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3/4

プロローグ 3


 さて回想のミカエラが倒れた所で突然だが、前世のわたし―――城井美香が最も熱中した乙女ゲーム、『薔薇姫の君とともに』を紹介しよう。


 このゲームの舞台は架空の国、ティファ王国で名門と名高いローザンヌ学園。その国の第二王子・第二王子側近の騎士団長の息子・情報通の公爵子息という攻略対象達と織りなす、王道の学園恋愛物だ。

 さらにライバル役として出てくるユリアンヌは超が付く程真面目で主人公の妨害なんて絶対しない良い子。むしろ周囲の取り巻きがヒロインに楯突くと仲裁してくるので主人公からの好感度は高い方だと思う。

 ゆえに昨今流行りの、やれ悪役令嬢は国外追放だの処刑エンドなんてものはこのゲームには存在しない。一番酷くて公衆の面前でヒロインにジャパニーズ土下座をかますぐらいかな。

 スチルで見た時は、まあドン引きするよね。西洋チックな雰囲気纏わせたお嬢様が土下座をする光景は中々凄い。しかも無駄にここだけアニメーション。何処に力入れてるの製作陣…。


 ともかく、『薔薇姫の君とともに』は恋愛フラグを立てやすくバッドエンドになる事も少ない、初心者も安心の親切設計になっている。ヒロインは気になるキャラクターと仲を深めつつゲームタイトルにもある"薔薇姫"になる事が目的である。


 だが、私がこのゲームにのめり込んだ理由はそれでは無く、このゲーム特有のシステムに起因する。



 それは、『誰も攻略せずに友情エンドを迎える事』で攻略対象()()の恋愛が解禁される、というものだ。



 前世の私はオタク、それに加えて腐女子だった。

 そして『薔薇姫の君とともに』のキャラデザは長年ファンだったイラストレーター、さくまるるこ先生が手がけたもの。見目麗しい攻略対象同士が恋に落ちる乙女ゲーム(BLゲーム)にハマらないはずがない!

 しかもそのルートを選んだ時の主人公は攻略対象の恋愛相談に乗ったり、2人の恋を応援するサポートキャラとなる。元が乙女ゲームだから主人公は攻略対象と好感度が高いまま、側で男同士の恋愛模様を見守れる、ということだ。なんと素晴らしい!!


 ちなみにその場合、薔薇姫にはCPの受けに当たる攻略対象が選ばれる。同性結婚が合法化された世界観なのだ。



 というわけで、わたしは友情エンド以外のルートは選ばないで日夜問わず遊びまくった。CPを考えたり時には新たな可能性(萌え)を見出したりして充実していたが、大学は休みがちになった。


 おせっかいな幼馴染がお世話してくれていなければ留年は免れなかっただろう。卒業まであと少しで事故に遭ってしまったから、意味はなくなってしまったけど…。


 ふと彼の姿が思い浮かぶ。思い出の中の彼は、大学を休んでゲームに没頭するわたしを怒るフリをしつつ、いつも笑っていた。

 話しかける時に覗き込む仕草。濡羽色のさらりと揺れる髪とアーモンド形の目。笑むときゅっと笑い皺をつくる様子を見るのがわたしは好きだった。


 お別れもなく死んじゃったの怒ってるかな…。悪い事をしたなぁ…。

 唯一の幼馴染が幸せに暮らしている事を願おう。


 あ、親にもオタバレしてないから、このゲームも破棄しといて!お願い!!



 閑話休題。



 ともかく、運良く(?)入学前日に記憶を取り戻したわたし。

 わたしの容姿が主人公と一致している事、そして第二王子の名前が"アルバート"という事。よく見たら部屋の内装なんてゲーム内の夜セーブする時の背景にそっくりだし、ここが『薔薇姫の君とともに』の世界であることは間違い無いだろう。

 急な展開だが男爵令嬢として生きていた"私"の記憶もあるおかげで家族や使用人にも不審がられず、普段通りに振る舞う事が出来たと思う。


 ……記憶を取り戻した衝撃で気を失ったせいで、今日の入学式には参加出来なかったけどね!侍女二人に安静にするよう懇願されてしまっては休むしかないよね…。


 体をすっぽりと包む自室のベッドに体を埋めながら、今後の展開を考える。


 ゲームの第一イベントは確か、キャラ選択場面で選んだ攻略対象にパートナーとして選ばれる『え!私が人気者の彼とパートナー!?』だ。

 入学式の日に登校した主人公に、攻略対象が持つ事情からパートナーになるよう頼まれるのだ。

 それは第二王子として普段触れ合わない地位の者と接触する目的だったり、過去に主人公と出会っていた事がきっかけだったり様々だが、ここで断るとその攻略対象のルートが閉ざされる事になる。

 イベントを欠席で逃したのは乙女ゲーム的には痛いけど、わたしが目指すのは友情エンドだから問題無し。



 そこでゲームと違う攻略法にはっと気づく。


 そもそもゲームシステムを知っているわたしなら最初から攻略対象同士をくっつける事も不可能ではない、のかな。


 やばい、騎士団長の息子×第二王子のルートが生で見れるかもってこと?一番の推しなんだよね、アルバート。


 上がるボルテージ。やっぱりこのゲームに転生できて良かった!


 わたしは来る学園生活に薔薇色の妄想で胸を膨らませた。


「アルバートは実写化されてもイケメンなんだろうなぁ」


 そして再びわたしは眠りに就いた…。


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解説パート。

萌えってもう言わないですよね…。今風に言うなら尊い?

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