最終話 いつまでも一緒に
最終回もいつもより、話が長いです。
救急車で、病院に運ばれた優太は。
その場で、緊急手術を受けることになった。
優太は、内蔵破裂を起こして、危険な状態だったのだ。
そして恵も、優太と共に。
救急車に同乗したまま、病院に向かった。
救急車の車中で、恵は。
優太の手を握りながら、必死で呼びかけていたのである。
・・・
それから、長い手術が終了した。
その間に、両親もやって来て。
一緒になって、手術室の前に待っていた。
幸い、手術が成功し。
優太は今、病室で静かに眠っている。
「優ちゃん・・・、ごめんね・・・、ごめんね・・・」
その傍らには。
恵が、まるで呪文の様に、謝罪の言葉を繰り返していた。
確かに、その原因は、恵の行為にあったのだが。
それは、歩が入り込む前の、恵自身の行為であり。
歩の所為では、無かったのだが。
恵の記憶が流れ込んだ、歩には。
まるで、自分が行った様な感覚があったのだ。
また、仮にそれが無くても。
優太が、こんな状態になったのは。
自分を庇った為であるので。
その点からも、自責の念に駈られていたのである。
*********
病室に、移動してからしばらく経つが。
まだ恵は、優太に張り付いていた。
両親からも、少し休む様に言われたが。
それでも、恵は優太の側を離れなかった。
・・・
日が変わっても、優太の意識は戻っていない。
それでも、優太にお見舞いが、来る様になった。
その中には、真奈美や美里なども居る。
病室に来た真奈美からは、あの後の話を聞いた。
とても、事情を聞ける状態ではない、恵に代わり。
今日も、警察に説明した際に、色々と話を聞いたらしい。
あの、優太を暴行した男は。
あれから速攻で、警察に逮捕されたそうである。
優太を暴行した際に、”死ね”と繰り返して叫んでいたのを、真奈美が聞いていた為に。
男は、殺人未遂で逮捕されたのだそうだ。
それに、あの男には、その他にも重い余罪が相当あり。
恐らく、最低でも10年位は、刑務所に行く事は確実らしい。
また、男が所属しているグループは。
以前から、警察に目を付けられていて。
逮捕するタイミングを見計らっていた所に、今回の事件が起こったのだ。
なので、男が逮捕されたのを期に。
グループのメンバーが、一網打尽に逮捕された。
その際、振り込め詐欺や、大麻の密売と言った。
グループの悪行が、白日の元に晒された。
しかし、その真奈美の話を聞いても。
恵の心は晴れなかった。
確かに、あの男が逮捕されて、安心はしたけど。
まだ、優太の意識が、戻ってなかったからである。
・・・
美里も、病室にやって来たのだが。
「優太くんが、こんな目に会うのは。
アンタの所為だよ!」
恵を見るなり、恵を激しく責め出した。
美里は、今回の事件の原因が。
恵(本来の)の過去の行為が、原因であるのを知っていたのだ。
その余りの剣幕に。
一緒に見舞いに来ていたクラスメートが。
必死になって、抑えていた位である。
だが恵は、そんな美里の罵声を、甘んじて受けていた。
*********
それから夜になり、院内の消灯時間になったが。
恵はまだ、優太の側に居た。
両親が、そんな恵を見かねて、休むように言うが。
逆に恵が、両親に寝るように言って、頑として離れないようとしないので。
諦めた二人は、休憩室で休むことにした。
「優ちゃん・・・」
恵が、眠っている優太の手を握っている。
恵は、ロクに睡眠を取らず、優太の側に居たので。
目にはクマが出来、頬もやつれている様に見える。
そんな恵が、優太の寝顔を見ていたら。
「(ビクッ)」
「ん・・・」
優太から反応があり。
それと同時に、微かに声が聞こえた。
「・・・優ちゃん?」
「・・・お姉ちゃん、・・・良かった、無事だったんだね・・・」
優太の目が開き。
恵の姿を見て、力ない声で、そう呟いた。
「優ちゃ〜ん〜!」
目を開いた優太を見て。
恵は、ポロポロと涙を流した。
それは、目を開いた優太に安心したのと。
自分がそんな状態になっても、姉を心配する優太に感動しての事である。
それから恵は、優太の手を握り締めながら。
ポロポロと、泣き続けていたのであった。
*********
「はい、優ちゃん〜。
腕を上げてちょうだい〜」
「は〜い〜」
それから一ヶ月後。
恵は今、優太の体を拭いていた所である。
優太の体は。
内蔵破裂の影響で、まだ制限された物しか。
食べることが出来ないが。
それ以外は、ほぼ通常状態まで戻ってきた。
優太が、目を覚ましてからは。
恵が両親たちに、”自分が世話をするから”と言って。
それぞれ、仕事に戻らせていた。
恵の、その言葉どおり。
平日は、学校が終わってから夜遅くまで。
土日、祭日は、一日中、病室に居て。
優太の世話をしていたのである。
「はい、綺麗になったよ〜」
「(チュッ)」
優太を拭き終えると。
恵は、新しいパジャマを着せてから、優太の額にキスをする。
「ねえ、お姉ちゃん・・・」
「なあに?」
「僕、いつまでも、お姉ちゃんと一緒に居たいよ・・・」
恵から、キスをされた優太が。
キスされた額を撫でつつ、照れながらも。
恵を見ながら、そう呟く。
”優ちゃんに、こんなに思われて。
私・・・、とても嬉しい・・・”
優太の言葉を聞いて、恵は歓喜に襲われる。
元々から、優太を可愛くて可愛くて、しかたが無かった上。
優太が、自分が傷付いてまでも、恵を庇ってくれた事により。
恵の中に、優太に対して、今まで以上の感情が芽生えていた。
そんな優太から、ずっと一緒に居たいと言葉を聞いたので。
心の奥から、喜びが溢れ出たのである。
それに、歩の心の中での一人称が。
“僕”から”私”に、変わってしまっていた。
どうやら心の中までも、完全に女性化してしまったみたいだ。
「うん♪ お姉ちゃんは。
いつまでも、優ちゃんと一緒にいるよ♡」
恵は、とびっきりの笑顔を見せながら。
優太に、そう言った。
*********
所で、入れ替わった後の。
本来の恵の意識は、どうなったのであろうか?
恵の体に入ってから。
歩が、いつも思っていた事ではあったが。
最近、歩は、確証は無いけど。
“ああ、天に登って行ったんだ”と。
何となく、思うようになっていた。
恵(歩)は一瞬、病室の窓から覗く、青空を見て。
天に登ったであろう、本来の恵の幸せを祈った後。
もう一度、優太の顔を見直すと。
優太と、ずっと一緒に居る事を、心の中で誓っていたのであった。
優しいお姉ちゃんと可愛い弟 終わり
今まで、何回と無く言った、しつこい台詞でありますが。
この様なチラシの裏を、最後までお読み下さり。
ありがとうございました。
句読点の打ち方が変だったり、文の言い回しがおかしかったりして。
読み辛かった点に付きましては、ここでお詫びしますm(- -)m
それでは、いつもの様に、皆様のご健康とご発展を祈りまして。
この物語を、終了させて頂きます。