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イージーモード・ライフ  作者: てんやもの
プロローグ
2/4

プロローグその2



「ん? どうしてお前がそう驚く?」

「お前言うな! 私は女神……女神ミザリー。美とノリを象徴する女神よ」

「美と…………ノリ?」

「わかんない? ノリよノリ!『調子に乗る』……の、あの『乗り』よっ!」

「…………」


 なるほど。


 要するに『美しさとノリの良さで有名な女神』だと。


 何と言うか…………この女神のバカっぽい感じがその『象徴シンボル』とピッタシあって、すっごくしっくりくるな。


「ていうか、そんな話はいいのっ! あんた、アニメやラノベが好きなんでしょ? だったら『異世界転移』選ぶのがラノベのセオリーてもんでしょっ?! そこまでテンプレでしょっ?!」

「知るかっ! ラノベと俺の人生を一緒にすんなっ!!」

「何を~~っ! 死んだ時のオカズ……こほん。ネタは、あんたの好きなラノベヒロインの『薄い本』だったくせにっ!!」

「きゃああああぁぁああぁ~~!! やめたげて~~っ!!!」


 あやうく『恥ずか死ぬ』とこでした。


 あと、女神ミザリーよ……『オカズ』を『ネタ』に言い換えても、さほど変化はないぞ。


 それにしても『ラノベ』とか『薄い本』とか……、天界ここは本当に日本のサブカルチャーの影響がひどいな。


 そんなことを考えていると、ミザリーがすごい剣幕で突っかかってきた。


「どうして異世界にしないのよっ!」

「だ、だって、お前……実際に異世界に行くって考えると不安で不安で……」

「何よっ! どうしてそんなチキンハートなのよっ! どうせ、地球に戻っても面白くないわよ!」

「そ、そんなことないもん! イケメンでお金持ちで末は成功者ならそっちのほうがやっぱ住み慣れてる土地だし、楽しそうだろっ!!」


 そう。


 やはり、なんだかんだ言っても。


 いくら、俺がアニメやラノベが好きだと言っても。


 しょせんは『作り物の世界の話』。


 実際に「異世界に行けるか」と言われたら、いくらチート能力があっても生活はけっこう大変だと思うので答えは…………ノーだ。


 まず、少なくともアニメやラノベの異世界傾向で考えれば、生活水準や世界感は『中世風』だろう。そして、現代の日本のような『携帯電話』や『パソコン』『車』といった科学によって恩恵を受けた便利グッズも無い。


 そんな世界でいくら『チート能力』を持っていたとしても、普段の生活は地味でつまらない、俺はそう睨んでいる。


 なので、結論……異世界転移は却下となる。


「ふ、鈴木ハルオ……あなたはひとつ大事なことを忘れているわ」

「何っ?!」

「その世界……異世界には…………コスプレじゃないガチの獣人さんやエルフがいるのよっ!!」

「な、なんだってーーーーっ!!」


 俺は叫んだ。


 MMRのごとく叫んだ。


「獣人さんに……エルフ……だとっ!?」

「そうよ。そんな人種が実在する世界で人生を送る、これは地球に戻ってしまっては一生、味わうことのできない人生よ」

「ぐ、ぐぬぬ……っ?!」


 女神ミザリー、なんて恐ろしい子っ!!


 まさに、その通りだ。


 俺は何をとち狂っていたのだろう。


 異世界と言えば、獣人さんにエルフじゃないかっ!!


 モフモフに美少女じゃないかっ!!


 しかも、実在するという女神のお墨付きも頂いている。


 これで、断ったら男じゃないっ!


「ありがとう……すっかり目が覚めたよ、女神ミザリー」

「わかってもらえてうれしいわ……ハルオ」


 こうして、僕は『異世界転移の人生』を選んだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「じゃあ、早速、チート能力の話するわね……」

「うむ、頼む」


 ミザリーはハルオが異世界に転移するときに付与されるチート能力の説明を始めた。


「まず、現段階ではハルオにどんなチート能力が付与されるかは決まっていないわ」

「むっ! そうなのか? どうやって決まるんだ?」

「私の上司である天上神てんじょうしん様が選ぶわ…………では、発表します、右手にあるモニターをご覧ください」


 ミザリーが指摘する方向に顔を向けると、そこには『大画面モニター』がいつの間にか用意されていた。


 すると、そのモニターに勝手に電源が入り、画面が明るくなる。すると、そのモニターには、上下黒のジャケットにシルクハットを被り、逆三角形のサングラスにちょび髭をつけ、黒と白の縞々(しましま)の杖を振り回している……もはや今時こんなうさんくさい格好をする生命がいるのか、というほどの衝撃的な格好をした老人が現れた。


「はーいっ! 今日も元気に死んでるーっ?! イヤっふーーーー!!」

「…………天上神てんじょうしん様です」

「えええええ~~……」


 俺は……本当に、本当に、心の底から初めて、残念な気持ちをそのまま表現した。


 女神も頬を染めていることから同じ気持ちであることを察する。


 大変だな、上司があんなんだと。


 その残念な上司(天上神てんじょうしん)の横には、『細かく刻まれたルーレット』と、そのルーレットから五メートルほど離れたところに『ボーガン』が用意された舞台が用意されている。


「オーケー、オーケー、そこの『残念死人』君っ!」

「…………」


 いやー、さすがあの女の上司なだけはある。


 いっそ、清々しいくらいの失礼極まりないじじいだな。


「じゃあ早速っ!『残念死人』君の運命のチート能力ルーレット回してボーガン飛ばしちゃうねっ! 君とミーの幸運に…………幸あれ、んん」


 言葉の最後……無理やり、イケボ風な声をあげた天上神てんじょうしん


 この時、『神殺し』という『二つ名』を手に入れたいと思ったことは言うまでもない。


「ちぇすと~~~~!!!!」


 天上神てんじょうしんはガンガン回っている(回し過ぎだろっ! ていうレベル)ルーレットにボーガンを無駄に勢いよく発射した。


 そして、そのボーガンの矢がルーレットの枠に止まり、ルーレットの回転がだんだん弱くなり、そのボーガンの矢が刺さった枠の文字が大画面のモニターにクローズアップされた。


『能力:イージーモード・ライフ』




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