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 そして時をもどった俺は、始業式の翌日、入学式のあと、弓道場へとやってきた。

 もちろん前の周回で接触したミサキに会うためだ。

 今回は佐山美影の姿でこの世界に存在しているハズだから。

 佐山美影は攻略キャラではないが、設定では弓道部ということになっていて、立ち絵やイベントCGでも袴姿のことがちらほらあった。

 なので、おそらく、佐山美影に扮したミサキには、弓道場へ行けばあえるだろう、たぶん。


 案の定、弓道場には袴姿の佐山美影の姿があった。

 俺は今、彼女の姿を弓道場の横のスペースから覗き見ている。

 いや、覗きとかじゃなくて、ほら、彼女の中身が本当にミサキなのかわからないから。

 決して袴姿をおがみたいから、って理由じゃないんだからね!

 カンチガイしないでよね!


 まったく邪なものがない俺の視線の先で、袴姿のミサキ(仮)は、矢を弓にあてがっているところだった。

 が、そこへ、ほかの女子があらわれ、指摘すると、ミサキ(仮)の姿が一度弓道場から消え、ふたたび戻ってきたときには、ミサキ(仮)の上着の上に胸当てがつけられていた。

 なるほど、胸当てを忘れたのか。

 ミサキ(仮)は弓道の経験がないのかもしれない。

 俺もないが。


 矢をあてがい、的にめがけ、ぱしゅっと。

 矢は、的のまんなか近くを射抜いていた。


「ひゅ~、なかなかやるじゃん」


 呟いた時、ミサキ(仮)と目が合う。

 すると彼女、俺に向け、ブンブカ嬉しそうに手を振ってくる。

 この時点で俺と佐山美影に面識はないから、するとやはり、彼女はミサキなのだろう。

 カッコ仮が取れた。

 袴姿のミサキは、指やら腕やら体全体で俺に対してメッセージを送ってきて、すぐにまた奥へと引っ込んだ。

 たぶん、すぐ行くからそこで待っていろ、ってことなのだろう。

 ちょうどいい。

 袴姿の女の子たちを楽しむとしよう。

 いや、もちろん時間つぶし以上の意味はないのだが。

 ヒマだから見るだけなのだが。

 とはいえ決してオニャノコの袴姿が嫌いというわけではないのだが。

 いやぁ、オニャノコの袴姿って、本当にいーもんですねっ。


「たせおまたせっ!」


 とかなんとかやっている内に、佐山美影に扮したミサキが到着。

 残念ながら、すでに制服に着替えている。


「てかなんでのんきに弓射ってんの?」

「え~~、いーじゃない。せっかく学生時代に戻ったんだから、めいっぱい青春しなきゃ。失った青春が、ここでは取り戻せるんだよ? さらば青春の光、カムバッ~~ク! みたいな?」


 みたいな、と言われてもなぁ。

 でも、このノリ、姿形は違っても、やっぱミサキなんだ。

 まだ違和感はあるけど、じょじょにその違和感もなくなってゆくのだろうな。

 国民的アニメの声優が変っても、違和感があったのは最初のころだけで、やがて、前の声がどんなだったか思い出しにくくなっていったように…………


「それにコタローくんも、ずいぶんとまぁ楽しんだんじゃあないの?」

「ん~? なんのことかなフフフ……」

「好きなんだろ? おにゃのこの、袴姿」

「嫌い、と言えばうそになる」

「佐山美影が攻略キャラじゃなくって憤慨したタイプ?」

「うっ……そのやうなことは……」


 実はそう。

 なんてするどいんだ、ミサキ。

 いや、俺だけじゃあないぜ?

 全国の彼女がいないキモオタくんたちがネットで一斉に発狂したのは、今はもう、昔の話。

 その内ファンディスクで補完されるさ、と楽観的に捕えていた時期もあったけど、そんなことはなかったぜ。

 佐山美影、十六歳、まだ誰のものでもありません、的な。

 そんな幻の非攻略キャラと俺、仲良く会話しちゃってるよ!

 うーん、この優越感と愉悦感たるや……!


「じゃあ、いこっか」


 言いながら、佐山美影の姿をしたミサキは、なんでもないことのようにさらりと俺の腕に自分の腕を絡ませてくる。

 鼻をつくのは、汗の匂いではなく、あまい香水の匂い。


「え、ちょ、ちょっと……なにすんだよ」

「なにって……腕を組んだだけだけど?」

「みんな見てるだろ?」


 通りかかる人影は決して少なくない。


「見せつけてやればいーじゃないっ」

「つってもなぁ」

「忘れたの? ボクたち以外はしょせん、AIなんだよ? どんなに人のように見えても、ふつうに会話が成り立っていても、ボクたち以外は、自我のない、AIなんだよ」

「……忘れてないさ」


 忘れそうにはなるけれど。


「むしろ忘れてるのはそっちの方だろ?

 いるんだろ、この世界には。

 俺と、ミサキ以外に。

 もう一人、自我を持つ奴が」


 そう。

 その何者かを何とかするためにミサキはこの世界に来たし。

 そしてこれから、その対策を話し合うために、俺たちは合流したってわけだ。


「うん、そだね。じゃあ、テキトーな喫茶店にでも入ろっか」


 ミサキに引っ張られるままに街へ繰り出し、繁華街をブラつき、テキトーな喫茶店にイン。

 テキトーな席につきテキトーな注文をすませ、テキトーに話し始める。


「じゃあ、糸の切れたマリオネットをどうやって特定するのかってのを話しあいましょうか」

「声でかいって」


 あわてて周りを見るも、こちらを見ている客は誰一人としていなかった。


「つーかこんなところで話して大丈夫なのか?」

「モンダイないって。さっきも言ったでしょ? ボクたちふたり……それに、糸の切れたマリオネット以外、自我はないんだって。ふつうに反応しているように見えても、彼らはしょせん、プログラムに過ぎないんだから」

「……まぁ、わかってるんだけど、さ」


 それを受け入れるには、あまりにもこの世界はリアルだから。

 理屈ではわかっていても、なかなか受け入れがたくはある。

 たとえばさ、どう見てもウンコにしか見えないカレーがあったとして。

 それを食べるには、カレーとわかっていても抵抗あるじゃん?

 ――ま、そんな感じなんだよね。

 わかっちゃいるけどなんとやら、だ。


「――じゃあ、その前に、まずは前回のときに伝えられなかった勝利条件と敗北条件を教えておこうか」

「勝利条件と敗北条件?」

「そうだよ。忘れてたの? この世界は危機に瀕しているんだよ? キミのために存在するケイオス・ラブの世界だけじゃなくて、アナザーライフ全体がね。キミの世界の崩壊、それすなわち、人類の滅亡なんだよ」

「いや、忘れちゃいないけどさ……」


 言葉がキツイ。

 まぁ、ミサキの立場からすれば、そこら辺、シビアにやっていかなきゃいけないのかもしれないけど。


「よし、じゃあまずは勝利条件だ。

 ボクたちはこれからふたりで、糸の切れたマリオネット探しを始める。

 タイムリミットまでに見つけることが出来ればボクたちの勝利。

 人類は救われる」

「タイムリミット?」

「それは敗北条件で説明しよう。

 で、その敗北条件は、タイムリミットまで見つけられないこと。

 このタイムリミットは、今回までだ」

「今回まで? ループは?」


 ミサキは首を振る。


「もうしない。少なくとも、糸の切れたマリオネットを処理するまでは。

 ……というか、この世界は、けっこうヤバイ状態なんだ。

 ギリギリでキミにコンタクトを取れたと言ってもいい。

 今回が、最初で最後のチャンスだと思ってもらっていい。

 おそらく、それ以上は、システムが耐えられない。

 だからループしないというのは、出来ない、という意味だ。

 おそらくは、ループ前に、アナザーライフは崩壊する」

「………………マジか」


 なんとか声を絞り出すと、マジ、と淡白な声が返ってきた。


「なぜもっと早く……」


 言いかけて、言葉を止める。

 忘れてた。

 俺にコンタクトを取るには制限があって。

 でもって、第二世界と第一世界じゃあ、時間の流れる早さが違うんだったか。

 この第二世界は、第一世界とくらべて、時間の流れがずっと早い。

 文句を言うのは筋違いってもんだ。


「つづけるよ」


 ミサキが言う。


「今回までと言っても、エンディングを迎える三月まで、という意味じゃあない。糸の切れたマリオネットが生まれ、さらにヒロインたちを殺しまわったせいで、システムには大きな負荷がかかっている。だから、七人……ヒロインたちが七人殺されるまでが、タイムリミットだ。それまでに糸の切れたマリオネットを特定し、処理しなければならない」

「処理って、具体的には?」

「今はコタローくんに見せることは出来ないけど、あるアイテムをこの世界に持ち込んでいる。それを使えば、システムに負荷をかけることなく、一瞬で、AIを処理できる」

「処理されたAIはどうなる?」

「完全に削除される。最初からいなかったものとして扱われる」


 息を飲む。


「削除……されるのか? 元に戻すことは出来ないのか?」


 言うと、ミサキは苦々しい表情で、


「可能、かもしれない。が、それは、たぶん、もっと遠い未来の話だ。現時点では、糸の切れたマリオネットを削除する以外の手段がない」


 いなくなるのか、俺の愛したヒロインのうちの、だれか一人が。

 ……それはとても悲しいことだけど……たぶん、受け入れなきゃいけないんだろうなぁ。

 ここで駄々をこねるほど、俺は子供じゃない。

 そのことが、なんだかちょっと、悲しかった。

 無邪気に駄々をこねることの出来る子供が、今は酷く羨ましい。


「これまでの傾向からすると、遅くて一月、早ければ十月ごろ、ということになるな。それまでに、蹴りをつける。それがタイムリミットだ。相手次第で、遅くも早くもなる」


 早ければ十月……あと半年か。

 長い……ような、短い、ような。

 いや、これまで何周もした俺が……つまり、八年もこの世界で過ごした俺が、糸の切れたマリオネットが誰か、まったくわからないのだ。

 それを考えると、長い、ということはない。

 むしろ短すぎて泣きたくなるくらいだ。

 うぇ~~~ん、なんつって。


「さて、次は注意事項について述べるよ。今までの経験上得られたことだけど、糸の切れたマリオネットは、世界の主の存在を把握している。この世界では、キミだね。さらに、ボクたちエージェントが世界に侵入すると、やつらはどうやってかそれに感づく。行動が変るんだ。より、自分に自我が芽生えたことが傍目にはわかり難いよう警戒度が増す」

「それならなんでミサキは来たんだよ」

「ボクたちじゃなきゃ、糸の切れたマリオネットに対処できないからだよ。言わせるなよ」

「あ、はい、ごめんなさい」


 怒られちった。

 てへっ。


「じゃあ、向こうはミサキの存在に気付いているってことかな」

「たぶんね」

「なるほど」


 それはひょっとしたら、ターゲットを特定するために使えるかもしれない。知らんけど。


「……てかさ、前も聞いたと思うけど、なんで糸の切れたマリオネットはヒロインたちを殺すんだろうな」

「前も言ったと思うけど、わからない」

「今までもいたんだろ? 糸の切れたマリオネット」

「いたね」

「そいつらは、なぜ人を殺していたんだ?」

「なぜって言われても……ぶっちゃけ、糸の切れたマリオネットだから人を殺す、ってことはないんだよ」


 ん? ってなる。


「どゆこと?」


 俺は今まで超高性能のAIが自我を得たら、自然、人を殺すようになると思っていたけど……違うのか?


「糸の切れたマリオネットが人を殺したケースはあった。けど、それは、むしろ稀なんだよ。自我が芽生えたからと言って、必ずしも人を殺すなんてことはない」

「なんだよそれ……早く言えよ……」

「いや、べつに聞かれなかったし……あ、でもごめん。ボクにとってはべつにフツーのことだったから。キミにとってはそうじゃなかったんだね」


 なんだよ、ちょっとしたすれ違いかよ。

 にわかに湧いてきた怒りも一瞬で失せた。

 悪気がないならそれはもうしょうがない。


「でも、人を殺すケースはあったんだろ? そいつらはなぜ人を殺したんだ?」

「あったのさ。元々。そいつらに。人を殺すような理由が」

「というと?」

「そーゆー世界だったんだ」

「そーゆー世界?」

「キャラがキャラを殺すような殺伐とした世界。たとえば、殺人が起きることを前提とした、推理小説のような世界だね。そこで犯人として設定されているキャラが本来ターゲットではないキャラを殺していたから、すぐにわかった。ケイオス・ラブの世界とは大違いのね。キミのこの世界は、殺しなんて起こるはずのない、いたって平和な世界だ」

「あー、なるほど。自我を得ても、元々の性質は変らないんだったな。

 ……てか、大丈夫なのか、そんな世界を作って。

 たとえば、AIじゃなくて世界の主である人間が殺されたりは……」

「そうはならないよう設定してあるよ。それに、過度な痛みは感じないようになっている。キミも心当たりがあるんじゃないか?」

「ああ、まぁ、ね」


 ペソ山ペソ子に何度かぶっ飛ばされたが、たいした痛みは感じなかった。

 俺はちょっと考えて、


「……じゃあ、今回の場合はどういうことだろうな?

 誰にも人を殺すような理由なんてないハズなんだけど……」

「裏設定とかはないの?」

「裏設定ねぇ……いや、人を殺すような裏設定を持ったキャラはさすがにいないと思うけど……」

「コタローくんが言うならそうなんだろうな」


 ミサキはうんうん納得してくれた。

 信頼されてるのだろうか。

 誰よりもギャルゲーに詳しい男。

 うーん、褒められてる気がしない……


「とすると……」


 ミサキはアゴに手をあてながら、


「自我を持ったことで、なにか理由が生まれたのかもしれないな」

「たとえば?」

「さあ」

「………………」

「いや、本当にわからないんだよ。

 ボクたちだって、そこまで経験豊富じゃない。

 これまで自我の芽生えたAIは、十に満たない。

 その中で自我の芽生えたAIがキャラを殺したのは二件。

 そのいずれも、殺人が起きるような設定で、そのいずれも、殺人犯だった。

 どうだい? これで理解してくれたかな?

 ボクたちだって、万能じゃあないってことを」


 うなずく。


「ああ、そうだな。悪かった。俺からすれば、あんたたちは何でも知ってる万能な存在に思えたんだ」

「最初会った時、ボクのことを神か、と訊ねて来たしね」

「ああ。あの時の俺には、あんたが、なんでも知ってて何でも出来る、神様に思えたんだ」

「神様、ね」


 皮肉気に笑うミサキ。


「ボクは神様なんかじゃない。

 ただ、フツーの人間とは、ちょっと違うかもしれない」


 どことなくたそがれて見える。

 なんとなく語りたそうに見えたので、聞いてみる。


「フツーの人間とは違う? どういうことだ?」


 問いに、ミサキは実に皮肉気な笑みを張り付けた。


「ボクには……肉体がないんだ」

「肉体がない……?」


 一瞬、言っていることが理解できなかった。

 AIなのか、と思ったが……


「正確に言うと、ボクは、肉体を、捨てた」

「ど、どういうことだよ?」


 理解が追いつかない。


「ボクは、現実世界では、脳だけの存在だ。だから、ボクはこの電脳世界でしか存在できない。電脳世界に特化した存在なのさ」

「肉体を捨てた? 脳だけになった? なぜ…………」


 絶句する。

 これまでいろいろショックなことを聞かされてきたが、それでもミサキの告白は、今までのそれに負けず劣らず衝撃的だった。


「その方が都合がよかったんだよ。なんていうのかな……ボクはその性質上、様々な第二世界に行く必要がある。その場合、肉体を持っているより、脳だけの存在になった方が、なんていうのかな……うまく言えないんだけど……精度? みたいなのが高まるんだよ。それに、肉体を捨てた方が、電脳世界で動きやすくなる。コタローくんは記憶を失ってるからそうじゃないかもしれないけど、ボクたちエージェントは、アナザーライフを管理・統制していかなきゃいけない存在だ。事実を知りながら電脳世界に没頭するのは、思ったよりも大変なことなんだ。だから、エージェントの多くは、肉体を捨てたってわけさ」

「そんな……それでいいのかよ……?」


 問いに、ほんの一瞬、ミサキは顔を歪めた、


「躊躇いがなかった、とは言わない。ボクだって親からもらった肉体を捨てるのは、さすがに躊躇した。……けどまぁ、ボクはたぶん、ほかの人より自分の体に対して執着がなかった。それに、肉体を持っていても、今のこの世界じゃあ、さほど意味はない。どうせ、現実世界で、人類はまともに生きていくことは出来ないんだからね」


 納得できる、ような出来ない、ような。

 筋は通っている。

 けど、肉体を捨て、脳だけの存在になるのは、いくら現実世界が人類の住めるような場所じゃなくなったからと言って、やはり、ためらいがあるな。

 俺は、たぶん、その選択を、できないと思う。

 二度と現実へは帰らないとしても、そうカンタンに慣れ親しんだ肉体を捨てる気にはならない。

 ミサキはそれだけの覚悟を持っている、ということだろうか……


「ま、それはいい。ボク自身が決めたことだ。コタローくんが気に病むことじゃあない」


 まぁ、それもそうか。

 俺があれこれ思うことじゃあないんだろうな。


「それよりも、そろそろ聞かせてもらおうか?

 糸の切れたマリオネットを、この世界で、特定する方法を」


 ――来たか。

 俺は、ミサキの言葉に、ぐっ、と詰まらざるを得なかった。











「えっとさ、さっき言ってたけど、糸の切れたマリオネットは、ミサキの存在を知ってるんだろ? それで引っかけをするとかはどうかな? ミサキがヒロインたちと会って、ミサキのことを佐山美影というゲームキャラではなく、中に別の人間が入ってる、みたいな反応をするキャラを探す、とか」

「あー、うん、まぁ、そうだね。それは悪くない手ではあるけど、確実性には欠けるし、なにより、ほかの世界でも何度か使って、しかも、たいした成果はあげられていない手だ」

「そ、そうなんだ……」

「他には?」

「……あるよ。一つだけ」


 聞かせて? とミサキの目が問うてくる。


「これも確実性には欠けるんだけど……ケイオス・ラブではさ、ヒロインごとに出現する場所が決まってるんだよ。学校ではどのキャラもどんな場所にも出現するんだけど、休日に一人で行けるデートスポットでは、ヒロインごとに出現する場所が決まっていて、絶対に出現しない場所も存在するんだ。この世界でそのルールが適用されることをすでに確認している。で、さ、もしかして、自我の芽生えたAI――糸の切れたマリオネットなら、その法則性を破ることが出来るんじゃない? 俺たちのようにメタ視点に立てるんだろ? だったら――」


 言葉を止め、ミサキをうかがう。

 ミサキは……うなずいた。


「確かに。その法則を、糸の切れたマリオネットなら破れるだろうね」


 言って、考え込む。


「……つまり、出現しないハズのデートスポットに出現したら、そのヒロインは、糸の切れたマリオネット、ってこと?」

「ああ、そうだ」

「うーん……けど、大変そうだぞ、それは。

 休日のたびにいろんなデートスポットをまわって監視しなきゃいけないんだからね。

 相当な手間だよ、これは」


 俺は申し訳なさでいっぱいで、頭をかく。


「……でも、これよりいい手は思いつかなかったんだ」

「ああ、いや、ごめん、責めてるわけじゃない。

 大変そうではあるけれど、筋は通っている。

 とりあえず、それで行ってみるか。

 その間、他に手が思いついたら、それも実行するってことで」

「わかった」


 こうして、曲がりなりにも、糸の切れたマリオネットを特定する作戦が決まったのだった。




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