運命の前日
秋風に吹かれながら歩く下り坂。
寒さも厳しくなり、マフラーと手袋は必需品だ。
「これも買ったし、これも買った。よし、あとは家に帰るだけだ」
メモアプリに記した今日の買い物リストに全てチェックを入れて、手にしたスマホで現在時刻を確認する。
「もう20:00か……」
時間が経つのを忘れていたことに今更気づきながら、数分前に立ち寄ったコンビニで買ったお菓子を食べる。
ポテトチップスのしょっぱさが口いっぱいに広がり、口に運ぶ速さが加速した。
プルルルル……
突然と鳴った電話の主は妹だった。
「もう! お兄ちゃんどこほっつき歩いているの! いいから帰ってきなさい!」
怒り半分でかかってきた電話に驚きつつ、返事をする。
「分かった分かった。今帰るから! ていうかお前どうしてそんなに怒ってるんだよ」
疑問を返しつつポテトチップスをレジ袋に戻し、早歩きで自宅に向かう。
「はぁ〜、もう忘れちゃったの? 明日は優沙さんの命日だよ! こっちは準備がたくさんあって忙しいんだからお兄ちゃんも手伝ってよね!」
笹森優沙。
その人は俺の人生の中で最初で最後の彼女だった人だ。
3年前に不慮の事故で亡くなってしまい、それからというものの僕の胸にはぽっかり穴が空いてしまった。
「知ってるよ。俺も買い物が終わったところだからすぐ帰る」
「じゃあ気をつけてね。バイバイ」
プー……プー……プー……
早々と切られた通話を終了させ、マフラーを巻き直す。
「もう……3年も経ったんだな」
天に向かって呟くと、雨が降り出した。
何かを知らせるかのように。
一読大変有難うございます。
取り戻せなかった青春や過去の恋愛をテーマにして書きました。
拙い文章ですが、これからもよろしくお願い申し上げます。m(_ _)m