画している。

 ロシアに至っては、多数のモンスターを既に管理下に置き、研究段階だ。中国も台湾へのスパイ工作の結果として、実質的に台湾のダンジョンを手中に収めている。

 それに加え、ダンジョン装備が戦闘に使用される可能性も考えられる」


「でも、軍事転用って言っても核とかには敵わないんじゃ……」


「彼らの目的は、国を国土ごと崩壊させることではない。モンスターをダンジョンから出現したことにして、各国にばら撒き、衰退させ、国際社会においてリードすることだ。

 近年、ダンジョン研究において、旧西側諸国は大幅な遅れを取っていた。

 そこに史上最大規模の東京ダンジョンが現れた。西側は一刻も早くダンジョンを探索、解明し、研究の遅れを取り戻す必要があるのだ」


 司令の目は一国を導く一人として、覚悟を持っていた。


「日米豪英合同計画の第一段階として、多国籍部隊の始動が行われる。

 君たちの所属する部隊は、適性値が著しく高い者だけを長期探索計画参加国から集めた、少数精鋭だ。最低限の人数に絞ることにより、個々のステータスの飛躍的な向上を目指す」



「どうか君たちには理解してもらいたい。これは、新しい戦争のはじまりなのだ」



 ~~~~



 日米豪英合同 不確定領域 長期探索計画

 東京ダンジョン攻略隊  マル秘 多国籍部隊


「先駆隊」   隊員名簿 (全5名)


<日本>

 【隊長】

 東雲 空 (SORA SHINONOME )

 適性値:95% 男性


 水瀬 あずさ (AZUSA MINASE)

 適性値:93% 女性


<アメリカ>

 エマ ホワイト (EMMA WHITE)

 適性値:94% 女性


<オーストラリア>

 ライリー トンプソン (RILEY THOMPSON)

 適性値:92% 女性


<イギリス>

 ミア エバンズ (MIA EVANS)

 適性値:92% 女性



 年齢は全員16歳。

 なお、海外部隊出身の3名の隊員については特例として、恵陽けいよう高校への編入を認める。


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