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魔法剣士レイ  作者: PP
7/8

7:戦闘

 結界に守られた水の都、中央部コインの場。そこで警戒を強めはや5分は経過しただろうか、どこから魔王軍に襲われても良いよう神経を張り巡らせているが、一向に襲われるような気配なはい。


「姉ちゃん達、大丈夫かな……」


 少し不安に思い出す、たった5分しか経過していないというのに、もう何時間もこの場所を守護し続けている気にもなる。嫌な汗がじわりと滲み出る。


「っ!?」


 そんな独り言をした途端に、結界の外で爆音が鳴り響く。きっと戦闘が始まったのだろう、そう思った矢先今度は天を覆ってた雲が一瞬で真っ二つに切り裂かれる。切れ目からは太陽の光が真っ直ぐなライン状に大地を照らす。


「ミ姉、ヴ姉、頑張って……」


 声に出し、二人の姉の無事を祈る。すると今度は、大地が盛り上がり巨大な壁が水の都の外へ現れる。が、盛り上がった大地に大穴が空き巨大な壁は崩れ落ちる。と、今度は崩れ落ちる壁の天辺で光り輝く一粒の光がみてとれた。その光はそのまま水平線上に光を伸ばし、数秒の余韻を残し消え去っていく。


 外の戦闘は行きつく間もなく、次の展開を見せる。今度は球体状の火の球が二つ、大地と空に浮かんでいるのが見て取れる。お互い、遠く離れているにも関わらず巨大に見える火の球は、きっと想像を絶する大きさに違いない。それらが二つ、徐々に近づき合い空と大地の間で交錯する。バンッと結界越しにも轟く大きな音が鳴り響き、世界を揺るがす。ぶつかり合ったままの火の球をよそに、砂塵が吹き荒れ遠くの戦況が全く見て取れなくなった。


 そんな砂嵐の中、再びドンッと大きな音がしたかと思い真上を見上げると一つの影がそこにはあった。そしてメシメシという音が鳴り響き、ザバンッと音と共にその影は落下してくる。丁度レイから5m程離れた場所に落下したソレは、水の結界という名のクッションに守られ、地表を破壊する事無く着地してみせる。


「あの女ども、絶対に殺してやる」


 人の言葉を話すソレは、上半身を裸にし、下半身は何故か破れている箇所がどこにもないズボンを履いている。そして瞳は真っ赤に染まり、左腕に一振りの剣を握っている。但し、その握っている場所は刀身であり、受け止めた勢いで落下してきたというべきか。


「まぁそれはいい、貴様そこを退け、用があるのはソコの精霊野郎だけだ」

「な、何ですか貴方は」


 震えながら、レイは目の前の異端の存在に話しかける。


「はん、俺は魔王軍の一人さ。これでも人には優しいんだぜ? なんたって俺の……ちっ、俺の影もやられたか。すまんな、そこを退け」

「そ、それは出来ません! お、俺はここを守るって姉ちゃんに、水の精と約束したんだ!」

「お前、あのクソ野郎どもの関係者か。それじゃぁ事情は変わった、お前さんもろともおさらばだ、悪く思うな」


 握っていた刀身を破壊し、前に進もうとした瞬間、場の空気が凍てつく。何をされたのかわからず、魔王軍の一人、モヒグニードは歩みを止めてしまう。そして、先ほどまで何の脅威も感じなかった少年から異常な魔力量を察知する。本来ならば距離をとるべきなのだろうが、足が動かない。魔王様の隣に立っていても動じることがないのに、何故こんな少年なんかに、と混乱している間にも少年の手に魔力が集まる。そしてついに、それは出現する。


「ペン打、俺にはこれしかない……でも、必ず守るって決めたんだ!」


 ペン打? ふざけた名だと罵ってやろうかと思ったモヒグニードだが、その思いはバシンッという今度こそフザケタ爆音がお尻から炸裂する。


「あぎぃぃぃ」


 一打、二打、三打、レイは必死にその魔法剣を振り下ろす。本当は怖くて、怖くてしょうがないのである。こんな相手と、姉ちゃん達は戦っていたのだと。でも、俺も男なのだ、出来る事を出来る限りに尽くす。


「やあぁぁぁぁ」

「ひぎぃ、がぁぁ、やめ、やめ、やめてくれぇ」


 バシンッ、バシンッと幾度と無く鳴り響く破裂音。本来ならば、肉体も普通の人間とは比べ物にならない程の強度を得、魔王の側近として仕える程の魔力を保持しているモヒグニードに魔法、斬撃、打撃は勿論、弓などの矢すら貫く事は適わない。が、この体の表面を思いっきりハタクという行為。これはどんなに鍛えた体を持とうが、どんなに強力な魔力をもとうが、痛いのである。痛い、とにかく痛い。人間であるモヒグニードは勿論、魔物ですら痛みという痛覚は持ち合わせているのである。その痛覚にここまで訴えかける魔法剣、それも避ける術がない。


 モヒグニードはこれまで、痛覚なんてものは微々たる感覚でしかなかった。何せ、彼を痛めつける程の攻撃というのが中々に無かったためである。が、何年ぶりかに味わう強烈な痛み。それも同じ個所を必要以上に打たれ、既に戦闘どころではないのである。


「このっ、このっ!」


 無慈悲也、レイ自身この魔法剣の恐ろしさを自覚してないが為に、必要以上に攻撃を続けてしまう。痛さの余りに意識が飛びそうになるが、繰り返し訪れる痛みにモヒグニードは本当の地獄を見たという。




 1分もしない内に、姉達が駆けつけモヒグニードとレイの間に立った。そこで、モヒグニードは一言だけ発した。


「楽にしてくれ……」


 ミは魔力でモヒグニードを囲むと、そこへ魔物の牙を握ったヴがイテマエブラックを使い、モヒグニードの存在を切り裂いた。その時、彼は本来与えられるダメージがないはずなのに、自らの体を弱体化させソレを受け入れた。そして、笑顔で逝ったのだった。


「レー君、大丈夫……?」

「レー、落ち着いて」

「……う、うあぁぁぁ」


 レイは姉が生きていた事を喜び、そして戦により名も知らない魔王軍の一人が死んだことを目の当たりにして、涙を流した。何故か、バシンッという音が最後に鳴り響き二つの声があがる。


「ひぎぃ」

「あぴぃ」


 構えていた腕を下した時、無意識に二つの対象をペン打してしまっていたのだが、レイはそんな事にも気が付かずひたすらに泣いていた。ついでに、二人の女も涙を浮かべたという。

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