第21話 休みの日の姉弟(中)
家の近くのバス停から、バスで繁華街へと向かった。
「じゃあ、優ちゃんのリクエストどおり。
まず最初に、映画にいこうかあ」
「うん!」
恵の言葉に、優太がご機嫌になる。
まず最初に、優太が見たい映画を見に行くのだ。
それから二人は、映画館へと向かった。
・・・
「結構、多いね・・・」
二人が映画館に入ると、中は思ったより人が居た。
優太の希望は今話題の、ハリウッドのアニメ映画であった。
その作品は、恵も興味があったので。
恵も、その作品を見ることに、同意したのである。
中に入った恵が、人の多さにキョロキョロしていると。
「お姉ちゃん、こっち、こっち」
「あ〜、ちょっと優ちゃん、引っ張らないで!」
真っ先に、良い席を取ろうと、優太が恵を引っ張り出した。
そうして優太が、恵を引っ張って行くと。
座席の中央やや後ろの。
画面が、丁度いい大きさに見える座席をを確保した。
「どおかな、お姉ちゃん?」
「うん、ナカナカ良い場所だよ、優ちゃん」
そう言って、優太の頭を撫でて褒める恵。
優太も得意気に、”えへへ”と笑った。
*********
二人が座席に座って、約十分後、映画が始まった。
優太は、恵の隣に座っている。
そうやって二人並んで、しばらく映画を見ていたら。
「(ギュッ)」
突然、肘掛けの下から、優太が手を握ってきた。
恵がそれに気付き、優太の方を見たら。
「・・・お姉ちゃん、良い?」
優太が甘えるような瞳で、恵を見ながら。
小さな声で、そう言った。
「うん、良いよ♡」
そんな優太が可愛くなり。
恵は、クスリと笑うと、優太の手を握り返した。
それから、ずっと映画を終わるまで。
二人は、肘掛けの下で手を繋いでいた。
*********
映画が終わり、二人が映画館から出てきた。
当然、恵と優太は手を握っている。
映画館での事は。
どうやら、今日は出来るだけ、ずっと手を繋いで居たいと言う。
優太の、甘えから来ている様である。
その事に気付いた恵は。
なるべく、優太の手を離さないようにした。
そうやって一緒に歩いていたら。
「あれ、恵・・・に優太くん?」
イキナり、声を掛けられた。
恵が、その声の方を見てみたら。
そこには、真奈美が居たのである。
「あれ? 真奈美、どうしたの?」
「真奈美お姉ちゃん、こんにちは」
「優太くん、こんにちは。
って、どうしたの二人とも?」
「うん、私達は、で・え・と♡」
「はあ?」
真奈美は、黒のボーダー柄のオーバーに、デニムジャンバーを羽織り。
青いキュロットを穿いて、足元は黒いスニーカー姿である。
そんな真奈美が、恵の答えを聞いて、口をアングリと開けた。
「姉弟で?」
「うん♪ ね〜、優ちゃん」
恵の言葉に、優太が無言で頷く。
「はあ〜、アンタいい加減、弟離れしないと。
恋人が出来ないよ〜」
「良いもん、私には優ちゃんが居れば。
ねえ〜、優ちゃん」
そう言いながら、恵は優太の背後に廻り。
優太を、後ろから抱き締める。
真奈美は、そんな二人を呆れた様に見ていた。