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L'Impératrice

今回もよろしくお願いします

5

 エスファハーン州に隠れているロシア軍の小隊の一つを叩こうと提案したのは以外にも野戦軍の指揮官であるマデューク・リヨンズ陸軍少将だった

「具体的には、エスファハーン州のバルホヴァールと云う町の外れの渓谷にミーシャ・シクロフスキー中尉が指揮する分隊が隠れている、それを叩いて本隊の情報を聞き出す」

「どなたが指揮を執るのですか?」

参謀長のヘイズマン大佐が質問を投げかける

「私が向かいます、二個小隊も有れば十分でしょう」

現在私が連隊長を務める十九混成連隊は四個歩兵中隊と一個砲兵小隊、そして一個工兵小隊から編成されており、砲兵小隊は砂漠での移動に適さない為東ホラーサンーンの司令部防衛の為に運用されている。

その内の二個歩兵中隊を用いシクロフスキー小隊を強襲するという意見はあっさりと了解された。

「しかし、戦力的には不安は無いが貴君が居ないと何かと不安でな・・・」

「私の配下のトブルスキー少佐、ゴア少佐にそれぞれ一個歩兵中隊を任せます、私の報告が入り次第、この中隊に本体を急襲させましょう」

そう言うと私はトルブスキーとゴアを呼び寄せた



1907年ガージャール朝イラク エスファハーン州 バルホヴァール

 「どうだリン少尉、見えるか」

そう言ってリン・ラッセル少尉から双眼鏡を半ば奪い取るようにしてそれを覗くと確かに渓谷に沿って一列に歩いている軍人の集団が居た。

荒涼とした山地は頭の真上にある太陽の光を容赦なく地上の部隊を照らし付ける。

「作戦通り、第一中隊は前方からあの分隊を強襲する、第二中隊は二つに分け後方から強襲し第一中隊と挟撃、その後もう一つの分隊は私が率いて右側面から中央部を急襲、ミーシャ・シクロフスキー中尉を捕獲する、その他の小隊員は全員殺せ」

リン少尉にそう伝えると私は再び双眼鏡を構えた



「どういたしましたか中尉?」

ロシア兵の一人がシクロフスキーに呼び止められた

「大英帝国の軍人はこの暑さで相当頭が湧いているらしい」

そう言って、ミーシャ・シクロフスキーは遠くの禿山の頂上を指差す、双眼鏡の光が反射しチカチカと光っているのが見える

「前方から土煙が上がっている、恐らく後方と右翼から挟撃するのだろうな、少なくとも英国軍はこの分隊の倍以上の人数で攻めて来るだろう」

「どういたしますか?中尉」

何を当然、と云う顔でシクロフスキーが答える

「応戦だ、ここで英国軍を足止めする、奴らに悪夢を見せてやれ」



 行軍するシクロフスキー小隊への攻撃は山砲3発の発射音と共に、第一中隊と第二小隊の一部による挟撃という形で始まった、前後の二方向からイギリス軍の銃剣の林が矢を射るように真直ぐにロシア軍陣地に伸びる。

そこここで怒号と銃声が飛び交う、瞬く間に前線は格闘戦となった、兵力はロシア軍の九倍とはいえ実戦経験を殆ど積んでいないイギリス軍に対し、極東の戦役から一年も経っていない精鋭を集めたロシア兵は驚嘆すべき事に互角の戦いを演じている。

続いて山砲がもう二発渓谷にこだまする、同時にシクロフスキー小隊の三倍の数を持つイギリス軍の津波が右翼から小隊を飲み込む、しかしイギリス軍の勢いもそこで頓挫してしまった。

六機のマクシマム機関銃で陣地を構築し反撃を開始したロシア人はひたすら銃剣突撃を繰り返すイギリス兵の命を奪っていく。

瞬く間にイギリス人の悲鳴が渓谷に響きその一角が崩壊する、その傷口には新たな兵士達が投入される、しかし既に戦場は銃弾を受けた負傷者と、後退する同僚に押しつぶされる兵士達により阿鼻叫喚の渦と化していた。

特に真っ先に戦闘を挑んだ第一中隊は新型の擲弾・ダイナマイトの洗礼を浴び、笑うしかない程の血が流しその数をみるみる減らしていく。



「十二倍以上の戦力差でこれだけの損害を出し、収穫は皆無だと・・・」

野戦軍の本部には重苦しい雰囲気が漂っていた、戦闘開始の報を受けてから三時間後、バルホヴァールから届いた電報には3個小隊壊滅の報と末尾に小さくシクロフスキー中尉以下全滅と書いてあった。

「中佐の処遇はいかが致しましょう」

ヘイズマン参謀長が思い出したかの様に少将に問う

「シクロフスキー小隊がマクシマム機関銃を所持しながらそれに気付ず安易に捕獲命令を出した、責められるのは我々司令部の方だ」

「しかしマクシマム機関銃を所持しているとなると非常に危険な存在ですね・・・」

幕僚の誰かが重苦しい空気を払おうとする

「しかしその数が多ければ奴らの行軍速度も鈍る、ならばそれだけ本体を捕捉しやすくなるだろう」

気休めにもならない事はその後の幕僚の反応を見ても明らかだった、しかし誰か、何かを言わなければこの場の雰囲気に飲み込まれる事はこの歴戦の老将は一番良く知っていた。

「それと、少将、十九混成連隊の主力第一、第二歩兵中隊に新たな人員の補充をお願いします」

混成連隊のトブルスキー少佐が伺いを立てる。

「その事だが砲兵小隊を司令部から回そうと思う」

「砲兵小隊ですか・・・」

「本国やアフガニスタンに駐留している軍団からも救援を要請しているがひとまずはそれで我慢して欲しい」

トブルスキーが不安げな表情を浮かべる

「その間にロシア軍が突破したら・・・」

「どうかな少佐、バグダートの基地が襲撃されてから今日まで20日間、仮にシクロフスキー小隊が殿だったとしてもロシア人の動きは緩慢、それにガージャール朝の軍隊と共同作戦を組み国境と重要拠点を封鎖している、兵員の心配はしてない」

問題は中佐次第だ、そう言うと少将は幕舎を出た



「どうだ中佐、気分は」

野戦軍のリヨンズ少将がバルホヴァールに居る十九連隊の本部に電話を掛けて来たのは連隊がシクロフスキー小隊を取り逃がした日の夜だった。

「第一、第二歩兵中隊の人員の補充をお願い致します。」

「その事は今日の議題に挙がった、本部の砲兵小隊と歩兵中隊を回そうと思う、砲兵を有用に使って陣地を崩せば、恐らく今日の様に苦労する事は無いだろう」

「有難うございます、次は必ず成果を・・・」

「私は兵員の欠損は何とも思っていない、問題は指揮官たる貴君の心持ちだ、もし貴君が今日の事で恐れをなして次の戦闘で二の足を踏んでしまう、そのような事のみが私の懸案だ」

「少将、私は・・・」

「しかし貴君は意気軒昂、誠によろしい」

「・・・」

「東洋には万骨枯れて一将成るという諺が有る、今日の兵士達の死は貴君の糧になるだろう」

「・・・」

「中佐、次は勝とう、次に勝てなければその次、我々の機会が潰えるまで何度でも挑戦しろ、最後に貴君が勝てばそれでよろしいのだ」


戦闘シーンを描くのは難しいですね、全体を通してぐだぐだになってしまいました

なおこの小説は登場人物、団体、事件の大半は架空の物であり如何なる団体、個人を毀誉褒貶する目的を持った物ではありません

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