悪役令嬢、今日この頃
まったく、頭をぶつけてから前世の記憶とやらが、今日この頃の楽しみをうばうのよね。始めにモテモテでイヤな女だと思っていた子が、前世でハマっていた乙女ゲームの主人公だとは。今までいじめたから、破滅するんじゃないかしら私。それからイケメンの王子をひとりじめしていたけど、前世の乙女ゲームのとおりだと、このまま行くと破滅するので今は距離を置いている。今までのように悪役令嬢を演じていては破滅する。だから、これからはおとなしくしていようっと。
あーあ、ひまだなぁ。私はいま川を眺めている。そもそも、なんで私ってこの乙女ゲームの世界に転生したのかしら? その前世の記憶によると、私は乙女ゲームを一週間も寝ずにやっていたから、さぞかし心臓が何かのきっかけでとまった、ような記憶がある。あーあ、私ってそれほどに、この乙女ゲームの世界が好きだから転生したのかしら? それも、よりによって悪役令嬢に。あーあ、ひまだなぁ。でも、川に映っている私の姿は悪役令嬢そのもの。私は頭をかかえた。どうしたらいいんだろう?
すると、乙女ゲームの主人公ことメインヒロインがやって来た。ヤバい、私ってこのまま破滅するのかしら? そもそも、前世の記憶があったら、この子をいじめなんかしないのに! でも、もう遅い。私はこれから破滅していくのだわ。あーあ、私ってどんだけ運がないのよ。
「あの、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
ヒロインは確か、超がつくほどのやさしい女の人。でも、今までの私のいじめはそりゃあひどいものだった。ああ、私は終わりね。
「なにかしら?」
私は自分でもわかるぐらいに暗い声で返事をした。
「やっぱり、何かあるのですね?」
そうヒロインが言うなり、私の手をにぎってきた。嬉しいけど、私はこのまま破滅するのよ。私は暗い表情をうかべる。
「私、もうあなたをいじめないわ。ごめんなさいね、今まで」
こんなことを言っても遅い。でも、私はこのままこの子に何も言わずに破滅するのはちょっとイヤだった、から。だから、せめての謝罪の言葉を私はヒロインに言った。
「何を言っているのですか? もう私たちは友だちでしょ!」
え? なにこのやさしいヒロインは。私はびっくりして、言葉が出てこない。ヒロインが私の手をにぎって笑顔を見せる。ああ、天使のような笑顔。私はちょっと泣きそうになる。すると、
「私は悪役令嬢と呼ばれている貴女のことが好きなのです!」
え。なにかしら? 告白かしら? それとも、乙女ゲームの世界の故障かしら?
「あ、ありがとう。私もあなたを好きよ?」
うわー! いきおいで言ってしまった~!?
「ありがとうございます☆」
そう言ったヒロインの笑顔はやっぱり天使のような笑顔。まあ、これで破滅するのを回避できるのならば、いいかしら?
私、悪役令嬢、今日この頃。
私の第2の人生はどうやらこれからも大変なようね。
おわり☆




