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第6話 久々の帰宅

 それから二日経った日曜日。




 「は〜っ、ただいまっ」


 「お姉ちゃん、お帰り〜」


 「うふふっ、優ちゃんありがとう〜♡」


 「(ギュッ!)」



 玄関に入った、恵が久しぶりの自宅に感慨深く言うと。

恵の脇を擦り抜け、先回りして廊下に上がった優太が。

振り返り、恵を見ながら挨拶を返した。


 そんな可愛らしい優太を見て。

恵が感激の余り、思わず優太を抱き締めた。


 優太の方も、嬉しそうに恵を抱き締め返す。




 *********




 経過観察した結果、後遺症が見られない恵は。

今日、病院を退院して、久々に自宅に帰って来た。


 優太と一緒に、病院から戻ったのだ。


 大きな荷物などは、先に両親が持って帰っていた後。

それぞれ仕事に戻った。


 (ちな)みに、父親は会社の支店長として、遠方に単身赴任中であり。

恵が事故に会ったと聞いて、飛んで帰って来たのである。


 母親も自ら、ブティックを何店か経営しており。

家に帰るのが、夜遅くになることも珍しくはなかった。


 そう言う訳なので、休みの日も家に居ないことが多く。

今日も、荷物を家に置くと、その足で仕事に戻って行った。


 両親が、そう言う状態なので。

逆に言うと本来の恵が、毎晩の様に夜遊びに行くことが、出来た訳である。


 しかし、その結果、一人になった優太が。

毎夜、広い家に、ポツンと寂しく残されていた。



 ・・・



 「優ちゃん、ここに居たんだね」




 自分の部屋に荷物を置いた恵が、一階に降り、居間に行ったところ。

そこには、ソファーで(くつろ)いでいる優太が居た。




 「お姉ちゃんも一緒に座って良い?」


 「良いよ〜♪」


 


 恵がそう言うと、優太が機嫌良く許可した。


 こうして、二人は並んでソファーに座った。




 *********




 「ねえ、優ちゃん、面白い?」


 「うん!」




 優太は、ソファーに座りながら、TVを熱心に見ている。


 そんな優太の横顔を見ていて。

とても可愛く思えてきた恵は、急に優太の事を抱き締めたくなった。




 「(ヒョイッ)」


 「えっ?」




 恵が、優太を突然持ち上げると、自分の膝に乗せたのたのだ。


 恵が優太を膝に乗せると、後ろからギュっと抱き締めた。




 「お姉ちゃん?」


 「ふふふっ、良いでしょ♡」


 「うん」




 恵が微笑みながらそう言ったら、優太も(うなず)く。




 「お姉ちゃん、重くないの?」


 「大丈夫よ、でも優ちゃんは。

もっと食べて、大きくなった方が良いよ」




 しかし、次に優太が遠慮しながら尋ねたが。

恵が、優太の頭を撫でながら、安心させるように答えた。



 ・・・



 「お姉ちゃん・・・」


 「ん、なあに?」


 「お姉ちゃんは、柔らかくて良い匂いがするよお・・・」




 優太が、恵の膝に乗せらたまま、抱き締められていると。

気持ち良いのか、何だか、ウットリした声で恵に言った。




 「優ちゃんは、とっても暖かいね」


 「(ギュッ)」




 優太の声を聞いて、恵が前に廻した腕に力を入れる。

そして、優太の頭に自分の頬を乗せて、頬ずりをした。


 確かに、まだ幼い優太は体温が高い。


 しかし、恵の言うのはそう言う事だけで無く。

邪険に扱われても、姉を思う優しい心の事も含まれているのである。


 こうして、しばらくの間、居間で。

恵は、優太を膝に乗せながら、抱き締めつつ頬ずりをし。

優太は、恵の柔らかい感触に、身を(まか)せていたのであった。



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