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L'Empereur 前編

遅くなってしまいましたが次話です、よろしくお願いします

6

シクロフスキー小隊全滅、の報が本隊であるアレン少佐の率いる小隊に届いたのは英国軍が小隊を襲撃してから二日後だった。

「どうするアレン、中隊の四分の一近い兵員が死亡したんだぞ、作戦の変更はやむを得ないだろう」

従軍司祭のカザコフが幕舎の中で頭を抱える、実際シクロフスキー小隊はこの脱出口において重要な役割を持つものであり、その喪失は最早作戦の完遂が非常に難しくなる事を意味していた。

 バグダートの基地を出発後この中隊は四つの部隊に分かれ行軍している、本隊はアレン少佐が率いる100人規模の小隊、この小隊にはカザコフ、ユーリ、イシュタルが従軍している、更にラビ・ボラーゾフ大尉率いる小隊、ビティア・ロマネンコ中尉率いる小隊、そしてミーシャ・シクロフスキー中尉率いる小隊、これらの小隊はそれぞれガージャール朝イラクの領内に侵入してからそれぞれ別々に行軍している

「作戦の変更といっても他の三つの分隊には最早指令を出してここから遠ざかっている、今更呼び戻すのはリスクが高すぎる」

「ではどうする?トルキスタン総督府に援軍でも頼むか」

地図の上ではトルキスタン総督府の管轄する地域は今現在、本隊が駐在する地域とは遠くかけ離れていた。

「ロシア軍の参謀本部はそもそもこの作戦を承認していません、いわばこの作戦は第1トルキスタン歩兵旅団18歩兵連隊とニコライ・ユデーニチ少将、それに軍や政府に顔が利く‘東方の博士’によって行われている機密作戦です、まず本国は兵を起こしません、援軍を送るという事は・・・」

大英帝国と事を構えるという事です、伝令を受け取ったマルセル少尉が結ぶとこの作戦会議に出ている幕僚のなかに気まずい空気が漂った。

「それより私から提案したいのは他の教団軍と組み一時、戦力を補強するというのは如何でしょう」

「流石にそれは無理だ、一度味方、特に派閥は違うとはいえ、我々は同じムスリムを殺したその事を水に流し協力する者など居ない」

マルセルの提案にユーリが口を挟む、またも幕舎の中に気まずい雰囲気が流れる

「諸君、この外の敵は至極簡単に解決できる」

アレンがその空気を破るかの様に発した言葉で、幕僚達の疑わしい目がアレンに向く

「われわれは何をもって勝ちとするかだ」

そう言うとアレンは幕舎を出た


 ‘東方の博士’は三つの部門に分かれている、モスクワ聖遺物管理研究所第4班であり聖職者の集団であり神性の象徴である博士・メルキオール、政治力に長けた集団であり王権を意味する博士・バルタザール、そして直接的な実行部隊であり死を意味する博士達・カスパール、アレンが率いている軍人達は全員カスパールの№3であるニコライの指揮下にあるトルキスタン歩兵旅団に所属している。

 それに加え、バルタザールからはカザコフ・イワノフスキー、メルキオールからは皇帝官房第三部のユーリ・フレンコフがこの作戦に参加している。

その中でスパイ疑惑が掛かったのはバルタザールの部門だった、そもそもこの作戦に参加する筈だった司祭がカンタベリー45管区のスパイ疑惑を掛けられた為、急きょカザコフが抜擢されたのだ、しかしその後バグダートで余りにも簡単に身元が割れたことから‘東方の博士’はまだ内部にスパイが存在するものと確信していた。

 そもそもシクロフスキー小隊は分割させた小隊の中で一番隠密性を重視した小隊だった

それだけに先程幕僚達に与えた全滅の報は意外な物であり、意外にもスパイの存在を裏付ける結果となった。

「だがそれなら・・・」

幕舎の中で一人アレンは思考する、もし作戦を練り直していても誰がスパイか判明しない事には滅多な事は言えない。

「少佐、入室の許可を求めます」

幕舎の外でアレクセイ大尉の声がする、中に入って来た大尉は浮かない顔をしていた

「イシュタルの体調が芳しくありません」

イシュタルはバグダートの教団基地で教団軍に左目を抉られてから、そこが化膿し高熱を発している。

「イシュタルは絶対に専用の幕舎から出すな」

そう言うとアレンは再び陰鬱な思いに駆られた


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