第8話 『南』 放課後 生物部部室 佐倉 いのえ(さくら いのえ)
「昨日、オージが突然やってきてね。『何か変わったことはないか?』って聞いてきたから、『・・・何のこと?』って答えたら、勝手に部室内を探し始めたんだ。なんか軽く急いでいる感じだったかなぁ」
佐倉は斜め上を見上げながら、昨日のことを思い出している。
「それで、『何か変わったこと』は見つかったんですか?」
ラギの質問に対し、佐倉は斜め上を指さした。
「あそこの時計の横の賞状の上に、変な文章が貼ってあった」
間違いなく謎解きだ!
「ユウレイ・・・ガガ・・・ンボ・・・? トゲアリトゲナシ・・・?なんのことだろう?」
ラギは文章を口にしながら考えてみたが、さっぱりわからない。
「あぁ、このカタカナで書かれているのは、全部昆虫の名前だよ」
佐倉はこのくらい知っていて当然という顔で言った。
「えぇ?このロックロクビなんとかってのも実在するの?」
ミサの質問に対し、
「もちろんいるよ。すごく首の長い虫で有名だよ。食べたことはないけどね」
佐倉にとって昆虫とは全て食べ物のようだ。
「矢印のところを縦に読むと・・・レ リ セ イ キ シ・・・うーんなんかちがうなぁ」
「物の怪とか死霊とか・・・なんだか怖い言葉がいっぱい入っているね」
「物の怪っていうのは、お化けとか妖怪とかそういうもののことだよね?そんな奴らに誘われるのはごめんだなぁ」
ミサはお化けが嫌いだった。
・・・ん?縦読みか・・・あと、お化けと妖怪が誘ってくるなら・・・。
死霊・・・シリョウ・・・・シリョウ・・・・。
あ!!! 小さなヒントが結び付き、ラギはひらめきに到達した。