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プリンス&ビースト  作者: 森のうさぎ
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第1話


遠くに城の見える草原、近くにある森の中

うさぎを狙う狼。よく森で見かける何の変哲もない光景 狩りだ。

ゆっくりと狼はうさぎに気付かれぬように近づき、その牙をむこうとした……その時だった。

別の茂みから急速に近づいてきた、その人の姿をした影は、狼をその手の爪で貫き、引き裂いた。

べっとりと、草木に狼の血液がこべりつき、真っ赤に染まっていく。

うさぎは危険を察知して逃げ出した。

その人型の影はアメジストのような紫色の瞳をゆらゆらと揺らしながら

狼の死体を引きずって、森の奥へ去っていった。




王国暦49年


ミメルト王国とガストラル帝国は、長い間 戦争をしている。

ガストラル帝国はロゲン・ガストラル皇帝が力で支配し、度々王国と衝突を繰り返していた。


その中で、ミメルト王国は王と王妃が不在の中 王子アレス・ミメルトが国王陛下として君臨していた。

黒髪に国王の証である衣をまとう彼 アレスは、庶民を愛し貴族を嫌う珍しい国王であった。


鏡に映るその姿、髪は黒、身長は175cm前後、瞳の色は海のように深いブルー。

白い国王の衣装をまとっている19歳の男性。


今日もまた、貴族の者たちが謁見の間に妃の候補を連れてくる。


「どうです陛下、私の娘をどうか貴方のお妃に……!」

貴族の男が頭をたれ、自分の娘を自慢げに紹介する。


「どうぞ、よろしくお願いいたします」

すると、貴族の娘はきらびやかなドレスを身にまとい

一礼する。


しかし、アレス王子は王座で肘をつき足を組み

苛立たしそうに一言。


「……次」


片手で虫を払うように手を振ると、衛兵が貴族の二人をその場から追い出した。

その陰で、貴族の娘が言う。


「……王子風情が偉そうに……」


当然、王子には聞こえない場所でボソリとつぶやく貴族の娘。

アレス王子は、その後も何人かの妃の候補を紹介されるが、すべて断った。



謁見が終わると、アレス王子と側近であるノレッジだけがその場に残される。


「今回もダメですか」

側近のノレッジは、またかと言わんばかりの諦めたような言葉を投げかける。


「あぁ、目を見ればわかる。あれは欲に飢えただけの目だ。

 地位、名誉、権力が欲しいだけの……ね」


そう、アレス王子は答えると王座から立ち上がり

自室に行こうとする。


側近のノレッジは

「アレス王子、お出かけになられるなら いつもの裏口からどうぞ。

 私の方からは陛下は休養中と伝えておきますゆえ」


と、いつも通りの話をすると

「あぁ、助かる」

と一言いったアレス王子は、王の証である衣を脱ぎ捨て

白い鎧に赤いマントの上級騎士の衣装を身にまとい帯剣して、

城の裏口から出て行った。


彼の行き先は、城下町。

いつも、ここを歩くのが趣味だ。


「ちょいと旦那様」

果物屋のおばさんが声をかけてくる。

「また貴族の連中を蹴散らしたんだって?噂になってますよ」


アレスは笑いながら

「あぁ、正直あれは……あまりにも品がない。どんなにきかざっても中身が汚ければ意味がない」


城下町の一部の人間はアレスが王子であることを知りながら

とても気さくに話しかけてくる。アレスは庶民からとても慕われている。

その王子の隠語が_旦那様_である。


「城の中の空気はあまり好きじゃない、少し気晴らしをしてくる」

王子アレスは、そういうと城下町から一人で出て行った。


………

……


平原を歩き、景色を見る

ここは鳥や虫、そして獣も出る。

だが、いつもの城下町とは違う空間。

_自分が特別な存在であることを忘れることができる_空間である。

今日はいつもと違う、森の方に行ってみることにした。


森に来るのは初めての体験だ。

すると、誰かが水辺にいるのが見える。

こんなところに人間が、一人でいるのだろうかという疑問を抱いたアレスは

そっと、水辺を覗き見た。

川の流れがゆるやかで、とても落ち着いた空間、新鮮な空気。

その川で下着のみを脱ぎ捨てて一人で水浴びをしている娘がいた。

白い短髪に、獣の耳、獣の尻尾、亜人種の娘だった。


獣人はガストラル帝国に全て殺されるか、捕獲され行方不明だと

昔、前国王から聞かされていたが……。


年齢は18歳ぐらいだろうか。身長は163cmほどで、

体は華奢ではあるがしなやかな筋肉に、豊満な胸……気が付いたら

アレスはその美しさに見とれていた。


すると、突然の殺気。

その娘の背後から大きな熊がその爪で襲い掛かる。


「危ないっ!」


とっさのことで対応が遅れたアレスは、娘に叫んだ。

……一瞬の出来事だった。

獣の娘は熊の一撃を回避し、その心臓を爪で貫いていた。

川の透き通った無色透明が紅色に変わる。

獣の娘は熊の心臓を引き抜き、手の甲をペロリと舐めると紫色の瞳で、アレスをにらんだ。


「ここは私の縄張りだ、部外者はさっさと消えろ……」


水浴びをしていた獣の娘は脱ぎ捨てていた下着同然の布きれの服をつかんで

もう片方の手で熊の死体を引きずりながら去っていった。


言葉も出ず、そのままアレスはその場を立ち去り

王国へ戻ったが、その娘のことが忘れられず

自室に戻った後も、ずっと物思いにふけっていた。


………

……


次の日、謁見が終わると急ぐようにアレスは上級騎士の衣装に着替え

森へと急いだ。

あの娘がいるかもしれない、もう一度、もう一度 会いたいという想いだけで。

昨日来た水辺にはいない……。彼女が歩いていった方角へと足を運ぶ。


すると、その先の開けた場所で一つの洞窟を見つけた。

入口には松明があり、奥へと続いている。


「ここは私の縄張りだと言ったはずだが……?」


突然、声をかけられる。

ふと、洞窟のそばを見るとこちらをにらんでいる娘が一人。

そう、あの獣の娘だ。

その獣の娘の衣装はあのボロいトラの皮を巻いただけの、ほぼ下着だけの状態。

アレスは上級騎士の鎧に篭手。

「俺の名はアレス、ミメルト王国の王子だ!」

自ら名乗るのは初めての体験である、それに対して獣の娘は面倒そうに

「ふーん……で?」

と答えた。


アレスはどうしても、その娘に振り向いてほしかった。

貴族たちとは違う『自分の力で生きている強さ』に心惹かれたのだった。

再び、アレスは娘に問う。

「君の名を、教えてほしい」

獣の娘は腕を組み、そっぽを向いた

「答える必要はない」

拒絶、疑い、面倒。

そんな感情が、アレスには彼女の目からは読み取れた。


「答えてくれるまで、俺はここに立とう」

アレスは、無理やりにでも答えてほしかった


獣の娘はめんどくさそうに

「答えたら、帰るか?」

再びアレスをにらむ獣の娘。

アレスはうなずくと、獣の娘は一言だけ口を開いた。

「……エテリア」


エテリア……そう彼女は名乗った

そして視線をそらし

「もういいだろう、さっさと帰れ」


といって、洞窟の中へと入っていった。

どうやらここが彼女の家らしい。

アレスは思った。


_この娘、エテリアを嫁にしたい_と

物語の始まりです。


起承転結なら起の部分ですね。

投稿サイトに物語を投稿するのは初めてです。

詳細じゃない部分を後で書き換えたり、書き直したりするかもしれませんが

初心者なので、なにとぞご理解をお願いします(汗)

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