8話
結構すばらしい勢いで評価ポイントが増えていってます。
ほんとありがとうございます。よろしければ、評価や感想などもいただけると泣いて喜びます。がんばって泣こうとします。
追記:るーんうるふとか書いてありましたが間違いです(汗
むーんうるふです。訂正しました。
ゴブリンの耳を持ち帰り討伐報酬を受け取るという説明の部分がわかりにくいと思われたのでわかりやすくしました。少し文章を変更し、()内の文章が追加されています。
異世界生活3日目。今日も気持ちの良い朝を迎えた。
モカはまだ右隣でねている。犬なのに起きるの遅いんだね。
そして自分の右腕を見ると、お?
・・・なんということでしょう!
部活によりほどよくひきしまったその腕には、なめらかな弧線上に[歯型]がびっしりと描かれています!
この洗練された芸術、[歯型]は通常痛みを伴う物ですが匠は睡眠をあますことなく使いこなし、[甘噛み]という高等技術を使用してみせたのです!!
さすがというかなんというか。ほんとやることなすこと犬だなこいつは・・・。だがそれがいい。
天気は今日も快晴。体の具合もすっかりよくなり、絶好の冒険者日和である。
さて、今日こそは金を稼がないとな。
いつかはしなければならないことだ。
悪いがモカには起きてもらうことにする。ほっぺたぷにぷにの刑に処す。
モカはゆっくりと目を開けた。
まだ眠そうだ。モカに起きてもらうための説得ミッション開始。
「んー・・・?ぁ、おぁよー♪」
「おはよう、モカ。今日は冒険者ギルドってとこにいくぞー」
「ぼーけんしゃぎーるどってなにー・・・?」
そういいつつ目を少しずつ閉じていくモカ。ここでボムを投下するか。
「お金を稼ぐとこだよ。がんばればおいしいお肉もいっぱい食べれるんだ」
耳ピン尻尾シャキーン!モカ、完全覚醒。現金なやつめ。
「おにくいっぱいたべれるの!?ボクがんばっておかねかせぐ!」
説得完了。ミッションコンプリート。チュートリアルのミッションより簡単だなこれ。
おととい買った干し肉をモカにかじらせる。こっちのほうがいいと言ったからだ。
俺は横で宿の飯を食べている。ふいー、満足満足。ではでは。
そんなわけで俺たちは冒険者ギルドへと向かった。
そういえば、モカはレベルしか確認してなかったんだった。
あのあといろいろありすぎてそんなこと考える暇なかった。
いまのうちに確認。
モカ LV11/65
HP 190
MP 35
SP 210
STR 22
VIT 16
INT 7
DEX 26
AGI 29
スキル
月の狩人【月狼専用】(MP継続消費技。1秒につき5程度消費。発動中STR、DEX、AGIの値が1,5倍になる)
「どっかーん!」(MP10、SP10の固定消費技。HPが5割以上あるときにしか使用できない。
威力の高いキックをはなつ。モカのオリジナル技)
魔法
月狼は魔法を覚えることができません。
モカさんぱねーっす。典型的な回避型の前衛じゃないですか。
しかも一定以上のVITとHPも有してるおかげで攻撃食らってもある程度耐えそうってのがまたね。
そしてスキル。
月狼、むーんうるふか。あいつ、狼だったのか。まあ犬でいいや。あれは狼というより犬だ。
いやそれよりスキル、これ強くね?まあ発動限界時間がいまのところたった7秒ってのはきついかもしれんがここぞというときに使える必殺技みたいなもんだ。
そしてもうひとつ。・・・やばい、すっごいなごんだ。
だって、だってさ。
月の狩人(キリッ とかいう厨二全開なスキル名からの、いきなりの「どっかーん!」ですよ。
モカのオリジナルか。さすがだ、モカらしい。
オリジナルとかあるってことは俺もつくれるのかな、スキル。
今度試してみよう。最後に月狼は魔法を覚えられないとあった。
専用スキルがあるかわりの制約みたいなもんだろうか。まあINT7だし覚えてもあんま意味ないかもだがね。
そういえばINTが7あるのにモカのMPはたった35だった。人間の半分くらいか?これは種族による補正とかなのだろうか。よくみるとHPとSPの数値もちょっと違うな。
そこらへん詳しく見とけばよかったのかも。書いてなかった気もするけど。
まあこれでモカは戦闘をこなせることが分かった。
冒険者ギルドに着く。いや、着いたはずだ。ここは冒険者ギルド・・・のはず。
かなり小さい建物で、地球にある通常の一軒家くらいの大きさではないだろうか。
建物の入口の壁に冒険者ギルド・フェイン支部と書いてある。ここであってるようだ。
中にはいる。中は案外広く・・・なんてことはなく、かなり狭い。
中の雰囲気や構造は棒狩りゲーのクエスト斡旋所に似ているのだが。客が自由に座れそうな椅子とかもないな。
いかにもクエストが受けられそうなカウンターがあり、その向かい側に赤いロングの髪の女の人が椅子に座っている。
おそらく受付の人で、歳は20くらいか?それなりにかわいい。
あとは、壁にもたれかかって腕を組んでいる冒険者さんっぽい男の人が1人。同業者かもしれない。歳は30くらいだろうか。
身長170ちょいの筋肉がそれなりについた渋めのおっさん。髪型はメンズショートって感じか。腰には刀っぽい武器が。
レベル拝見ーっとおおっとでましたレベル17/32だ。初の自分よりレベルの高い人間である。
成長限界も一般の倍くらいあるじゃないか。まあモカには遠く及ばんが。
おっさんは俺達に目もくれずに静かに佇んでいる。
いい人かどうかはまだわからないし、自分から話しかけるのはやめとこう。
俺達はカウンターへと向かい、受付さんに話しかけた。
「すみません、俺とこの女の子を冒険者ギルドへの登録をしたいのですが」
とかいってから気づく。
そもそも登録があるかどうかわからんじゃないか。
ゲームとマンガの知識が悪い方向に働くいい例だ。一部の物事を「こういうものなはず」と勝手に決めつけてしまう。
「ギルドメンバー登録ですね。少々お待ちください」
どうやら登録はあるようだ。よかった。「こいつなにいってだ」みたいな顔で見られるのは勘弁。
クセになってしまう可能性もあるから。
受付嬢さんは記入事項が多そうな空欄びっしりな紙を2枚もってくる。もう一枚はモカの分。
紙の裏には魔方陣が書かれている。これはなんの魔法だろうか。
落着きのないモカはこんなの3割も書いたら発狂するだろう。そもそも字を書けるのか怪しいが。
「こちらのすべての欄にご記入をお願いします」
うっへえめんどお。俺だってめんどくさい。でも書くしかないか。
モカに字をかけるかどうか聞いてみると、やっぱり書けないとのこと。モカの分も書くことに。
名前、年齢から始まり現在の住所、出身地、アピールポイント、ウィークポイント、座右の銘っぽいの・・・なんか書かなくていいような内容が7割を占めていたが、てきとうに書いていく。
モカの分の紙に書いてあることが「おにくをいっぱいたべたい」とか「ごしゅじんさまのことがだいすき」とかかなりカオスな内容と化している。
とりあえず書き終えた。
「それでは、その紙に書かれている魔方陣の発動をお願いします。もしできない場合、お金をいただければこちらで魔法の発動を致します。1枚につき銅貨5枚となります」
「魔法は使えます。書かれている魔法名を聞きたいのですが」
「・・・?魔法名は魔法が使える者でしたら分かるはずですが」
らしいよ、わかるのかこれ。
紙の魔方陣をじーっくりみてみる。見る、見る、見る。
あ、ステータス開いた。って紙にステータスあるのかい。
紙(『レジストレーション』、『トランスフォーム』)LV1/3
紙にもレベルがあった、限界値も。物にもレベルがあるとは。
ってことは俺が初日に買った護身用の剣と盾、これ使えば品質のいいもの買えてたんじゃないか。
くそう。ちょっと損した気分。
そんなこと考えながら魔方陣発動。紙が圧縮されてカードになった。
モカの分もやってあげる。
「これで登録完了です。ギルドに関する規約などはそのカードに魔力を通すことで閲覧できます。基本的にはギルド内で依頼を受けて、それを達成して報告、報酬を受け取り、功績ポイントをそのカードの中に蓄積する、だけなので閲覧する必要はあまりないかもしれませんが犯罪行為と冒険者資格はく奪の部分だけは目を通しておいてください」
それでは、と一区切りして。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
「依頼を受けたいのですが」
「どのような系統の依頼をお探しですか?」
「報酬額が高めのものはありますかね」
「まだユズルさまの功績ポイントは0ですのでそこまで高額の依頼はありませし、1度に1つの依頼しか受けられませんが、そのなかで最も報酬額が大きいのはゴブリンの討伐および素材の回収ですね」
ゴブリン、でた。緑色のにくいやつ。討伐ってことはゴブリンは魔獣なのか。
理性を持ったゴブリンはいないのだろうか。
まあ理性どれくらいもってれば魔物でどれくらいなければ魔獣なのかとか結構曖昧だが。
案外人間を襲うかどうかとかの区分けだったりするかもしれん。地球でいう害獣とか害虫だ。
素材の回収はまず間違いなく肉のことだろう。ツノとかもあるかもね。
まあレベル15と11だ。死ぬことはないさ。
そう考えて俺達はゴブリンの討伐依頼を受けたのだ。
ゴブリンの討伐一匹につき銅貨2枚。耳を削いで持ち帰ってその数÷2のゴブリンを討伐したとする(耳は2個だから2個で一匹分。片方しか持ち帰らないと半分の報酬しかもらえないとか)らしい。
耳だと複数あるものだし判別しにくそうだが。まあ鼻とかだったら触りたくないしいやだけどさ。
回収する素材はやはり肉で1ブロックで銅貨2枚。
前モカが食べてたゴブステーキくらいの体積で1ブロックとのこと。
あのステーキほぼ原価に近かったのか。
一匹まるごとで銅貨4枚となる。
まあこんなもんか。数やりゃ結構な額になりそうだしせいぜいもうけさせてもらおう。
素材(肉)は重いし持って帰る量は少しにしとこう。
町にでる前にモカの武器を買う。回避特化型なだけあり、モカは短剣2本を選択し、購入。
2刀流か。かっこいいな。俺にはおそらく扱えないだろうからなあ。
レベルが2の短剣が3本だけあった。これを買おう。
鎧はいらないのかいと店の人に聞かれた。
うーん。俺はVIT高いし最初はどうにかなりそうなんだよなあ。モカは16だし少し危ないか。
まあついでだし簡素な皮鎧LV2を買ってモカに装備させておく。残りは銀貨8枚と銅貨1枚だ。
ついに銀貨が10枚を切る。今日いくら稼げるだろうか。
少し不安になってくる。水入れる水筒を買って外にでる。
携帯食料はこの前買った干し肉とか結構あるからおっけー。
水は近くに川がながれてるらしく無料なんだとさ。くみにいけば。
ちょうどゴブリンが生息しているという森が川の流れている場所にあるので、現地調達でもいけそうだね。
そんなわけで出発。今日の門番もAさん。Bさんはなにやってるんだろう。町の規制は昨日解けたらしい。
俺すごいタイミング悪いですねなんか。
歩くこと1時間と少し。森に到着する。川が確認できたのでそこまで行き水を汲む。少し飲んでみる。
地球の水よりおいしいかも。環境破壊とか進んでない分ふつうの川もアルプス並にいい水が流れてるんだと思う。
森の散策を行うこと5分、辺りを警戒する緑色の120センチくらいの小人を見つける。数は2、ゴブリンだ。
ギルドで見本の絵を見せてもらったからわかる。髪は生えておらずつるつる。鼻と耳はながくてとんがっている。顔は醜悪ではっきりいってきもい。
武器はもっていないな。素手だ。レベルは4/11と3/13。これなら楽勝そうだ。まあ一般人の平均より少し高いくらいあるから危険ではあるんだろうが俺達の敵ではないだろう。さて、どうやって攻めようか。
俺はショートソードと盾を構え、体を低くする。
いきなりモカが飛び出した!よだれをたらしながら。
あれを見ておいしそうと思うモカが俺には理解できない。
いきなりとびだしてきたモカにゴブリン達はとまどいながらも応戦、しようとして一匹目はモカの短剣に首をスパっと落とされる。
もう一匹が右腕を振り上げて殴りかかるが、モカは身を反らして回避しつつそのままの勢いでつっこんできたゴブリンの左胸に短剣を突き立てた。
素早い前衛に不意を突かれた時点で彼らの運命は決まっていたのだ。
死体に近づき、耳を切り取る作業に入る。うぇ、グロい。
でも、わりとグロ画像とか見ても平気なほうだったから吐きそうになったりはしなかった。
だが剣が肉を切る感触は決して気持ちのいいものではない。これも慣れだろう。
これから何度も経験するだろうしね。殺すことに対する罪悪感も多少はあるが、やらなければこっちがやられるのだ。
理性ないから死ぬまで攻撃してくるらしいし。
モカはほめてほめてといわんばかりに尻尾を振って俺にすり寄ってくる。
頭を撫でてやり、しばらくすると満足したのか離れた。
とりあえず2匹。さて、今度は俺も戦ってみないとな。
その後4時間程度の間に合計14匹のゴブリンに遭遇。真正面から挑んでみたりもした。
結論から言うと、弱い、そしてバカ。
腕力とかは一般人より少し強いかもしれないのだが。なぐられてもちょっと痛いかも程度だった。
あのヒールのために指を食いちぎったときのほうがよっぽど痛い。
しかもこいつら、必ず腕を振り上げて殴りかかってくる。
振り上げたほうの腕が、「いまからこっちでなぐりますよーちゅういしてくださいねー」と宣言しているしているようなものだ。
なんで20メートル離れていても殴るほうの腕を振り上げるのか。
ほんとバカだ。まあゴブリンだしな。楽だからいいか。
そろそろ日も暮れてきそうだし、帰るとするか。
16匹だから銅貨32枚分。肉は12ブロック分回収したから銅貨24枚分。あわせて銀貨5枚の銅貨6枚か。かなり稼いだなこりゃ。
肉は持っても全然苦になる重さではなかったので結局かなりの数を回収してしまった。
水を汲みなおした後、ほくほく気分でギルドへと帰還するのであった。
通常、こんなに大量のゴブリンは狩れません。
腕っぷしの強い一般人2人組がゴブリン狩りにいっても(レベル5と仮定)せいぜい一日で5匹がいいとこです。3匹以上に囲まれると死ぬ可能性があるので、警戒しながら森の中を進む必要があるからです。