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プリンス&ビースト  作者: 森のうさぎ
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第4話

評価ありがとうございます!

今後も執筆をつづけていきたいと思っています。


小雨の降る中、その男は戦っていた。白い面をかぶったカギ爪を付けた暗殺者たちに取り囲まれながら

ただ一人の獣人を守るために、夜明けも近い時間に洞窟の入り口で。


「っ!」


森の茂みの暗闇から飛んでくるボウガンの矢を剣で叩き落し、暗殺者のカギ爪を剣で弾きながら。

上からくるカギ爪の一撃を回避すると、アレスは持っていた剣で暗殺者の胴体を薙ぎ払い

その胴体は宙を舞う、しかし次から次へと押し寄せる不気味な殺し屋たち。


再びボウガンの矢が飛んでくる、その攻撃を避けるも背中をカギ爪で斬られる。

アレスの防具とマントにキズが入るが、大したことはない。


振り向きざまに剣を薙ぎ払うアレスだが、暗殺者たちもバカではない

後方に飛び去って避けられてしまう。

薙ぎ払った剣が空振りして隙ができたと感じた暗殺者たちは一斉にアレスに襲い掛かった


しかし、アレスもこうなることは予測していた。

カギ爪がアレスに当たる直前に剣を片手で持ち、地面に左手を付けて回転蹴りを放つ。


3人ほどの暗殺者は蹴りを見事に受け、吹き飛ばされる。

敵の数は多い、このままでは押し切られる……。


エテリアのねぐらに向かう暗殺者たちをさえぎるために、アレスは先回りして

剣を構える。


満身創痍といってもいい、すでにかなりの体力と集中力を使わされている。

暗闇から狙うボウガン、四方八方から迫りくる暗殺者、守らなければならない洞窟。


「それでも、俺は……!」


アレスの瞳は諦めてはいなかった、何としても、ここを進ませてはいけない

そう感じていたのだ。

暗殺者たちは洞窟への進行を、ボウガンはアレスを狙った。


「っ……やられる……」


心は諦めていなくても、もう体が言うことを聞かなかった。

飛んでくるボウガンの矢がアレスに当たる直前、巨大な盾がアレスを守った。


「帰りがおっせーから、保護者が心配してるぜ。坊ちゃん」


大柄な茶髪の男が1メートルほどの巨大な盾でボウガンの矢をはじいていた。


「す、スカーム!」


筋肉の露出の多い青い鎧のスカームと呼ばれた男は、

その盾で周囲の暗殺者を薙ぎ払った

4人は吹き飛ばされただろう。


「スカーム、陛下に向かって坊ちゃんは失礼ではありませんか?」


吹き飛ばされた四人が一瞬でバラバラに斬られる。

紫のドレス姿のロングヘアーの金髪の女性が大剣を担いでにこにこと笑っていた。

大剣は1メートルほどの大きな剣であり、その瞳はまるで笑っていない。


「ベルジュまで……」

「陛下、ノレッジが心配していましたよ?」


ベルジュと呼ばれた女性の後ろから暗殺者が迫るも

大剣の振り向きざまの一撃で3人ほどの暗殺者の首がなくなる。


劣勢を悟った暗殺部隊は、体制を立て直すために撤退していく。

スカームが盾を持っていない右手で手を振る。


「気を付けて帰れよー」


アレスは、気の抜けたように膝を地面についた。

しかしそのあと、疲れた体を無理やり起こして

エテリアのねぐらに入って、意識のないエテリアを抱き上げ

洞窟から出てきた。

スカームが口笛を吹いてエテリアを見る。

ベルジュは片手を口元に当てて笑う。


「あらあら、陛下がここに留まっていた理由はその娘だったのですね

 可愛らしい寝顔ですこと」


すでに夜は明け、朝の日の光が差していた。


「スカーム、ベルジュ」


上級騎士のアレスとしてではなく、国王アレスとしての態度で二人に声をかける。

するとスカームとベルジュの二人はひざまずいて命令を待つ。


「城までの護衛、頼めるか?」

「はっ、仰せのままに」


このままにしておくのは危険だと判断したアレスはエテリアを城に連れて帰ることにした。


………

……


日の光が差し込む窓、綺麗に掃除された壁や床、ふかふかのベッド。

そこでエテリアは眠っていた。

何十年ぶりだろう、こんなに気持ちのいい朝は。

小鳥のさえずりが外から聞こえてくる。

右手で日差しをさえぎりながらベッドから起きる。


「ここは……?」


タンスの上に置かれた花瓶に金魚鉢、ずいぶんと手入れされているようだが

自分のねぐらではないことは確かのようだとエテリアは思った。


扉の向こうから騒がしい声と歩く音が聞こえてくる。

エテリアの獣耳がピクリと動き、音の聞こえる方角へ振り向く。


「陛下、困ります!それはわたくしどもの務め」

「いいじゃないか、これぐらい」


扉が開くとそこには、アレスとメイド服を着た女性がいた。

本来はメイドの仕事である食事の置かれたワゴンをアレスが押していた。

お互いの瞳を合わせるアレスとエテリア。


「……は?」


エテリアの尻尾が力なくペタリと落ちる。


「やぁ、エテリア。おはよう!」


次にエテリアの尻尾がピンと立つと

自分は連れてこられたということに気付いた。

エテリアの怒りが炸裂する。


「貴様、なんのつもりだ!」

「まぁ、国王陛下にむかってなんて口の利き方!」


メイド長がエテリアの言葉に怒るが……。


「おい」


国王陛下アレスの鋭い瞳がそれを静止する。


「で、出すぎた真似をいたしました……」

「ならいい」


メイド長がアレスに謝罪していると、エテリアは窓から飛び降りようとしていた。


「私は帰るぞ!」


窓を開けて、エテリアは窓から飛び降りようとするが、

白いカーテンが風と共にゆらゆらと揺れ、そして外の光景を見たエテリアから出た言葉は

感嘆の感情だった。

窓から見える街並みはとても綺麗で、景色もよかった。

人々の生活を一望でき、とてもにぎわっている明るい街並み。


「……綺麗」


そうつぶやいた後、匂ってくる果物の香り。

振り向くと、そこにはワゴンの上にのったリンゴやバナナ、

そしてシチューもあった。

アレスは微笑みながら「お腹が空いてるだろうと思って」

と言った時には、もうすでにワゴンの上にある果物にかぶりついていた。


「どうだろう?エテリア、しばらくここで生活してみないか?」


リンゴとバナナを食べ終わった後、エテリアは視線をそらしながら


「す、少しの間だけだぞ」


と言った後、不思議な料理があったのでそれを飲んでみた。


「熱っ!」


出来立てのシチューに顔を突っ込むエテリア。

慌ててアレスがナプキンで顔と口元をふいてあげる。


「メイド長」

「は、はい!」


続けてアレスは、


「この子にテーブルマナーとスプーンの使い方を教えてあげてほしい

 後、服も用意して」


と伝えた。メイド長は少し動揺しつつも


「仰せのままに」


と答えた。

起承転結でいう起が終わり、ここから承に入ります。

分類するなら「ミメルト王国編」といったところでしょうか。

世間知らずのエテリアにどんな出来事が待っているのやら……。

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