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負け犬が勝つということ  作者: 遠藤 リョウタ
1/1

負け犬 蒼野 均

 2013年 夏 静岡県静岡市高校総合卓球大会


カッ コッ カッ コッ ガッ!!「くっ!!」


審判「ゲームセット!!マッチ トゥ 佐々木選手!!」


試合を終えた蒼野 あおのひとしは大きくため息を吐き、一言。


蒼野「はぁ・・・、またか。高校に入ってもまだ負けんのかよ・・・。」


悔しい思いをグッとこらえて、自分を負かした相手と試合後の挨拶を済ませた。


蒼野「なんでアイツは勝てて、俺は勝てないんだ。こんな市の大会の一回戦・・・のましてや無名の選手同士の対戦だぞ・・・?俺が勝ったっていいのに・・・。っていつも言ってるな。コレ・・・。ハハッ。」


なかばふてくされながら、他の部員が待つ場所へ向かった。


ライト「おい!!ブルー!!まぁた負けたのか。しかも一回戦で。ますます顔色がブルーじゃんか!!」


蒼野と同じ1年、蒼井 あおいひかるが周りにも聞こえるよう言い放った。


蒼野「うっせぇな・・・。ブルーって呼ぶのやめろって言ったろ。お前も苗字に蒼が入ってんだろ。ライト。」


ライト「はい?俺はそんな一回戦で負けて、気持ちがブルーになることはありませ~ん!!我らがナギ高の恥でありますなぁ?ブ・ル・-・く・ん?」


 彼らが通う高校は草薙東高等学校、通称「ナギ高」。静岡県にある閑静で坂の多い街にあり、10年も前は全国大会の常連であった。現在は鳴かず飛ばずの成績であるが、その中でも蒼井 光はナギ高のホープであり、その名前の光をもじって「ライト」と呼ばれていた。


蒼野「くっそ・・・。」言いたいことは山ほどあった蒼野だったが、実際ライトは結果を出している。高校に入って一番最初の大会でライトは先輩たちを押さえて優勝。全国大会は三回戦までコマを進めた。蒼野は何も言えず、その場を逃げるようにして立ち去った。






黒瀬「おーい。蒼野!!」


蒼野「・・・ん?黒瀬か。」


黒瀬「はぁ、はぁ。僕も負けちゃったよ。しかも一回戦で。はは・・。」


 彼は黒瀬 一希くろせかずき 。ナギ高の1年の中で唯一蒼野のことをブルーとは呼ばず、彼もまた試合では結果が出せずにいた。眼鏡をかけていることから周りからはそのまま「メガネ」と呼ばれていた。同じく、蒼野は黒瀬のことをメガネとは呼んでいなかった。


蒼野「そうか。同じだな。・・・ん?」



ワアアアアアアアアアアアッ!!!! 審判「ゲームセット!! マッチ トゥ 蒼井選手!!」


ライト「っしゃ!!」



黒瀬「・・・また優勝たみたいだね。ライト君・・・。」


蒼野「みたいだな。またアイツの凱旋パーティーか。悔しいけどアイツ強いからな・・・。」


黒瀬「うん・・・。でも蒼野だってうまいじゃん!!フォームだってきれいだし!!」


蒼野「はぁ?それが一回戦で負けたやつに言うことかよ。やめよう。やめよう。こんな所で傷口舐めあっても仕方ない。」


黒瀬「でも・・。本当にそう思うから・・・。」


蒼野「はいはい。サンキューな。とにかく戻るか。部長に怒られたくないしな。」


黒瀬「・・・うん。」


戻ってくるとそこには憎らしい程満面の笑みを浮かべたライトを囲んで、今大会の反省会が行われていた。


長田「おい!!ブルー!!メガネ!!どこ行ってたんだ!?早く集まれ!!」


戻ってきた二人を見て、ナギ高卓球部の部長である長田 おさだたけしが厳しい表情で怒鳴った。


蒼野「やっべ。すいませんした!!」 黒瀬「すみません!!」


蒼野が謝り、少し遅れて小さな声で黒瀬が続く。


ライト「・・あれ?ブルーにメガネじゃん。もう帰ってたのかと思ったよ。君らっていつ負けたんだっけ?二回戦?三回戦?一回戦ってことはないだろうから・・・。」


ハハハハハハッ!!!先輩を含めた他の部員がライトの放ったイヤミにつられて笑った。


蒼野と黒瀬は消え入りそうな程、小さく小さくその中でうつむいているしかなかった。


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