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猪悟能とマイケル・デサンタ 俺には帰る家がある

GTA5の主人公の一人マイケル・デサンタは高級住宅地に暮らし家庭を持っている。一見すれば立派な成功者である。

他の二人の主人公トレバーとフランクリンは独り身。というかGTAシリーズの主人公で所帯持ちのほうが異端のようである。


『西遊記』でこのポジションに該当するのが猪悟能(ちょごのう)(日本では猪八戒という呼び方が浸透しているが)である。

「え、猪悟能ってオタクみたいなデブで豚でしょ?」と思う人もいるかもしれないが侮るなかれ、彼は作中で二度結婚しているのだ。

これだけ見ても猪悟能が取経の僧侶の中でも異質な存在であることがよくわかる。


猪悟能の一度目の結婚は福陵山雲桟洞(ふくりょうざんうんさんどう)に住む卯二姐(マオアルチエ)

これは回想で語られるだけで卯二姐(マオアルチエ)がどんな妖怪仙女だったかはよくわからない。洞窟に住んでいたから妖怪だろうと推測がたつだけである。人間は洞窟には住まない。

そして卯二姐(マオアルチエ)と死別した猪悟能は高老荘(こうろうそう)高太公(こうたいこう)の娘、翠蘭(すいらん)の婿となる。

三蔵法師は童貞を死守どころかセックスを毛嫌いしているし、孫悟空は女に関心が無い(石から産まれたことと不老不死が関係していると思われるが……)

余談だが、後世の後付作品『後西遊記』には猪悟能と翠蘭の隠し子、猪一戒(ちょいっかい)まで登場するのだ。後付とはいえ血の繋がった子供がいるなんて取経メンバーではこいつだけである。




さて、ここからが興味を引くところなのだ。

最初はイケメン青年に化けて高家を騙して婿入りした猪悟能だが、徐々に気が緩んでしまったのだろう醜い豚妖怪の正体を晒してしまう。

そうなるともう高家は大変である。「家の恥、親戚付合いができない」とあの手この手で猪悟能を追い出そうとする。

酷い話である。イケメン青年の婿入りと歓迎したが、正体を知って手のひら返し。まぁ、相手は妖怪だから当然と言えば当然であるのだが。


この家庭の不仲がマイケル・デサンタと被るのだ。(猪悟能が高家を騙したとはいえ家庭は家庭。孫悟空も「猪悟能は元は天界の神だから恥ではない」とフォローはしていた)

マイケルには不倫好きな妻アマンダと、有名になるためならAVに出演することも辞さない娘トレイシー、ニートの息子ジミーがいる。

このどうしようもないクズどもを相手にマイケルは父らしく振舞おうと彼なりに努力しているのだ。

しかし悲しいことにマイケルはトレバーの狂気でかすみがちだが、なかなか狂人である。まるで孫悟空の強さにかすむ猪悟能の戦闘力のように。


マイケルは問題が家庭におよぶと見境がなくなる。

アマンダの不倫相手のテニスコーチの家を破壊したり(ただし、壊す家を間違えている)、トレイシーをAVに出そうとする業界関係者を問答無用でボコボコにしたり、ジミーを騙した車会社に車で突撃したり(フランクリンに強要した)。

どれも全て家族を愛するがゆえの行動なのだが裏目に出る。家族からすれば狂った父親の犯罪行為なのだ。そして、彼に愛想をつかした家族はとうとう家を出てしまうのである。


物語終盤ともなれば家庭の不和も一応は改善される。シナリオの分岐ルートでフランクリンがマイケルを殺してしまうと、残された家族はフランクリンと絶縁する。

不仲とはいえ家族の愛情はあったわけだから、まったく救いが無いというわけでもないか。




『西遊記』の取経の旅の途中、孫悟空が破門され三蔵が妖怪に誘拐されてしまう話がある。

すると猪悟能「俺は高家に帰るよ」と諦めて言い出すのである。なかば強引に追い出されたくせに帰れると思っているのである。

まぁ、猪悟能の妖力なら高家を乗っ取ることができるのだろうが。


猪悟能とマイケルの共通点。それは家庭だろう。彼らは旅や犯罪がうまくいかなくても逃げれる場所、帰れる安全な場所がある。

これは彼らの仲間が持っていないものである。

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