02 異世界の力
俺たち、宮家の自己紹介は一通り終わり、次はクーデリアの話を聞く番である。
「そうだな……それじゃ、まず自分が違う世界から来たって証明できるかな?」
「あぅ……それは、あっ!あるです!確か先代勇者の話ではこちらの世界には魔法がないということだったはずです!どうですか?」
「あぁ、ないな。使えるのか?」
「はい!お任せください!」
そう言って掌を上にして人差し指を突き出す。そしてーー
「わっ火がついた!すごーい!」
そう冬華が驚きの声を上げる通りクーデリアの指先にはちっちゃな火がついた。人間ろうそくといったところか。
「えっへん。本気を出せばもっとでかい炎も出せるんです!伊達にしごかれてませんよ!」
「へぇ、すごいな今は場所が悪いから今度見せてくれよ。」
「おまかせです!」
俺達がそうやって盛り上がっていると、父さんがせきばらいしてこう言った。
「他にも証明できるものはないのか?正直火を出すというだけなら手品師にもできんことはないからな。」
確かにそうだ。いきなり湯船に現れてずぶ濡れになって着替えまでしてできるかどうかはちょっと疑問が残るが、できる可能性が残る。そこまで手の込んだことしてクーデリアが何をしたいのかは別として、あり得てしまうのだ。
「他、ですか。では、これはどうです?」
そう言ってクーデリアは掌を俺に向かって突き出す。すると、
「わっなんだ⁉︎風が来てる?」
「おおっすごいな!もっと強くできるか⁉︎」
「はい!」
ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
「待って強い強い強すぎるーー⁉︎」
「あっはっはっはっは」
「もっとよクーちゃん!もっと強く!」
「お任せ、です!」
「なっ待て!止めれぇ!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎
爆笑する父親。乗っかり囃し立てる母親。更に勢いを増す風。
「ははははははははははっ」
「やめろ!?もういいだろ!?クーデリア‼︎」
「は、はいー!ごめんなさいです!」
俺が割と本気で怒ると、クーデリアはピシッという効果音を出して、風を止め姿勢を正した。そんな怖いか??
「と、まあこんな感じです。」
「俺はとりあえず信じるよ。みんなは?」
「私は最初から信じてるー!」
「私も信じるわ。」
俺がひとまず信じることを表明。冬華と母さんも同意する。
「ふーん。じゃあ一応僕だけ疑っておこうかな。」
父さんはまだ信じきるには早いとの判断だ。一家の柱としての決断だろう。嫌われ者になっても、家族を守るという覚悟が感じられる。俺はそこまで慎重になれないので父さんが大きく感じられる。俺もそろそろ頭を使うことを考えなくてはいけないかもしれないと思わされる。
「は、はい。ありがとうございます。……それで、先程お伝えしたように私の世界は結構ピンチなんです。出来ればなるべく早く戻りたいんですけど……。」
「え?いや、悪いけどちょっと初めて聞く技術だよ。あったらもうちょっとすんなり信じるよ君のこと。」
「うん。僕も聞いたことないな。そもそも違う世界があるとか考えられているのかすら疑問だね。まず変えることは不可能だと思っておいたほうがいいかもしれないね。」
「……っ。そうですか。」
変える方法がないと聞くとクーデリアは顔を俯けてしまった。落ち込んでいるようだ。感覚的には海外旅行に行っている間に祖国が宣戦布告を受けたような感じだろうか。残してきた家族のこととか心配なのと、自分だけ安全圏にいるのが申し訳ない気持ちだろうか。
「ねーねー。祐お兄ちゃんに聞いてみるのはどうかなー?」
「!そうだよ!困った時の祐じゃないか!明日の朝一に聞きに行くよ!」
「へ?え?誰です?」
「俺の親友!スポーツの宮、ブレインの社だ!」
「それじゃわかりにくいでしょうが。社祐君っていう子なの凄く頭がいいのよ?けど、さすがにこれは荷が重いんじゃないかしら?」
「それに、そんな軽々しく喋っていい話なのかい?祐君は信用できるかもしれないがなるべく人の耳に入らないように気を使うべきじゃないか?」
「あ、そうか。確かに、じゃあ明日放課後に俺ん家来てもらうことにするよ。」
クーデリアが話についていけずぽかーんとしている。
「まぁ、流石に無理だと思うからね、期待しないでいるといい。」
お父さんはこういうが、俺はあいつならなんとかするんじゃないかと思っている。
「ふぁあ」
と、冬華があくびをする。
「っと。もうこんな時間か。じゃあ一旦おひらきにしようか、クーデリアさんには冬華と一緒に寝てもらう気でいたが、この様子じゃパジャマとかに気を使うのは無理そうだな。今日はかあさんに任せるとしようか。」