第30話 帰り道で
それから二人は、色々と乗り物を回った。
ただし、絶叫系だけは、恵が怖がり乗らなかった。
しかし、それ以前に。
優太が年齢・身長制限に、引っ掛かり乗れなかったのもあるのだが。
そうやって園内を回り、楽しい時を過ぎて行き。
とうとう空が、オレンジ色に染まる時間になってしまった。
・・・
「(当園に、お越しの皆様へ〜。
当園は、閉園時間となりましたので。
速やかに、お帰りになるよう、お願い致しま〜す〜」
建物の影が、長く伸びる園内に。
アナウンスの声が聞こえる。
「優ちゃん、楽しかったね〜」
「うん!」
そのアナウンスを聞くと、二人は顔を見合わせ。
「じゃあ、帰ろうか〜」
「帰ろう、お姉ちゃん!」
同時に、家に帰る事を言い出した。
こうして、二人は楽しく遊んだ遊園地を、後にしたのであった。
*********
「(ガタン、ガタン・・・)」
二人は、今、電車に乗っている所である。
電車のロングシートに、隣同士、並んで座っていた。
「あの、お化け屋敷は怖かったね〜」
「うふふ、そうだったね〜」
そして二人並んで、今日、あった事を話していた。
優太が色々な事を話し、恵がそれを聞いて返事を返している。
嬉しそうな優太の顔を見るだけで、恵は頬が緩んでしまい。
それだけで、十分だった。
そうやって、しばらくの間。
恵は、優太の話をニコニコしながら聞いていた。
・・・
初めの内は、饒舌に話していた優太であったが。
次第に、話の間が空き。
そして、ついには黙り込んでしまった。
そんな優太を不思議に思い、優太の顔を覗き込んだら。
「すー、すー」
いつの間にか、優太は寝てしまっていた。
そして、電車の振動により、優太の頭が恵の肩に寄り掛かる。
”ふふふ、今日は楽しかったみたいだからね〜”
寄り掛かった優太を見て、恵は心の中で笑っていたのである。
そして、寄り掛かった優太の頭を、自分の方に引き寄せ。
それから優太の頭を、胸に抱き締める。
”ホント、可愛い寝顔〜♪”
自分の胸にある、優太の顔を覗き込み、テンションを上げる恵。
可愛い優太の顔を見た後、一度、優太の頬にキスをしてから。
優太の頭に頬ずりをする。
そうやって、しばらく優太の頭を頬ずりしていると。
”あ、優ちゃんから、お日様の匂いがする”
今日一日、陽の光を浴びていた優太の頭から。
お日様の匂いがしていた。
「(ギュウ〜〜)」
「う、う〜ん〜」
”あ、イケナイ!”
思わず、抱き締めた腕に力が入り。
その為、優太が唸り出したので、急いで力を緩める。
それから、恵は優太を抱き締めた状態で。
優太の感触と、匂いを楽しんでいた。
*********
「あ、もうすぐかな?」
恵が優太の感触を楽しんでいたら。
もうすぐ、家の近くの駅に着く頃になっていた。
優太は相変わらず、スヤスヤ寝ている。
「優ちゃん、もうすぐだよ、起きなさい・・・」
「すー、すー」
「優ちゃん、起きて・・・」
最初、優しく起こしていたのだが。
いつもの様に、優太はナカナカ起きない。
そんな優太に、いつもの様に呆れた恵は。
「(こちょこちょこちょ)」
「きゃきゃきゃっ」
やはり、優太をくすぐり始める。
「優ちゃん、しっ!」
「あ、うん・・・」
車内であるのに騒いだ優太に、恵は注意する。
その張本人であるのにも、関わらずであるのに。
そうやって二人が、ジャレている内に。
いつも間にか、電車が駅に着いた。
「優ちゃん、急いで急いで!」
「お姉ちゃん、引っ張らないで〜」
ドアが”プシュ〜”と開くと、二人は急いで降りていく。
こうして二人の、楽しい休日が終わったのであった。