市大会
今日はサッカーの市大会の日だ。
クーデリアを含めた家族全員が観戦に来ている。
普通ならいいとこ見せなきゃなあと思うところだが、俺の場合は周りからチート扱いされる運動神経のおかげで、普通にやるだけで大活躍なのでそこまで思わない。というか逆に市大会ごときでわざわざ仕事を休んできた父さんはおかしい。
市大会ごときというと相手を舐めているように思うかもしれないがうちのチームは今日参加するどのチームよりも厳しい練習をしてきたのだから正当な評価だろう。まぁ、油断はしないけどな。
「おっ今回もきてるなハルの家族!」
「うっモトヤ……」
「んん?おいおい。あの外国人のねーちゃん誰だ!?なんか冬華ちゃんと親しげに話してるけど……」
「えっあーーホ、ホームステイでうちに泊まりに来てる子だよ。」
万が一聞かれた時用の設定である。思い出せてよかった。
「なっ!?まじで?ハルんちに泊まり⁉︎いいなぁ〜あんな美人が来るんならうちでも受け入れるように言ってみようかな〜」
「……よく知らないけど、基本同性じゃ無いかな?俺っていうより冬華の方だし……」
「まじかよ。おい、後で紹介しろよ?」
「わかったよ。」
クーデリアすまん。こいつの相手は任せた。
俺たちの試合が始まる。
「行くぞー!」
「おー!」
円陣から各々のポジションに散っていく中、真也が俺に近づいて来た。
「今日はお前より活躍してやるからな!」
「あぁ。頑張れよ!」
「ちっ見てろよ……。」
「え?あ、あぁ。見てる。」
「……っ。」
あれ?言葉の選択を間違えたかな?怒らせてしまったようだ。相変わらずこう言う人の機微がわからないところは祐のことをどうこう言えないなぁ。ちょっと落ち込む。うーん。もしかしてディフェンスが頑張らなくちゃいけないような展開にするなよって言う遠回しな激励だったのかな?それに俺が『頑張れよ!』って返したから怒った……繋がる。そうだったのかぁ。わかった。頑張るよ!
ピッピーー
前半が終了。俺が頑張ったせいか25対0で勝っている。
「宮。お前はもう下がっていいぞ。」
「はいっ!」
「あと、右京と林も下がれ。」
「はいっ!」
「代わりに出るメンバーは西田」
「はいっ!」
「斉藤、」
「はいっ!」
「小野だ。」
「はいっ!」
「作戦は前半のままでいい。以上だ。」
「ありがとうございました!」
監督がチームに指示を出す。わざわざ見に来てくれたみんなには悪いけど俺はここまでのようだ。まぁ、次の試合になったらまた出してもらえるだろうけど。
その後の試合も圧勝だった。前半は真也の激励通りに頑張って点を稼ぎ、後半は補欠メンバーの調整のため前衛が弱くなるのを真也たちディフェンスがフォローして大活躍だった。もしかしてこうなるのがベストだってわかって行ってきていたのかな?だとしたらすごい。いやすごいのは知ってるから流石というべきか。俺も見習ってもっと全体のゲームメイクに気を配ってプレーできるようになったほうがいいかもしれない。
その日のすべての試合が終わった後、モトヤに約束通りクーデリアを紹介させられた。
「クーデリアさん。良かったら携帯番号教えてくれないかな?」
「えーと、すみません持ってないです。」
「えっ。」