4話
そうして俺はフェインの町に着いた。
町の入口には槍を持った門番らしき人が立っている。
背は180センチくらいだろうか、高いな。自分が170ちょうどくらいだから少し嫉妬してしまう。
あと5センチ・・・5センチはほしかった。
レベルを確認してみよう・・・レベル9/19、か。そこそこ強いほうなのだろう。
ていうかこれレベル限界値も見えるのね。
自分と自分の奴隷以外はレベルしか見ることができないっていってたけど、限界も見えるとは、ありがたい。
これで誰を仲間にすればはーれm、ゲフンゲフン、PT強化につながるかがわかるではないか。
「そこの者、止まれ」
声をかけられた。まあ見覚えのない顔だろうし、一応止めるのは門番として当然か。
「・・・教会の者か?」
え、なぜそうなるのだ。と思って自分の今の服装を見直す。
・・・・・白いローブ着たままだったねそういえば。
「い、いえ、違いますよ」
「どうみてもそうとしか思えないのだが・・・まあいい、商人ではないだろうし、町へ入るなら、
銅貨5枚だ。払ってもらおう」
え?あ、入場料か。銅貨5枚か。いやちょっとまった。
「あれ、たしかここの町って商人以外はお金払わなくても入れたんじゃ・・・」
「ああ、それがな、ちょっとした事件があって町に10日ほど前から入場に関する規制があってな。出るのは商人以外無料なんだがね」
困った。これは困った。
実は現在、俺は金を一切持っていない。
無一文だ。
なぜ神様が一文たりともお金をくれなかったのか。その秘密はこの白いローブにあるらしい。
これは結構上等な素材でできているらしく、売れば銀貨40枚は確実にいくらしい。
まあ売る場所を服屋にしないと裸で町に服を買いに行くはめにはるのは酷いと思うが。
ちなみに銅貨10枚で銀貨1枚の価値、銀貨100枚で金貨1枚の価値となっている。
一応余裕で払えるのだ。
この服を売ることができれば。できればだ。
まさかいまここで服を脱いで買い取ってくださいというわけにはいかない。
そんなことしたら怪しまれるどころかふつうに追い返されるだろうよ。
さてどうしたものか。
「どうしても払わないとだめなんですかね・・・?」
「うーむ・・・なにか売れるものとかは持ってないのか?さすがにこのまま追い返すのは後味が悪いからなあ・・・」
コノシュンカンヲマッテイタンダ!
ここだ!ここでこのローブを華麗に脱ぎ去る!
なんてことできるわけはないので、他の手段を使っての交渉へと移る。
「回復魔法での治療とかではだめですかね?」
「ん?お前さん回復魔法使えるのか。やっぱ教会の人間じゃないのか?」
「いえ、違いますよ。教会との関係はまったくありません」
「まあそれだったらちょうどよかった。さっき後輩がドジって怪我してな。後で治療院にいく予定だったから、それを治してもらえれば金を払う。お釣りも少しでるな。」
「ではそれでお願いします」
「了解。それじゃ、そこで少し待ってろ。もし入場料が必要なことわかってて勝手に町に入ったら軽度の犯罪者扱いになるから注意してくれ」
そういって町の中に入っていく。
待つこと3分程度、先ほどの門番に連れられて小太りの若い男性がでてくる。
身長は160センチくらいだろうか。この世界の身長水準は地球の日本と同じ可能性がでてきた。
180が平均だったらどうしようとか考えていたので、この男の登場はいろんな意味でありがたい。
レベルは6/15で、見事に一般人の平均限界と一致する。
「ほら、つれてきたぞ。傷はここだ。」
そういって長身門番さんが小太り後輩の右腕を指さす。右腕には布が押し付けられていた。
小太りさん(以降、門番B。長身さんはA)は布を取って傷口を見せてくれる。
血はだいぶおさまっているようだが、結構な切り傷がそこにはあった。
少し深めに切ったのか、パックリと傷口が開いている。
これはいたそうだ。
というわけで治療開始。
一度発動に成功しているのでイメージは明確にしやすかった。
魔力を50(5)程度込めて発動する。
『ヒール』
先ほどと同じように例の黄色いお薬が右手に残る。
「それは・・・ヒールなのか?」
まあこのツッコミは想定内である。そりゃあね。ふつうそう思うだろう。
だが、ヒールは発動する人それぞれにかなり個性がでる(エフェクトが人によって異なる)ものらしいし、まあ無理を通せば納得するはず。
「そうか・・・まあこれは個性がでるものだしな・・・」
「ですね。俺は初めて発動するときに薬をイメージしてしまったので、このようなことになってしまいました。」
「薬・・・ね。あれってかなり高価な物だったと思うんだが。お前さんほんとなにもんだよ」
どうやら薬はとても高価なものらしい。治癒魔法あるのになんで高価なのだろうか。
まあ使い手が少ないとかで、据え置きできて即使える薬は貴重ってことなのかもしれない。
納得してもらえたことなので、さっそくこのオ〇ナイン的なものを門番Bさんの傷口に塗ってみる。
そういやこの人なにもしゃべってないな。シャイなんだろうか。
そうして2~3分後だろうか。傷はだいぶ塞がり、出血のほうは完全になくなっていた。
「すまんな、助かったよ。これはお代だ。銅貨5枚は引いてあるからな。ほら、お前も礼を言え」
「・・・・・あ、ぁりがとう」
うん、シャイだなこの人、めっちゃきょどってる。
まあ初めて会う人と完璧な会話できる人間はそうそういないだろうが、門番やるならこれは直したほうがいいと思う。
「では改めて、フェインの町へようこそ。ゆっくりしていってくれ」
「はい、無理を通してくれてありがとうございました」
いい人でよかった。では気を取り直して、いざゆかん奴隷市場・・・じゃなかった。
先にこの服売って普段着とか買おう。話はそれからだ。
というわけで服屋へ直行。途中何度か道を聞くはめになったが。
結果は銀貨55枚。これはかなり珍しい素材だと驚かれた。
予想よりも銀貨15枚も多いのに驚いたがそこはポーカーフェイスを貫く。足元見られて買取価格を下げられるわけにはいかない。
入手場所なども聞かれたが正直にいうわけにもいかないのではぐらかす。
そしてその金で下着一式、ゴムっぽい素材が使われているズボンと少しごわごわだが不快になるほどではない上着、質素なブーツを購入、そのまま装着。
合計銀貨1枚と銅貨5枚なり。
ちなみに先ほどの治療代のお釣りとして銅貨3枚もらったので現在の所持金は銀貨53の銅貨8枚である。
てぶらなのはさすがにまずいので通常サイズで安物のバックパックと小さな蓋付きのビンを買い、ヒールによってつくられた薬をビンにつめ、それをバックパックにしまう。
これで1日2日経過して消えなければ店に売ってみようと思う。
そして武器だ。武器は必要だ。魔物・・・じゃない、魔獣が存在している世界だしな。
武器屋を探したところ普通に見つかった。
さて、なにを買うかね。
槍と剣のどちらかに使用と思うのだが・・・使いやすそうだし。
いろいろ見て回ってたら刀っぽいものもあった。かっこいいし、欲しかったがすぐ壊してしまいそうなのでやめておく。
かっこよさよりは生きること、あとコスパ優先。地味に値段高かったしね。
結局剣を買うことにした。ショートソードってやつだ。
刃渡り80センチくらいのやつで、試しに持ってみるとほとんど重さは感じなかった。
さすがレベル15。STRの値もそこそこだしね。
あと盾を購入。ライトバックラーとかいうの。
かなり軽い盾で、強度はそこまではない。
直径40センチくらいの円形であり、顔をすっぽり覆うくらいだ。炎とかは防げそうにないが、まあないよりはマシだろう。
そして残ったお金は銀貨40枚だ。ここまで残るとはね。まあ調節して買ってたからなんだけども。
そして宿をとる。素泊まり1日で銅貨5枚、食事2回付き、体を洗うお湯の貸し出し込みで銀貨1枚らしい。
とりあえず3日分食事とお湯オプション付きで払っておく。
ちょうど昼時だったのでそのまま食事を食べていく。
ふむ、でっかいパンらしきものとスープとサラダと水がでてきたぞ。
パンをかじる。かたい。フランスパン並にかたい。顎に力を入れてなんとか噛み切る。
咀嚼。パンっぽい味だが地球のパンとは少し違う。
少し苦味があり、よく噛むと甘みがでてくる。噛めば噛むほどである。悪くない。全て食べきるころには顎が壊れそうだが。
お次はスープをのむことにする。
・・・なんというか濃い。すごく味が濃い。コンソメっぽい味だがダブルコンソメ(2重)どころか、
オクタプルコンソメ(8重)くらいあるのではないだろうか。濃すぎる。量はそこまで多くはないが、これをすべて飲むのか。胃もたれしそうだ。だがカロりーはかなり摂取できそうだし栄養は大事だ。
最後にサラダ。これが一番当たりかもしれない。
空色のキャベツの千切りのようなものの上に緑色の木の実がいくつかのっかっている。
ドレッシングのようなものはかかっていなかったが、木の実とキャベツもどきを一緒に食べることで木の実から果汁があふれ、青いキャベツによくあうドレッシングへと昇華したのだ!
木の実はすっぱくて、梅のドレッシングをかけたような感じになった。
そんなこんなで異世界初めての食事はそこそこ満足のいくものとなったのである。
・・・アゴが痛いけど。
後から聞いた話によると、あのパンはスープにつけるためのものだったらしく、水分を吸収したとたんとても柔らかくなるものだったらしい。
スープもパンにつける専用のものだったとのこと。
・・・・・先にいってくださいよ。
まあおいしかったからいいけどね。
では、気を取り直して、本命の場所へいこうではないか!
いざ、奴隷市場へ!
ようやく次の話でヒロインその1登場となります。
タイトルが物語に関係してくるのはまだまだ先になると思います。