第31話 姉と親友の争い
それから数日が経った、ある日の夕方。
「優太く〜ん、久しぶりだね〜」
「あ、真奈美お姉ちゃん〜」
真奈美が、恵の家にやってきたのだ。
「お姉ちゃんは、まだ帰ってないよ〜」
「じゃあ、上がって待ってて良いかな?」
「うん、良いよお〜」
普通なら不躾な言葉だが。
真奈美は、昔からよく恵の家に上がって、恵の代わりに家の事をしていたので。
優太も、特に気にしてはいなかった。
「(しめしめ、どうやら上手く行ったわね・・・)」
実は今日、恵の家に来たのは。
優太に会うのが目的であった。
あの日感じた、優太の感触の良さを忘れられない真奈美は。
優太をハグしに来たのだ。
優太の感触で、何かに目覚めた様である。
今日、恵が、職員室に用があり。
その分遅くなるのを見越して、やって来たのだ。
それから真奈美が家に上がると、二人は揃って、居間の方へ向かった。
*********
「ねえ、優太くん」
「なに?」
「また、この間みたいに、膝の上に乗ってくれないかな〜」
「うん? どうして〜」
「ねえ〜、お願いだから〜」
「いいよ〜」
居間に着き、ソファーに座った真奈美が、そう言って拝む様にお願いしたら。
優太が、膝の上に乗ってくれたのである。
膝に乗った優太を、真奈美が後ろから抱き締める。
「(は〜、気持ち良いなあ〜)」
真奈美は、優太の抱き心地の良さに満足した。
そして、優太の頭に頬ずりをしながら。
「ねえ、優太くん気持ち良い?」
「うん、気持ち良いよ〜♪」
優太に尋ねると、どうやら優太の方も気持ち良いらしい。
それを聞いて、真奈美が遠慮なく、優太をモフる事にした。
*********
「(優太く〜ん〜♡)」
「すりすりすり」
真奈美が優太に頬ずりをして、その感触を味わっていた所に。
「だだいま〜」
「あ、お姉ちゃん!」
玄関が開く音と共に、恵が入ってきた。
それに気付いて優太が、出迎える為。
真奈美の膝から降りようとする。
「(そんな! 早すぎるよお〜)」
予想よりも早い恵の帰宅に、真奈美は動揺するが。
降りようとした優太を強く抱き締めて、恵の元に行くのを妨害した。
「お姉ちゃ・・・」
「(ギュウ〜!)」
「優太くん、行かないで〜!」
「真奈美お姉ちゃん、降ろしてぇ〜!」
「お願いだから、私の所に居て!」
必死で降りようとする優太を、真奈美が抱き締めたまま離さない。
そうやって二人が、暴れている所に。
「どうしたの優ちゃん・・・。
って、二人共、何しているの!」
「あ、お姉ちゃん。
真奈美お姉ちゃんが、離さないんだよ〜」
恵はそう問いただすと、優太が困った顔で答える。
「真奈美、何しているの!」
「恵、いいじゃない。
私も、優太くんをモフらせてよお〜」
「だ〜め〜、優くんは私の物だよ〜」
今度は、恵が真奈美に言うが。
真奈美は開き直り、そう言いながら優太を、抱いたままでいた。
そんな真奈美を見た恵が、優太の手を引っ張る。
「優ちゃんを返してよ・・・!」
「良いでしょ、少しくらい・・・!」
「お姉ちゃん、痛いよお!」
二人が、優太を引っ張り合っていて。
二人に引っ張られた優太が、苦痛を訴える。
優太を巡り、引っ張り合う二人。
二人に引っ張られて、痛がる優太。
こうして、優太を巡る醜い争いが、繰り広げられたのであった。