04 前言撤回!
「キャプテン!少しいいですか?」
休憩中、キャプテンが比較的暇そうにしているタイミングを見計らって声をかけた。
「あぁ、ハルか。どうした?」
「すみません。今日少し早く上がらせてもらっても構わないでしょか?」
「理由は?」
「……何というか、面倒みなくちゃいけない子がいまして……?」
「何でそんな曖昧なんだ……。」
クーデリアがどうしているのかが気になる。なんせこっちに来ちゃった理由に俺が関係しているのだから、放っておくのはどうかとおもうのだ。。よくよく考えれば向こうの過失なのだが……。
キャプテンはそこでいとつため息を零して、
「まぁ、お前のことだからサボりって訳でもないだろうし、いいよ。どこで抜ける?」
「6時半……いや夕飯前には戻りたいので6時頃だと確か……スリーメンの終わり頃でいいですか?」
「あぁ。いいよ。それで、その子はいつぐらいまでいるんだ?」
「……わからないです。」
「はぁ?なんで?」
「えっと、でもこっちでも対応できる態勢を整えてますのので、数日中にはきちんと出られるようにします。」
「はぁー。まぁわかったよ。しっかり面倒みてやれよ?」
「はい!有難うございます!」
90度の礼をして、キャプテンの配慮に感謝を表す。この部活そう簡単に休めないのだから。あ、ちなみに監督は平日は殆どいない。たまに抜き打ちで現れてプレッシャーをはなって帰っていく。緩んでたりしたらもうやばいよ。あと、休みの日はくる。そこでしょうもないプレーでもしようものなら普段の練習態度がなっていないということになり、キャプテンとそいつがめちゃくちゃ怒られる。ゆえにキャプテンは部員に怠けを許さない。だから、監督がいなくても士気は下がらない。恐ろしい監督である。
家に帰って見ると、まず美味しそうな匂いがした。母さんがご飯を作っているのだろう。……俺夕飯弁当もらっちゃってるな。食卓で1人だけ弁当といういたたまれない未来予想図が幻視された。
「ただいまー」
「おにーちゃん!今日早いねー。」
「あらぁ?ハル、部活やってこなかったの?」
「おー、お帰り〜〜」
「お、おかえりなさい!」
え!?父さんまでいる?てか、最後のクーデリアかな?
「考えることは同じだなぁ。ハル。」
「……」
もしかすると早速明日から普通に部活に行けるかもしれない。部屋に入ると、冬華、クーデリア、父さんの順でソファーに座ってテレビを見ていた。
「今、テレビを教材にしてクーたんにこっちのことをいろいろ教えているんだ。」
「……あの、勇者様にクーたんで覚えられると困るのですが……威厳とか。」
クーデリアにもはや王族の威厳とか残ってないと思うんだけど、クーデリアが嫌なら呼ばないよ?嫌とわかっていることはしない主義なんだ。というかテレビ学習ってそんなことやってたのか……これは本格的に俺いらないかもしれない。あーまだ一つ役割が残ってたか。できればやりたくない役割が。
「……祐には話を通しておいたよ。少なくとも現状の技術じゃどうしようもないだろうって。……クーデリアの世界が魔王にどの程度侵攻されているのか詳しいところは知らないけど、間に合うかどうかは厳しいところだと思う。残酷だけど覚悟だけしておいてほしい。」
「……っ。そんな……」
できるだけ感情を殺して告げる。クーデリアは端正な顔を絶望に歪めている。それほどまでにか……やっぱり同情なんて軽いことはすべきではないな。現状、彼女の気持ちは彼女にしかわからないのだから。
「お兄ちゃん……。祐お兄ちゃんでもダメなの?」
「……。」
これについては答えられない。彼が検討していることはまだ話せない。と思っていたのに……
PruuuuuuuuuupruuuuuuuuuPruuuuuuuuuuuu
ガチャ
「もしもし?ハル?もうすぐ帰ってる?クーデリアさんに召喚魔法にどの程度精通しているか聞いてくれる?それをこっちで科学的にアレンジしてなんとかやれないかやってみようと思うんだ。」
「え?クーデリアには言わないって話じゃ……」
「いやーあの後いろいろ考えてさ、家でちょっと調べてみたら存外いけるんじゃないかと思ったんだよ。というわけで昼の話はなしね、聞いてくれる?」
俺は思った。あぁ、こいつはこういう奴だった。