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第28話 遊園地で遊ぶ(中)

 それから、コーヒーカップなどの。

軽い乗り物から、二人は廻り出した。


 コーヒーカップの乗った際は。

調子に乗って、カップを早く回したしまった為に。

二人とも目を回してしまったのは、ご愛嬌(あいきょう)である。



 ・・・



 「ねえ、ねえ。

お姉ちゃん、あれ乗って良い?」




 突然、優太が指差した乗り物を見て。

恵は、固まってしまった。


 それは、極端に曲がりくねったレールが、特徴的な。

二人乗り用の、ジェットコースターであった。




 ”えっえっえっ〜”




 その、曲がりくねったコースを見た途端。

恵(歩)が、心の中で盛大に叫んだ。


 このコースターは、ループやコークスクリューが無く、安全装置もシートベルトなので。

優太の様な、小学生低学年でも乗れる代物であるが。


 その代わり、横へのカーブが、半端では無い言う評判であった。


 横への動きが。

まるで、横へと吹き飛ばされそうな勢いで、振られるらしい。


 それに加え、真っ暗で長いトンネルを通るなど。

心理的な演出で、恐怖心を(あお)っていた




 ”僕は、絶叫系は苦手なんだけどなあ・・・”




 実は、歩は元々から、ジェットコースターなどの。

絶叫系の乗り物が、苦手だったのだ。


 元がそうであるのに加え、恵に乗り移って所為(せい)で。

とても、怖がりになってしまっていた。


 恐らく、女の子の肉体に乗り移った為に。

女性的な感覚の影響を受けたのだろう。


 そう言う所では。

本来の恵の、凶暴性を受け継いでないのが、裏目に出ていた。




 「ねえ、良いでしょ・・・」


 「(うっ!)」




 優太がすがり付く様な瞳で、おねだりした。


 小学生低学年でも乗れる。

数少ない絶叫系なので、何としても乗りたかったのだ。


 その可愛らしい瞳を見て、恵は動揺する。




 「・・・良いよ」


 「やった〜!」




 優太の瞳の魔力に負けた恵は、思わず許可してしまう。


 その言葉を聞いた優太が、大喜びした。




 「じゃあ、早く行こうよ、行こうよ〜」


 「あっ、ちょっと、引っ張らないで〜」




 恵の許可が出た、優太が恵を引っ張って行く。


 こうして恵は、コースターへと、ドナドナされていったのである(笑)




 *********




 二人が乗り込み、コースターが動き出した。




 「(キキキ、キーーーッ!)」


 「わーーーーーっ♪」


 「ぎゃーーーーーーーっ!」



 ・・・



 「(ゴーーーーーーーッ!)」


 「わーーーーーーっ♪」


 「ぎゃーーーーーーーっ!」




 コースターの、強烈なカーブの(たび)

真っ暗なトンネルに突入する(ごと)に。

優太の歓声と、恵の悲鳴が聞こえた・・・。




 *********




 「(きゅう〜)」


 「お姉ちゃん・・・、大丈夫・・・」




 ジェットコースターで、すっかり参ってしまった恵は。

降りるとすぐに、近くのベンチに座り込んだ。


 ベンチに座ると、項垂(うなだ)れたまま黙り込む。


 そんな恵を見て、優太が心配そうに尋ねる。


 だが、恵は返事をする元気すら、無くなっていた。




 「(ぎゅっ)」


 「(えっ!)」




 そんな恵を見かねて。

立ったままの優太が、恵の頭を抱き締める。




 「(すーっ、すーっ」




 恵の頭を、抱き締めると同時に。

恵の背中を撫で出した。




 「お姉ちゃんは、僕が元気が無い時とか。

良く、僕にこうしてくれたよね・・・」




 そうして、背中を撫でながら。

恵に語りかける。




 「ごめんね、僕がわがままを言った為に・・・」




 背中を撫でつつ、優太は恵に謝った。




 「だから、お姉ちゃん。

早く、元気になってね・・・」


 「(優ちゃん・・・)」




 そして、恵を心配する優太の言葉に。

恵は思わず、”ジ〜ン”としてしまった。




 「(すーっ、すーっ)」

 



 恵の背中を、撫で続ける優太。


 そんな優太の小さな体に腕を廻し、抱き付いた恵。


 しばらくの間、恵は、優太に頭を抱き締められた状態で。

背中を撫でられながら、ベンチで休憩していたのだった。



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