第8話 二人だけの朝食
一階に降り、優太が食卓に着くと。
恵がカップにお湯を注ぎ、スープを作る。
スープが出来た頃、丁度、トーストも焼き上がった。
焼き上がったトーストに、バターを乗せ。
そのトーストを皿に乗せた後。
皿に乗ったトーストと、スープが入ったカップを持って。
恵が、台所からやって来た。
「は〜い、召し上がれ」
「いただきま〜す」
恵が、優太に朝食を勧めると。
優太が元気良く”いただきます”と言って、朝食を食べ始めた。
「(パクパクパク)」
恵も、トーストとスープを持って。
優太の向かい側に、やって来た。
「(モグモグモグ)」
小さな口にトーストを詰め込み、美味しそうに頬張る優太は。
まるで頬袋に物を詰め込む、リスの様に見えてる。
「(ニコニコニコ)」
「ん?」
そんな優太が、可愛らしく見えた恵は。
両手でテーブルに頬杖を付いて、優太に見入っていた。
恵が、微笑みながら自分を見ている事に、優太が気付く。
「どうしたの? お姉ちゃん?」
「うん? 優ちゃんが食べてる姿がリスみたいで可愛いから。
思わず、見入っていたのよ♡」
恵の言葉を聞いて、優太の頬が赤くなり。
そんな優太を見て、恵がクスクスと笑った。
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それから、恵もトーストを食べ始めた。
しばらくして、二人とも食べ終え、スープを飲んでいたら。
「あ、優ちゃん、ちょっと待って」
「なに? お姉ちゃん」
スープを飲もうとした優太が、イキナリ恵から止められる。
「頬っぺに、バターが付いているよ」
「えっ! どっち?」
優太が自分で取ろうとしたが、位置が分からない。
「ああっ、ちょっと待ててね」
自分で取る事が出来ない、優太を見兼ねて。
恵が取ってやることにした。
恵が、椅子から立ち上がり。
テーブルを回り込み、優太の所に来た。
優太の所に来た恵が、体を屈め。
顔を優太の頬に近付けた。
「お姉ちゃん、一体、何をするの?」
「ちょっと、待っててね〜♪」
優太が、恵の行動を不審に思ったが。
恵は、そう言って誤魔化していた。
恵の顔が、優太の頬に次第に近づき。
「(ペロッ)」
「・・・」
優太の頬を舐めた。
「ふふふっ、優ちゃんの頬っぺ。
ぷるんぷるんしているね♡」
「(チュッ)」
「く、くすぐったいよ、お姉ちゃ〜ん」
恵がそう言って。
今度は優太の頬にキスをし出した。
その、くすぐったい感触に。
優太が、笑いながら身を捩らせる。
何とも歩らしくない、情熱的な行為だが。
これは、本来の恵の行動であり。
今まで、交際していた相手に対しても、行っていたのである。
要するに、恵はキス魔の気があったのだ。
こうして、恵の記憶が流れ込んだ歩だが。
恵の乱暴でなく、こう言う女性らしい行動だけは、歩に受け継がれた。
「(チュッ、チュッ)」
「お、お姉ちゃ〜ん、も、もう取れたでしょ〜」
優太の頬の感触が良かった恵は。
今度は、優太に抱き付き、なおもキスをし続ける。
それに対して、笑いながら身を捩らせる、優太。
こうして、しばらくの間。
恵は、優太の頬にキスし続けたのだった。