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死神の末妹

作者: 海猫

暗く陽の光も届かなず、水の流れる音しか聞こえない世界。

地面には花も咲くこともなく見渡す限りの荒野が広がっている。

ここは死の淵、冥府の川の近く





私には98人の兄や姉がいる。


上の兄らは生き物のタマシイを四つある腕で刈り取り


姉らがタマシイのゆりかごのになる糸を四つの腕で紡ぎ


中の兄と姉が器用に糸を折りなしタマシイの籠をつくり


私たち下の弟妹がタマシイを揺り籠へ入れ、輪廻の川へ流す

それが私たちの神様に任された「死神」としてのお仕事。





そんなある日、99番目の末妹が人間に恋をした。


兄や姉は皆口々に反対の言葉を述べたが末妹の決意は固く

一番上の兄が四つあった妹の腕を2つ切り落とし人の住まう世界へ

行かせた。


人の世界で妹は恋い焦がれた人と無事に出会うことができ

仲睦まじい様子が町や神の世界にいる兄姉からも見て取れた。


二人は幸せそうに笑い、幸福が目に見えて感じられるほどにいた

しかし、たった一人の少女の嫉妬心が運命を悲劇へと誘う。








少女は修道女であったが少年に長年片思いをしていたのを末妹に

掠め取られ気に食わなかった。



それにあの末妹と出会ってから少年の顔色が悪くなっているとかんじていた。

最初は小さな棘のような違和感というものが日を増すごとに膨れあがっていた。


そんなある日、少女は見てしまった

夕暮れ時の伸びる影が末妹のは酷くいびつで隣にいた少年とは違う姿を

していたのを。



翌日朝日が昇る同時に毎日欠かさず己が信ずる神に祈りを捧げ訊いていた

ある日、それに神は応えた。



「彼の者は人に非ず 命を刈る者なり」



己が信ずる神の言葉は少女の心を蝕んだ。

そうだ、きっとアイツが少年の命を削っている

そう思い込んだ少女は神を信じる町の人を巻き込み末妹を捕まえた。



人々は末妹を罵った。化け物と魔女と

あんなに優しかった町の人も石を投げつけ暴言を吐かれた。




「どうして?!私は、そんな事していないわ」

「嘘よ!だって××××様が・・・・・・・」



末妹が何をいっても少女は聞く耳ももちません

己こそが正しいと確信しているから

町の人も昔から見てる少女の肩を持ち


町はずれの少し小高い丘の上。

末妹は磔にされ腕や舌などを切り落とされて燃え盛る炎の中命を落としました。



「私が私がまちがっていたの?」



あまりのことに裏切られ胸が痛む

きっと恋をした自分が悪いのだと自ら思う、

無念からか流した涙がほほを伝い顔を濡らしてゆく

遠くから走って来る愛しい少年の姿が見える。



「ごめんね  さよなら」


聞こえるかわからないけど、一言つぶやき、炎に包まれた

死する間際、末娘は自分のの心から「人を愛する心」と「最愛の彼の記憶」を抉り離し捨てた。



「愛する心」は地面に落ちると小さな赤子へかわり


「彼への記憶」はダイヤへと変わった。











それに対して兄姉の神は怒り狂い、人々に対して死する病を振りまきました。


『愚かな人の子よ、罪深き者達よ

 我らが末妹を殺した罪を味わえ』






長い死という眠りについた愛しい末妹に皆泣き悲しみました

傷つき炭のようになり果てた最愛の妹、せめて姿だけでも戻そうと

兄弟たちは己の体の一部を妹にあげた。





長兄からは切り離した妹の二つの腕

次兄は自分の左目を

三姉は右目

四兄は舌を

六兄は心臓

七兄は右足

八姉左足

久姉は胸の穴を縫い合わせた


それぞれ血管・血液・髪の毛・骨など、ありとあらゆる生命と人の形とに必要な部位を己の

体から分け与えた。





横たわる末妹、涙を流し悲しみにくれる兄姉たち



恨むことも

呪うことも。

怨嗟を吐くこともなく

泣きながらも許してしまった



いとしい子だった

心根が優しい子だった


「これから輪廻と眠りに入るお前に」

「我らからの贈り物」

「お前はきっと私たちを忘れてしまうけど」

「僕たちは忘れない」

「愛しい我らの末妹よ」

「次の生こそ幸せにな」

「また逢うことがあったら守ってあげる」

「だから静かに眠れ」





五の姉が妹を抱え全員で紡ぎ編んだ籠に魂を入れ、一度額に口づけ

輪廻の輪へ向かう川にそっと流す。


 いつか遠い未来に逢えるのを信じて待つのだろう


悠久と久遠の時を。


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