耳元が汚れる
は???どういうこと??なんでさっきのクソイケメンがいるわけ??
ハルは、ポカーンとしていた。
例の部屋から出てきたのが幽霊じゃなかったということに驚いたし、なぜかあの、クソ野郎がいることにも驚いている。
「あっ、今朝の…」
まいが声を上げると、楠木優は、ハルとまいのふたりを見ておお、と驚いたふりをする。
「今日のピンクパンツちゃんと、男女片野ハルじゃ〜ん!」
アホみたいなセリフ(いや、実際アホ。)で、整った顔をにやつかせて、手を振ってくる。
「ピンクパンツの君は、うーんと…。ああ!まいっていう子か!うんうん、なかなかいい足してるねえー!!よろしくよろしく!」
チャラついた感じで、まいに笑顔を送る楠木。
まるで、男子は見えていないという感じで女子にしか話しかけない。
「……ていうか!!!」
チャラチャラした態度に耐えきれなくなった私は、思わず大きな声で会話をとめる。
「なんであんたがここにいるんだよ!!!!」
うわあ、どっから出るんだこんな声…と、自分でも思うぐらいの声量で、言うと、楠木優は
「え?だってここの掃除は、俺ら1組と、お前ら3組でやるんだぜ。」
と、当たり前のように言った。
………は???聞いてないぞ???
戸惑う私をほっといて、みんなは、例の部屋を掃除するのが自分たちだけじゃないと安心している。
「お前さー。」
ぼーっとしている私に、楠木優が近づいてくる。
「な、なんだよ。なんか文句でもあんのかよ。」
楠木優をギっとにらむ私。そんなことおかまいなしにどんどん近づく楠木優。
「むっっっちゃ女みたいな声出してたな。」
いきなり、耳元で、低くて優しい声でささやいてくる。
「―…っ!!!!」
――耳が熱くなる。耳が溶けそうになる。耳が甘くなる。
ああ、私の耳が……耳が……
「耳が汚れるじゃろうがーーーーー!!!!!」
楠木優の胸元をつかみ、思いっきり地面に叩きつける。
手首の回転を速くして足を踏ん張り、何回も投げて持ち上げて、また投げる。
「いた!!いたい!いてえ!いてえいてえ!ストップ!ストップ!!もう投げないでいいだろ!」
「ハル…なんでイケメンに耳元でささやかれたら、相手を投げるの……?なんで……?意味がわからないよ…。」
まいはその様子を見つめて頭を必死に動かしていた。
もちろん、ときめかなかったわけじゃない。ドキドキしなかったわけでもない。
(あーっ!あーーっ!!!ああーーーっ、びっくりした!!なんだよ、なんだよ今の!!!!
耳に、いや、耳が…溶けてとろけて、熱くなって!!ううぅ!!!きもいぞ、きもい!なんでこんなやつにときめかなきゃいけないんだよバーーカ!!)
ハルは恥ずかしかったけど…いや、恥ずかしかったからこそ投げ飛ばしたのだ。
「き、きもいんだよっっ!!いきなり耳元で話すなよ!お前、他の子にも……他の子にもそんなことしてんのかよ!!」
怒鳴り散らして、例の部屋へと入っていくハルを、まいと楠木優、そしてクラスメイト達は見つめているだけだった。
「あれは……楠木くんが悪いわなあ。」
男子達がそうつぶやき、まいはハルの心配をしていた。
「ハル、今日は楠木くんに振り回されてばっかりだなぁ〜」
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あーー!イケメンと石油がほしーーーーい!!