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まともな奴


「う~もういやだよぅ~…」


 校舎の4階の一番端っこにある物置部屋の前で私はひざを抱えていた。

 今は放課後である。帰りのHRが終わってあまり時間がたっていないが、ここにわざわざ来る人はいないし、薄暗いので私に気づく人は誰もいない。


 朝のHRにちゃんと宣言したのに、あの後も男子共はは懲りずに私によってきてなんかいろいろ言ってきてすごいうざかった。


 このままでは家までついてきて、好き勝手に私の家に来るようになってしまうという危機を感じた私は、帰りのHRが終わった瞬間、かばんを持ってダッシュでここまで来たのだ。

 思ったとおり、男子どもは私が教室を出た後、「あ、おい逃げたぞ!」「追いかけろ!」「一緒に帰るんだ」「待てー!」と昇降口のほうへ向かっていった。


 それを見越して私は2階にある自分のクラスからわざわざ4階まで上ってきたのだ。

 そして現在奴らが全員帰るのを待っている。


 ん~そろそろいいかな~…。


「はあ…」

 にしても深いため息が漏れる。

 もうほんとヤダ。帰りたい。天国(女子高)に。

 父さんマジ一生恨むからな。


「おい、千里、部屋の前になんか誰かいるぞ」

 

 ふいに、少し離れたところから足音と男の声が聞こえて、反射的に顔を上げる。

 音のしたほうを向くと、二人の男子生徒がこちらに向かって歩いてきていた。

 

 薄暗いので細かくは見えないけど、一人はなんか少し目つきの悪い不良っぽい人で、たぶんダンボールを持ってる。もう一人は、眼鏡をかけていて、頭よさそう。そして仏頂面。

 

 ばっちりと目が合った。


「あーー! お前転校生のチビだ!」


 眼鏡じゃないほう(よし、略して「じゃない方」でいこう)が私を指差して叫ぶ。

 …ん、こいつは。


「あ! お前、私のことを見て、背ちっちゃって言った奴だな!」

 

 言ったとおり顔を覚えていた。私の身長をバカにした罪は重いんだよ。ていうかそこは私デリケートなの、気にしてるのぉぉおおお!


「んだよ、チビにチビって言っちゃいけないのか?」

「うるさい! デリカシーっつーのがないの!? 私それ気にしてるんだよ」

「ふーん、ちーびちーび」

「…ぐぬぬぬぬぬぬ」

 

 女の子たちにちっちゃーい、かわいーって言われるのはあんなに嬉しかったのに、男子に言われるのがこんなにムカつくとは知らなかった。ていうか小学生か。

 ちくしょう!


 見兼ねたのかのか、どうでもよさそうに見ていた眼鏡のほうが、未だに私に向かってチビを連呼してるじゃない方をスッと手で制止した。


「おい、なぎさ、あんまり事実を連呼したらかわいそうだろう」


 うぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぅぅぅうううううううう!

 ムカつくムカつくこの眼鏡! なんだその見下したような笑顔はぁああ!

 ていうか目つき悪いほう! お前も「そうだな」て納得してんじゃねぇぇええ!


 私の尋常じゃない怒りに気づいたのか、じゃない方(ていうかコイツ全然不良じゃなかったな)が、少しあわてた様子でフォローに入った。


「ま、まあまあ。ジョークだって、ジョーク。わりぃわりぃ」


 うー、まだ怒りが収まらない。

 …まあでも、男子なんかとまともにとりあってたらきりがないよね。うん。


 ……およ? そういや私こいつらとまともな会話ができてる。クラスの中じゃマシなほうだ! よかった!


 あ、そうだ。


「あのさ、もうクラスの奴ら帰ったかな?」

 

 話が通じそうな奴らなので聞いておくことにした。

 さっきから帰りたくてしょうがなかったんだった。


「ん? ああ、お前が出て行った後にみんな一目散に帰ってったぜ」

「よっしゃ! んじゃあ、私もう帰れる」

 鞄を持って立ち上がり、さっさとその場を後にしようとすると、また声をかけられた。


「帰んのか?」

「うん。だってもうここにいる意味ないし」


 私があっさり答えると、じゃない方は少し迷った後、目をそらしながら

「その、なんだ……一緒にかえらねー?」

 とか言ってきた。


 その言葉に、私だけでなく眼鏡までも、はあ?という顔を向ける。

「おれは嫌だぞ。女と帰るなんて」

「ああん? 私だってお断りなんだよ。むさっくるしい男子と帰るなんてよぉ」


 バチバチっと私と眼鏡の間で火花が散った。

 ちっ。ムカつくぜこの眼鏡。


「ああ? 大勢で帰ったほうが楽しいじゃねーか!」

「「別に」」

「ああ、もう、ムカつくなお前ら!」


 なんかじゃないほうに逆ギレされたが私と眼鏡は声をそろえて言い返した。


 私と眼鏡の反応を見たじゃないほうは、一瞬黙るが、バッと物置部屋に入っていった。そして手に持っていた段ボール箱をしまってすぐに私達の前に戻ってきた。


「ほら、先生から頼まれてためんどくせー仕事も終わったし、ちょうどいいじゃねーか。とにかく帰るぞ!」


 じゃない方は無理やりぎみに一人で歩き始めてしまい、なんか流れ的に私と眼鏡も仕方なくついていく。

 

 ああ、もうめんどくさいからいいや。一緒に帰るってことで。

 そうだ、不便だから名前聞いとこう。


「ねえ、二人とも名前は?」


「ああ、おれ相模なぎさ。覚えとけよ」

「………おれは黒季千里だ」


 おい、眼鏡なんだその間は。ちっ。


 ああ、でもよかった。これでじゃない方って呼ばずにすむ。

 


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